研究報告 若年者雇用支援施策の利用実態─中小企業調査から:
第69回労働政策フォーラム

大学新卒者の就職問題を考える
(2013年9月10日)

岩脇 千裕
労働政策研究・研修機構副主任研究員

写真:岩脇氏

私は1999年3月に大学を卒業しました。すでに大学新卒者の就職難が問題となっていた時代です。私も8月にやっと内定を得てなんとか就職いたしましたが、わずか9カ月で辞めて大学院に進学し、今に至るという紆余曲折を経ております。私が若年者の雇用問題を研究テーマとしている背景には、このような自分自身の経験がございます。

当時と比べますと、今日の大学新卒者の就職難に対しては、政府によるさまざまな支援施策・制度が用意されています。在学中の就職活動に困難を覚えた若年者や、新卒時に就職できなかった若年者の中には、こうした支援施策を活用して就職していく人も少なくありません。彼ら・彼女らを受け入れているのは主に中小企業です。本日は、若年者雇用支援政策を1つの題材に、中小企業による大学新卒者・既卒者の採用活動についてもう少し広いお話をさせていただきます。

常態化している若年者の就職難

図表1 新卒採用中心の日本的雇用システム

図表1画像

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周知のように日本企業における正規雇用者の労働市場においては、新卒採用の慣行が根強く続いてきました。転職者の労働市場は小さく、基本的には新卒者を採用して企業内で育て上げ、定年まで勤め上げることが一種の社会的規範、すなわち「望ましい働き方」とみなされてきました(図表1)。

ところが、大学生の卒業後の進路は90年代半ば以降、大きく変化しました。大学新卒者のうち安定的な仕事に就職した人の割合は、バブル経済の崩壊を境に大幅に低下しました。一方で、アルバイトなどの一時的な仕事に就く人や、無業もしくは就職活動を継続する人たちの割合(無業率)が大きくなりました(図表2)。

図表2 進路別 大学卒業者数と就職率・無職率の推移

図表2グラフ

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それでは、景気が良くなれば新卒者の就職環境も改善されるのでしょうか。必ずしもそうとはいえません。好況期であった2007年には、新卒者の就職は売り手市場といわれました。しかし無業率はバブル経済崩壊直後の95年頃と同水準です。大学新卒者の就職難の背景には、構造的かつ長期的な問題があるからです。

グローバリゼーションの進行や知識社会化などの大きな社会変動は、非正規雇用の拡大や日本的雇用慣行の見直しを招きました。企業の新卒採用に対する考え方は、かつての大量採用型から少数厳選志向へ転換し、要求水準も高くなっています。応募者が求める水準に達しなければ、採用予定数に満たなくとも採用を打ち切ることも少なくありません。一方で、大学進学率の上昇により大学新卒者の数はここ10数年間微増傾向にあります。こうした背景があるため、いくら景気が好転しても、一定数の人々は非正規の仕事に就かざるを得ないのです。いったん非正規の仕事に就くと、正規雇用の仕事に移行することは容易ではありません。現在の日本社会においては、若年者の就職難が常態化しています。

その結果、現在の日本社会には、学校卒業後も安定的な仕事に就けないでいる「既卒者」と呼ばれる若年者がたくさんいます。彼らは、新卒者ほど若くもなく、転職者ほど経験が豊かなわけでもありません。そのため、新卒採用の枠組みからも、中途採用(即戦力採用)の枠組みからもこぼれ落ちてしまいます。新卒時にうまく就職できなかったという事実が、その後の長い人生に大きな影響を及ぼしてしまうのです。

しかし、彼ら・彼女らのすべてが、ずっとアルバイトや求職中といった不安定な状態に留まっているかといえばそうでもありません。何かのきっかけで正規雇用へと移行する人たちもいます。その人たちはどのような企業にどのようなきっかけで正規雇用されていくのでしょうか。

中小企業と既卒者のマッチングを考える

冒頭で申し上げたとおり、新卒者を採用し企業内で育成することを基本とし、一時的に即戦力が必要な場合にのみ経験者を中途採用する、これが日本企業による採用活動の「典型的な」あり方といわれてきました。

しかしすべての企業がこうした採用を行うわけではありません。とくに従業員規模が小さい企業では、経営環境が不安定であるため、またそもそも採用ニーズの発生頻度が低いため、計画的な新卒採用を実施することができない、あるいはする必要がない場合も少なくないのです。

また、中小企業の多くは余剰人員を抱える余裕がなく、採用活動は欠員補充が中心となります。欠員はいつ発生するかわからず、年度初めの新卒採用にこだわっていては業務がまわらなくなります。また、さまざまな経営資源が不足しがちな中小企業にとって、就業経験のない新卒者を一から教育訓練するための受け入れ態勢を整えることは困難です。

しかし一方で、中小企業の中にも大手企業と同様に、柔軟で訓練可能性が高く長期的に働いてくれる若者を採用し、自社独自の人材に育てたいというニーズをもつ企業もあります。こうした企業はタイミングが合えば新卒者を採用したり、年度途中の求人であれば就業経験の少ない既卒の若者を採用したりすることもあります。

「新卒採用はできないが、新卒者のように柔軟で吸収力の高い若者を採用したい」「必ずしもその仕事の経験者でなくてもよいが、ある程度は社会経験がある人を採用したい」など、中小企業には新卒者と経験者以外にも多様な人材ニーズがあります。そうしたニーズと、新卒時にうまく就職できなかった若者とをどうマッチングさせるか。それが私の研究課題です。

本報告のテーマと調査概要

図表3 「若年者の安定的な雇用への移行に関する調査研究」ヒアリング調査 概要

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本報告では、労働政策研究・研修機構(以下「JILPT」)が2012年に実施した企業ヒアリング調査(図表3)の結果をもとに、(1)中小企業が新卒者の採用に至る条件とは何か、(2)就業経験の少ない既卒者を企業が採用する動機付けやきっかけは何か、そして(3)若年者雇用支援施策はこれらの企業と若者をどのようにして結びつけているのか、をお話したいと思います。

JILPTでは2012年に、若年者雇用支援施策(図表4)を活用して35歳未満の若年者を採用した企業25社に、ヒアリング調査を実施しました。各企業の採用担当者に、支援施策の利用状況を尋ねるとともに、採用管理方針や採用実績、採用時の評価方法や評価基準、若年者を採用した後の教育訓練や処遇などについて尋ねました。本報告ではこれらの企業のうち、新卒者および卒業後3年以内の既卒者を採用した18社についてお話します。なお本調査では、支援施策を活用して採用された若年社員にもヒアリング調査を実施しましたが、本日は時間の都合上、一部を引用するに留めます。

図表4 本報告で言及する若年者雇用支援施策の詳細

図表4画像

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偶然に左右される新卒採用

まず、新卒者を採用した企業は7社ありました。そのうち、大手企業のように計画的な定期採用を実施していたのは4社でした。これらの企業の特徴は、比較的規模が大きく、多様な支援施策を活用している点です。また、ハローワークだけでなく、学校や地方自治体、業界団体など、さまざまな団体が主催する就職面接会に参加しています。新卒者の就職活動は一斉に行われますから、新卒者に的を絞った採用活動を行う企業にとって、一度に大勢の学生に対応できる就職面接会は効率的な採用手法なのでしょう。

これに対して、残りの3社は偶然の条件が揃ったことで新卒者を採用しました。これらの企業に共通するのは、従来は経験者や年配の未経験者を中途採用してきたところ、今回は偶然に年度初めの時期に採用のタイミングが重なったため「せっかくなら新卒者を採ろう」と方針を転換した点です。また、3社とも新卒者を採用すること自体が初めてであったため、ジョブサポーターが求人の出し方を助言したり、就職説明会への参加を促したり情報提供を行いました。また中には、会社そのものが成長し、現場の教育体制が整ったことで新卒採用が可能になったという企業もあります。

一方で、卒業後3年以内の既卒者を採用した企業は11社ありました。すべてに共通するのは、年度途中に新規採用をする必要があった点と、若年者を正規雇用への移行をめざして試行的に有期雇用するトライアル雇用制度(「3年以内既卒者トライアル雇用奨励金」または「試行雇用奨励金」)を活用した点です。

これらの11社は募集対象者によってさらに4つのグループに分けられます。①新卒・既卒を区別せずに〔若年者〕を募集した企業、②従来は〔新卒者〕に限定した募集を行っていたが〔既卒者〕も応募可とした企業、③従来は〔経験者〕に限定した募集を行ってきたが未経験の〔既卒者〕も応募可とした企業、④まったくの年齢不問・経験不問で広く募集を行った企業です。順番に特徴をみていきましょう。

新卒・既卒を区別せず「若年者」を募集する企業

まず「①新卒・既卒を区別せずに〔若年者〕を募集した企業」が求める人材要件は、若く柔軟で訓練可能性が高いこと、できるだけ長く勤め続けられること、他社の色に染まっていないことです。これらが適えられれば、新卒者であるか否かにはこだわりません。年度途中に発生した欠員をできるだけ早く補充することの方が重要だからです。

それほど欠員補充を急ぐのは余剰人員がいないためです。それでも多くの企業は採用した既卒者に対し、上司や先輩社員によるOJTを行っています。

しかし中には、まったくの未経験者である若年者に、採用直後から既存社員と同等の業務を任せる企業もあります。こうした企業では、若年者を育てるのではなく「自分で育つ」ことを期待します。

今回の調査の場合、既卒者自身の資質の高さと努力によって、大きな問題なく有期雇用期間を満了でき、無事に正規雇用へと移行しました。そのため採用側の満足度は高いですが、既卒者本人からは「もっと教えてもらいたかった」「違う職業に関心がある」という転職をほのめかす言葉が出ています。

トライアル雇用制度を活用される企業には、原則3カ月間の有期雇用期間(トライアル期間)に育成を行うことが前提であることを、お忘れなきようお願いしたいと思います。

「新卒」「経験者」限定から「未経験の〔既卒者〕も応募可」へ

次に「②従来は〔新卒者〕に限定した募集を行っていたが〔既卒者〕も応募可とした企業」に「なぜ既卒者を募集対象に含めたのですか」と尋ねたところ、「採用のタイミングが年度初めに間に合わなかった」「ジョブサポーターから3年以内既卒者トライアル雇用奨励金を勧められたから」という回答が得られました。

また、既卒者は新卒者よりも人材の質が低いのではという心配はなかったのか尋ねたところ、「マスメディアの報道などで新卒者が就職難であることを見聞きしていたため、既卒者であっても優秀な人はいると知っていた」「ジョブサポーターが当社の人材要件を丁寧に聞き取ってくれたので、その人が紹介する人材ならば大丈夫だろうと思った」といった回答が得られました。そしていずれの企業も、実際に採用してみた結果、「今後も既卒者を募集対象に含めるつもりだ」と答えています。

同様に「③従来は〔経験者〕に限定した募集を行ってきたが未経験の〔既卒者〕も応募可とした企業」に既卒者を募集対象に含めた理由を尋ねました。いずれの企業も「経験者に限定すると応募がなかなか集まらない」「経験者を採用したが、柔軟な働き方をしてもらえない」「経験者はなかなか職場に定着しない」などの課題を抱えていたところへ、ジョブサポーター等から3年以内既卒者トライアル雇用奨励金や試行雇用奨励金の活用を勧められ、未経験の若年者を採用して育てる方針へ転換したという経緯をたどっています。

そのうちの1社からは、新たに発生する教育訓練コストを奨励金によって補填できるため、制度を適用できる応募者に対する評価基準は、適用できない応募者と比べてやや緩むこともあるとの回答も得られました。

そして実際に既卒者を採用してみた感想を尋ねると、「素直に一生懸命仕事を覚えようとしてくれる」「成長スピードが速い」など好意的な回答がほとんどでした。一方で、今後も未経験の若年者を募集対象に含むか否かは、企業によって回答がわかれました。

以上みてきたように、奨励金制度は、新卒採用の枠組みからも中途採用(即戦力採用)の枠組みからもこぼれ落ちてきた〔既卒者〕に、応募可能な求人の範囲を広げる効果をもっていることがわかります。また企業がこのように募集対象範囲を広げるに至る経緯には、ジョブサポーターをはじめとする職員からの情報提供が介在していることがわかりました。

若年者そのものは多様な選択肢の1つにすぎない

最後に「④まったくの年齢不問・経験不問で広く募集を行った企業」は、事業拡大のための増員と退職者の補充とが重なり、常に人手不足の状態にある企業です。できるだけよい人材を大勢確保するためには、まずは応募者の数を増やさなくてはなりません。そこで、募集対象者の範囲を可能な限り広げるために「年齢不問」「経験不問」としています。

さらに、多様な人々の目に求人票が留まるように、若年者だけでなく高齢者、障がい者、非正規雇用者など労働市場で不利な立場に置かれている人々を対象とする、あらゆる奨励金制度を適用できる形で求人票を出しています。また、ハローワーク以外にも学校や業界団体などさまざまな団体を経由して人材を募集する、就職面接会や企業見学会へ参加するなど、多様な採用手法を同時に並行して用いています。

こうした企業にとっては、新卒者・既卒者という区別以前に「若年者」そのものが多様な選択肢の中の1つにすぎません。採用される人材の多くが未経験者ですから、既卒者は他の多様な背景を持つ未経験人材と一緒に、トライアル雇用制度が適用されようがされまいが、比較的長期にわたる訓練を受けることになります。

本報告のまとめ

(1)中小企業が新卒者の採用に至る条件

まず、新卒者を定期採用するには、一定数以上を継続的に雇用し、社内で育成できるだけの安定的な経営基盤と資源の確保が必須条件になります。単発の新規採用において新卒者を採るか否かは、偶発的な要因に左右されます。具体的には、年度初めに採用のタイミングが合うこと、新卒者に限定した募集を行うための具体的な方策を企業が持っていることが条件となります。

(2)就業経験の少ない既卒者を採用する動機付けやきっかけ

新卒者の代わりに既卒者を採用する最大の要因は、採用のタイミングが年度途中であったことです。さらに奨励金制度や「既卒者だからといって能力不足とは限らない」という認識が、その実行を後押ししています。

一方、経験者を即戦力採用する方針から未経験の既卒者を育成する方針へ転換した要因は、労働市場における経験者人材の不足や、過去に採用した経験者に対する不満でした。これらの企業では、未経験者を雇用することで発生する訓練コストを補うために奨励金が活用されていました。

いずれの場合も、既卒者は新卒者と同様に「若く柔軟で訓練可能性が高い人材」と見なされています。新卒・既卒を区別せずに〔若年者〕を募集し〔既卒者〕を採用した企業の場合も同様です。

また、労働力需要の著しく高い企業では、人手不足を補うため、既卒者だけでなく労働市場において不利な立場にある多様な人々を採用する可能性が示唆されました。

(3)若年者雇用支援施策は企業と若者をどのように結びつけているのか

就職面接会や企業見学会、ジョブサポーターが企業の詳細な人材要件を汲み取り、若年者を個別に紹介する取り組み。これらはいずれも、企業と若年者との出会いを創出し、両者のマッチングを促進させるための取り組みです。今回の調査では、狙い通りの効果が得られていました。

一方で、奨励金制度は採用対象者の範囲を〔新卒者限定〕あるいは〔経験者限定〕から〔未経験の既卒者も応募可〕へと拡大させることに貢献していました。また、教育訓練に必要なコストを補填できるため評価基準が緩くなる効果も一部みられました。そして実際に既卒者を採用した企業が「試しに雇ってみたら予想以上によい人材だった」と認識したことで、「次の採用機会においてもまた既卒者を募集対象に含めよう」と考える好循環を生み出しています。

しかしトライアル雇用期間に教育訓練が実施されていない例などもみられ、課題は残っています。

教育訓練と「孤立させないこと」が重要

報告を締めくくるにあたり、皆様にお伝えしたいことがございます。

まず企業の皆様には、新卒者・既卒者を「育てる」ことを忘れないでいただきたいのです。

ヒアリング調査に協力してくれた若年社員たちは中小企業の魅力として「早い段階から責任のある仕事を任せてもらえる」「地元で働ける」「経営陣との距離が近く組織の風通しがよい」ことをあげており「大企業に応募したけれど不合格だったから仕方なく中小企業に就職した」という人はごく少数でした。そして彼ら・彼女らの大半が、現在の会社で働き続けることを望んでいました。

しかし先述のとおり、調査対象企業の中には、就業経験のない新卒者や既卒者に、採用直後から教育訓練なしに既存社員と同等の業務を任せた企業がいくつかありました。また、上司や先輩社員が通常業務に追われ、若年者が「具体的な指示がなく何をどう頑張ればよいのか分からない」状態になっていた企業もありました。そうした企業では若年者の勤続意欲がそがれています。せっかくの出会いを無駄にしないためには、若年者を会社全体で育てていくことが何より重要です。

また本日はご紹介しきれませんでしたが、若年者が新卒時に就職できず、あるいは早期離職し既卒者として応募してくる過程にはさまざまな事情があります。既卒者を門前払いせず、個々人をよくみて評価すれば、意外な出会いもあることをご理解いただければ幸いです。

中小企業と若年者とを結びつけるには

次に、大学や諸団体で若年者の就職支援にあたられている皆様には、若年者が中小企業に対して具体的な行動を起こすよう、彼ら・彼女らの背中を押していただければと思います。

さきほど申し上げましたとおり、若年者の中には中小企業を自ら選んで応募する人もいます。しかし一部の大手企業に応募が集中することもまた事実です。大手企業の採用活動は、膨大な数の応募者を絞り込む必要があるため、書類審査や筆記試験などによって面接段階にたどり着く前に多くの人がふるい落とされてしまいます。

これに対して、応募数が比較的少ない中小企業は、面接の前に候補者を大幅に絞り込むことはありません。そのため、個々人の良さを直にアピールするチャンスがあります。

しかし、現在の大学新卒者の就職活動はインターネット上の大手求人サイトに登録するところから始まります。中小企業の求人は大手求人サイトにはあまり載っていませんし、定期採用を実施していない場合は大学に求人を出すことも稀です。そうした中小企業の求人情報はハローワークにたくさん集まっています。ぜひ、学生や既卒者の皆さんに、足を運んでみてはどうかとお伝え下さい。また既卒者の方が応募できる求人も多数あります。

同時に、大学と地域の中小企業との関係作りにも、ぜひハローワークを活用して下さい。学校へのジョブサポーターの派遣事業などさまざまな取り組みを行っております。

ハローワーク・学校・地域企業とのさらなる連携を

それでは、企業と若年者の間をつなぐ行政は、今後何を課題とするべきでしょうか。調査の結果、マスメディアの報道や奨励金制度をきっかけに「既卒者だからといって能力が低いとは限らない」という認識が企業の間に浸透しつつあることがわかりました。これを一時的な流行に終わらせないためには、ジョブサポーター制度や就職面接会などさまざまな取り組みによって、既卒者個々人の良さを求人企業に伝え続けていく必要があります。

一方で、若年者が中小企業に目を向けるように働きかけるだけでなく、若年者自身が「優良な中小企業」を見分けられるように、地域の企業情報を収集すると同時に、若年者自身の鑑識眼を育成することも必要です。

また、新卒時に正規雇用の仕事に就けなかった方が卒業後も継続的に支援が受けられるようにするには、学校と行政という支援主体間の情報交換を円滑に行う必要があります。

いずれもハローワークと教育機関・地域企業とのさらなる連携を進めることが鍵となるでしょう。

最後に、本日は「就職」という学校から職業への移行時点に焦点をあててお話させていただきました。しかし就職は職業人生のスタートであり、ゴールではありません。冒頭で述べたように、現在の日本社会では、必ず一定数の若年者が非正規雇用者として働かざるを得ない状況にあります。そうした現実を見据えれば、正規雇用に限らない多様な働き方を前提として、就職活動というスタート時点から、働きながらの職業能力の開発、安定的な雇用への移行、職場への定着まで視野に入れて、長期的な支援が必要だと考えます。

最終的には、どのような働き方であっても、人として誇りを持って働き続けられる社会を作っていくことを、目標とするべきでしょう。