基礎情報:ドイツ(2013年)
5. 社会保障

5-1 公的年金制度

制度体系:
図表:ドイツの公的年金制度体系
対象者:
一般被用者及び自営業者の一部(手工業者、芸術家など)は強制加入。その他の自営業者及び無業者は任意加入可能。
保険料率:
18.9%(労使折半)(2013年1月1日~)
支給開始年齢:
65歳(2012年から2029年にかけて、65歳から67歳へ段階的に引上げ)
最低加入期間:
5年間
国庫負担:
拠出金で不足する費用の全額(2010年は総給付の約26%、649億ユーロ)
繰り上げ(早期)支給制度:
あり。被保険者期間が15年以上の助成、長期失業者、高齢パート就労促進制度活用者(60歳から可能。但し、2016年に廃止予定)
年金受給中の就労:
満額支給開始年齢後:在職していても年金額の減額はなし。満額支給開始年齢前(繰上げ支給時):在職者の年金額は賃金額が一定水準以上の場合、賃金額に応じて減額。在職していても年金額の減額はなし。

資料出所:年金シニアプラン総合研究機構(2012)「年金と経済vol.31 No.1」

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5-2 企業年金制度

設立:
企業の任意(老齢企業年金改革法に企業年金が満たすべき最低条件を規定)
加入資格:
20歳に達してから5年以上の拠出期間
支給開始年齢:
65歳(女性60歳)
給付水準:
一般的なものとしては、最終給与x乗率x勤続期間により、公的年金と合わせて最終給与の65~75%となる。
公的年金制度との調整:
公的年金に上乗せされる(公的年金と合わせて最終給与の65~75%となる)。

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5-3 社会保険料の労使負担割合

(2012年)
  年金 医療 介護 雇用
労使計 19.6%* 15.5% 1.95%* 3.0%
労働者 労使折半 8.2% 労使折半
使用者 7.3%

*2013年1月1日より、年金は18.9%、介護は2.05%となった。

資料出所:上智大学紀要(2008)「日本・ドイツ・韓国の介護保険制度の比較考察(社会福祉研究第32号)」、Sozialstation Jung und Alt e.v. (2013) "Pflegeversicherungsleistungen—Ausblick auf das Jahr 2013"

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5-4 公的扶助制度

社会扶助(Sozialhilfe

根拠法令:
社会法典第十二編
管理運営主体:
地方自治体及び民間福祉団体
財源:
自治体の一般財源。中心的な給付は生計扶助。老齢及び稼得能力減少の場合は特定給付。この他、 健康扶助、 障害者のための編入扶助、介護扶助等の特別な需要に応じての給付がある。
対象者:
就労能力のない生活困窮者(資力調査による)
被保護者数:
31万4千人(2009年末)
基準額(月額)
通常給付は失業給付Ⅱ基準月額と同額。他に住居費・暖房費等別途支給。

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5-5 育児休業制度

根拠法令:
両親手当及び両親時間に関する法律
対象者:
子を自ら自宅で監護又は養育する労働者
請求権行使の要件:
両親の一方でも双方共同しても可
期間:
子が3歳になるまで最長3年間。使用者の同意を得れば、最後の1年分を子が8歳になるまでの期間に繰延べ可能。
形態:
育児休業の期間中も、使用者の同意を得て週15~30時間の範囲でパート就労可。
請求予告期間:
遅くとも期間開始の7週間前に文書により使用者に要求
解雇・不利益取り扱い:
育児休業請求以降終了まで解雇禁止。ただし、特別の場合には、雇用に関する管轄最上級官庁等が例外的に解雇を許容する宣言を発することができる。
復職:
以前と同じ又は同等の職へ復帰できる。
担保方法:
労働裁判所、使用者による損害賠償。
有給・無給:
両親手当を支給
休業期間中の社会保険の取扱:
生後最大14か月になるまで「両親手当」を支給(従前手取賃金の67%※)。上限1800ユーロ、下限300ユーロ)。父母両方が入れ替わり休業した場合は、14か月間「両親手当」を請求できるが、片親だけが休業した場合は、12か月間まで(単独親権を有し、出産前に被用者として保険料を支払っていたシングルマザーは14か月)。最低休業期間はそれぞれ2か月(2009年より)。祖父母にも受給権あり。
  •  ※ 2011年1月から, 新たに2011年予算関連法(HBeglG 2011)に基づき, 1200ユーロを超えた場合, 超過2ユーロにつき0.1%ずつの下限65%まで補填率が引き下げられた。
中小企業の取扱:
労働時間の短縮は、職業訓練中の者を除き、通常15人を超える被用者を雇用する使用者に対してのみ請求できる。15名以下の場合、使用者の同意が必要。
その他:
2007年1月施行。
労働時間の短縮請求には、勤続6か月が必要。完全休業する場合、事業所は、当人の有給休暇を1年につき、1/12短縮できる。パート就業時は、これが認められない(17条)。

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5-6 育児に対する経済的支援

育児に対する経済的支援には、以下の3種類がある。児童手当か児童扶養控除かについては、有利な方が適用されるほか、社会保障上の優遇措置がある。また、2歳以下の子を持つ非就業、不完全就業(週30時間以下の就業)の者(両親休暇取得中の者)も受給可能となっている。

児童手当

根拠法令:
1996年租税法62条および児童手当法
管理運営主体:
家族金庫(連邦雇用エージェンシー内に付設)
監督指揮権:
連邦家庭省
財源:
連邦(74%)及び州・市町村(26%)の一般財源
受給(適用)要件:
18歳未満の子(失業者は21歳未満、学生は25歳未満、障害者は無制限、但し子自身の年収が8004ユーロ(2010年より)を超えてはならない)
給付(控除)内容:
  • 第1子・第2子:月184ユーロ
  • 第3子:月190ユーロ
  • 第4子以降:1人つき215ユーロ
(2010年より)

育児追加補助金

根拠法令:
児童手当法
財源:
児童手当に同じ
受給(適用)要件:
児童手当と同じ要件に加えて、児童手当を受給していること。最低所得(両親900/片親600ユーロ)を超えており、家族の生計費等から個別に算出される所得上限を超えないこと。
給付(控除)内容:
子1人につき月額140ユーロ。10学年修了までの児童生徒に対し、新学年の学用品購入用にさらに年1回(8月)100ユーロを追加支払い。
(2009年8月より)

児童扶養補助

根拠法令:
租税法(1996年)
管理運営主体:
税務署
受給(適用)要件:
児童手当に同じ
給付(控除)内容:
子1人につき、年間7008ユーロ(基本額4488ユーロ、教育費用相当額2520ユーロ)が所得から控除される。(2010年、夫婦合算課税の場合)

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5-7 保育サービス:就学前児童向け託児施設の設置状況

ドイツには、託児所のほか、複合保育所(Kindertagesstaette)がある。これは (1) 3歳児未満を対象とする託児所(Kinderkrippe)、(2) 3歳以上就学前の保育所(Kindergarten)、(3) 就学児童保育施設(Hort)の3つの複合施設を指す。

設置運営主体:
主に地方自治体、教会、福祉団体等
設置費用の負担:
州が50%、自治体が25%、設置主体が25%を負担
料金:
州毎に定められている
利用者:
0~3歳児
利用状況:
3歳未満の児童に係る保育所の利用率は、全独で12.1%、旧西独地域で6.8%、旧東独地域で36.7%(2006年3月15日現在)。
認可された保育サービスを利用する者の割合:
3歳未満
特に旧西ドイツ地域において保育サービスが不十分であり、3歳未満児の保育サービス利用は2割未満。

3歳未満児の保育サービス利用割合(2009年)
  • 旧西ドイツ地域 14.6%
  • 旧東ドイツ地域 44.9%
  • 全ドイツ 20.4%
3歳~就学前
  • 3歳以上6歳未満の幼児すべてに保育サービスを受ける権利を保障。2013年8月以後満1歳にまで保障年齢を拡大の予定。
  • 92.5%(2009)が幼稚園に就学
  • 旧西ドイツ地域の幼稚園の31.2%は5時間までの保育で給食なし

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