資料シリーズ No.166
労働力需給の推計
―新たな全国推計(2015年版)を踏まえた都道府県別試算―

平成28年4月15日

概要

研究の目的

経済構造、労働力需要・供給構造の変化に関する分析の基礎資料として、労働力需給に関するシミュレーション結果を提供する。

研究の方法

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2012年1月推計)と政府の「「日本再興戦略」改訂2015」(2015年6月30日閣議決定)の成果目標を踏まえ、将来の全国の性・年齢階級別労働力人口及び就業者数、並びに産業別就業者数について、次のシナリオにわけて計量経済モデルによるシミュレーションを実施した。また、全国のシミュレーション結果を踏まえ、都道府県別労働力人口及び就業者数の試算を行った。

  1. 経済再生・労働参加進展シナリオ(以下、経済再生・参加進展):各種の経済・雇用政策を適切に講ずることにより、年率2%程度の経済成長注)で、若者、女性、高齢者などの労働市場への参加が進むシナリオ(経済成長と労働参加が適切に進むケース)
  2. ゼロ成長・労働参加現状シナリオ(以下、ゼロ成長・参加現状):ゼロ成長に近い経済成長で、性、年齢階級別の労働力率が現在(2014年)と同じ水準で推移すると仮定したシナリオ(経済成長と労働参加が適切に進まないケース)

注)「日本再興戦略」では今後10年間の平均で、実質2%程度の成長を目標としている。

主な推計結果

  1. 2030年の労働力人口は、2014年の6,587万人から、ゼロ成長・参加現状では5,800万人に減少すると見込まれる(図表1)。一方、経済・雇用政策を講じ、経済成長とともに労働市場への参加が進む場合である経済再生・参加進展では、6,362万人とゼロ成長・参加現状に比べ減少幅が縮小すると推計される。2030年の労働力率は、2014年の59.4%から、ゼロ成長・参加現状では55.5%に低下すると見込まれる。経済再生・参加進展では、60.8%と2014年水準よりも上昇する結果となる(図表1)。
  2. 2030年の就業者数は、2014年の6,351万人から、ゼロ成長・参加現状では5,561万人に減少すると見込まれる。経済再生・参加進展では、6,169万人とゼロ成長・参加現状と比べ減少幅が縮小すると見込まれる(図表2)。2030年の就業者数の性別構成については、ゼロ成長・参加現状では2014年(男57.0%、女43.0%)とほぼ同様であるが、経済再生・参加進展では女性の構成比が1.4ポイント上昇するとの結果を得る。2030年での年齢別構成については、人口の高齢化を反映して、60歳以上の者の割合が2014年の19.4%から、ゼロ成長・参加現状で20.3%、経済再生・参加進展で22.8%といずれも高まると見込まれる。2030年の就業率は、2014年の57.3%から、ゼロ成長・参加現状では53.2%に低下すると見込まれる。一方、経済再生・参加進展では、59.0%に上昇する結果となる(図表2)。
  3. 2020年の産業別就業者数は、2014年と比較すると、経済再生・参加進展で「日本再興戦略」の成長分野に関連する農林水産業(14万人増)、一般・精密機械器具(4万人増)、 電気機械器具(9万人増)、輸送用機械器具(2万人増)、 その他の製造業(11万人増)、情報通信業(25万人増)、その他のサービス(7万人増)で増加する他、高齢化の進展とともに需要が増大する医療・福祉(111万人増)において増加すると見込まれる。2030年の産業別就業者数は、2014年と比較すると、経済再生・参加進展で、情報通信業(36万人増)、医療・福祉(215万人増)及びその他のサービス(21万人増)において増加すると見込まれる。製造業全体では、経済再生・参加進展で、2020年に25万人増の1029万人、2030年に18万人減の986万人と推計される。
  4. 2030年の労働力人口が2014年から減少する変化率の大きな都道府県は、ゼロ成長・参加現状では秋田県(26.7%減)、青森県(23.3%減)、岩手県(20.8%減)などであり、相対的に減少する変化率が小さい都道府県は、沖縄県(5.3%減)、滋賀県(5.4%減)、愛知県(5.4%減)などとなっている。経済再生・参加進展では、2014年から減少する変化率の大きな都道府県は、秋田県(19.8%減)、青森県(15.7%減)、山形県(13.8%減)などであり、2014年から増加する変化率の大きな都道府県は、沖縄県(4.7%増)、滋賀県(3.5%増)、愛知県(3.4%増)などとなっている。
  5. 2030年の就業者数が2014年から減少する変化率の大きな都道府県は、ゼロ成長・参加現状では秋田県(27.1%減)、青森県(24.3%減)、高知県(21.8%減)などであり、相対的に減少する変化率が小さい都道府県は、東京都(4.9%減)、愛知県(5.1%減)、沖縄県(6.2%減)などとなっている。経済再生・参加進展では、2014年から減少する変化率の大きな都道府県は、秋田県(19.2%減)、青森県(15.4%減)、山形県(13.6%減)などであり、2014年から増加する変化率の大きな都道府県は、沖縄県(5.4%増)、東京都(4.7%増)、愛知県(4.5%増)などとなっている。

図表1 全国の労働力人口及び労働力率(右軸)の推移

図表1画像

注)2014年実績値は総務省統計局「労働力調査」、2020年及び2030年は推計値。

図表2 全国の就業者数及び就業率(右軸)の推移

図表2画像

注)2014年実績値は総務省統計局「労働力調査」、2020年及び2030年は推計値。

政策への貢献

今後、我が国が重点的に取り組むべき雇用・労働政策の方向性を検討した厚生労働省雇用政策研究会において基礎データとして活用され、同研究会報告書(平成27年12月)にも多数引用された。

本文

  1. 資料シリーズNo.166全文(PDF:2.8MB)

【お詫びと訂正】

本文7ページの1行目および18ページの図2-2の数値に誤りがありましたので、お詫びし訂正いたします。 訂正後の図2-2(本文p.18)(PDF:213KB) 本文のPDFには訂正が反映されています。

  • 7ページ1行目

    誤)参加現状で1.1%、正)参加現状で1.3%、

  • 18ページ図2-2

    2014~2020年(年平均)
    ゼロ成長・労働参加現状
    誤)労働投入量(マンアワー)変化率 -0.6% 労働生産性(マンアワー)変化率 1.1%
    正)労働投入量(マンアワー)変化率 -0.8% 労働生産性(マンアワー)変化率 1.3%

本文96ページの11~12行目および104ページの図A-2の数値に誤りがありましたので、お詫びし訂正いたします。 訂正後の図A-2(本文p.104)(PDF:192KB) 本文のPDFには訂正が反映されています。

  • 96ページ11~12行目

    誤)2014~2020年の労働生産性(マンアワー)の年平均変化率は1.2%、
    正)2014~2020年の労働生産性(マンアワー)の年平均変化率は1.5%、

  • 104ページ図A-2

    2014~2020年(年平均)
    ベースライン・労働参加漸進
    誤)労働投入量(マンアワー)変化率 -0.2% 労働生産性(マンアワー)変化率 1.2%
    正)労働投入量(マンアワー)変化率 -0.5% 労働生産性(マンアワー)変化率 1.5%


本文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

プロジェクト研究「我が国を取り巻く経済・社会環境の変化に応じた雇用・労働のあり方についての調査研究」

サブテーマ「労働力需給推計に関する研究」

研究期間

平成27年度

執筆担当者

中野 諭
労働政策研究・研修機構副主任研究員

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