基礎情報:イギリス(2013年)
4. 賃金・労働時間・解雇法制

4-1 最低賃金制度

根拠法令:
最低賃金法(1998)
決定方式:
審議会方式
最低賃金額は使用者団体、労働組合、独立機関の各代表で構成される低賃金委員会の勧告を踏まえて決定され、最低賃金法施行規則に定められる。
設定方式:
全国一律
最低賃金額:
一般(21歳以上): 6.19ポンド/時間(2012年10月~)
適用対象:
適用対象:特に限定なし
適用除外又は減額措置の対象となる労働者:
適用除外
自営業者、徒弟労働者・学生の一部、軍人、漁師の一部等

減額措置
18~20歳までは時給4.98ポンド、16歳及び17歳は時給3.68ポンド、アプレンティスシップ(養成訓練)参加者で、19歳未満、又は19歳以上で参加から1年未満の者は2.65ポンド
影響率等:
全被用者の3.5%(89万3000人) (2011年)
罰則等:
未払い分の賃金の50%(100~5,000ポンド)の罰金
ILO条約批准状況:
第26号条約、第131号条約ともに批准せず。

資料出所:Department for Education, Department for Business, Innovation and Skills, Department for Work and Pensions, Gov.uk, 各ウェブサイトほか

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4-2 最低賃金額の推移

(単位:ポンド/時間)
  一般(22歳以上) 若年(18-21歳) 若年(16-17歳) アプレンティス(見習い)
2000年 3.70 3.20
2005年 5.05 4.25 3.00
2007年 5.52 4.60 3.40
2008年 5.73 4.77 3.53
2009年 5.80 4.83 3.57
2010年 5.93 4.92 3.64
2011年 6.08 4.98 3.68 2.60
2012年* 6.19 4.98 3.68 2.65

*2012年10月から。

資料出所:Low Pay Commissionウェブサイト

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4-3 労働時間制度

根拠法令:
労働時間規則(1998年制定)
法定労働時間:
1週48時間(残業時間を含む1週平均)※17週平均
罰則:
法定労働時間、深夜労働及び代償休息についての違反は犯罪を構成する。
規則上の権利を侵害された労働者は、権利行使が許されるべきであった日から3カ月以内に、補償裁定を求めて雇用審判所に救済を申し立てることができる。
適用関係:
適用除外
軍隊・警察その他市民保護サービスの特定の活動に従事する者等、幹部管理職、家族労働者、宗教的儀式の司祭労働者、家事使用人、労働者により署名された書面による個別的オプト・アウトの合意により、法定労働時間の規則の適用を排除することができる。
法定労働時間の特例:
  • 労働者が職場から遠く離れて暮らしている場合。
  • 警備産業の場合。
  • 役務又は生産の継続が必要な場合等には、基準期間を26週まで延長することができる。
  • 労働の編成に関する客観的で技術的な理由に基づいて労働協約又は労使協定が例外規定をおく場合には、基準期間を52週まで延長することができる。
弾力的労働時間制度:
基準期間は17週未満の雇用ならその期間とされ、一定の労働者に関しては26週まで延長することが可能。延長できる場合とは、労働者が職場から遠く離れて暮らしている場合、警備産業の場合、役務又は生産の継続が必要な場合(例えば、保険、報道、通信、公益施設)、予見可能な活動時間の波がある場合、活動が不測である例外的な事件、事故又は緊急な事故の危険によって影響を受ける場合。週の最高労働時間については17週間で、時間外労働を含め1週を平均して48時間を超えない範囲で可(52時間まで労使協定により延長可)。
時間外労働(上限規制、割増賃金率):
上限規制
週労働時間の上限は時間外労働を含め平均して週48時間とする(17週平均)。
※最大52週まで労使協定により延長可。1日の休息期間を最低連続11時間とする(若年労働者(18歳未満)については12時間以上)。

割増賃金率
法令上の規定なし
休日労働(割増賃金率):
1週1日の休日(若年労働者について2日)

割増賃金率
法令上の規定なし
年次有給休暇制度における継続勤務要件:
13週間
年次有給休暇の付与日数:
5.6労働週(最高28日)
年次有給休暇の連続付与:
法令上の規定なし
年次有給休暇の付与方法:
  • 年次有給休暇は、分割して取得することができる。
  • 年次有給休暇は、原則としてそれが発生した年次休暇年内にのみ取得することが可能。
  • 雇用が終了した場合を除き、年次有給休暇を手当に置き換えることはできない。
  • 使用者は、休暇を禁じようとする期間の休暇日数に相当する長さの予告を与えることにより特定の日の休暇を阻止することができる。また、一定の日に休暇の全部又は一部を取るよう求めることができる。
未消化年休の取扱い:
法令上の規定なし

資料出所:JILPT『労働時間規制に係る諸外国の制度についての調査』(2012), Department for Business, Innovation and Skillsウェブサイトほか

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4-4 解雇法制

個別的解雇

1996年雇用権法により、次のような解雇規制が定められている。

  • 雇用期間の長さに応じた最短の解雇予告期間

勤続期間が1カ月以上の場合は1週間、2年以上は2週間、以降は最長12週間まで勤続年数毎に1週間を加算。

  • 解雇事由の開示

勤続年数1年以上の労働者が要求した場合及び妊娠中又は出産休暇中の女性を解雇する場合。

また、被用者は使用者に不公正に解雇されない権利を有する。特に、以下の事由による解雇は当然に不公正解雇とされる。

  1. 労働組合への加入の有無、
  2. 労働組合活動への参加、
  3. 妊娠及び出産、
  4. 安全衛生問題に関する権利等を主張したこと、
  5. 法定の権利を主張したこと、
  6. 一定の条件下で日曜勤務を拒否したこと、
  7. 業務譲渡に関すること(経済的・技術的等の理由がある場合を除く)、
  8. 従業員代表としての行動、
  9. 企業年金の管財人としての任務の遂行又は提案など。

不公正解雇については雇用審判所へ救済申立を行うことができる。雇用審判所は、不公正解雇と認められる場合には

  1. 職場復帰又は再雇用の命令、
  2. 補償金

といった救済を与える。

但し、上記の理由による場合を除き、不公正解雇申し立ての権利には勤続年数による資格要件あり(2012年4月6日より前に開始された雇用関係については継続した1年間の勤続、これ以降の場合は2年間)。

集団的解雇

1992年労働組合・労働関係法及び1996年雇用権法により、一定規模以上の経済的解雇については、労働組合との協議、貿易産業大臣への通知といった一定の要件が課されている。

被用者に対しては、雇用期間の長さに応じた一定の解雇予告期間が必要。また、勤続2年以上の被用者は、予告期間中に求職又は職業訓練の受講のための休暇を取得することができる(通常の週給額の5分の2が支払われる)。

また、年齢、勤続年数、週給額に応じた剰員整理手当が支払われる。

資料出所:荒木尚志, 山川隆一, JILPT編『諸外国の労働契約法制』(2006), Department for Business, Innovation and Skills, Gov.uk, 各ウェブサイトほか

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