資料シリーズ No.160
労働力需給の推計のための基礎研究
―「社会生活基本調査」を用いたマイクロデータ分析―

平成27年7月1日

概要

研究の目的

「労働力需給の推計」の精緻化に貢献する情報を提供するため、公表されているマクロ集計データでは捉えることが困難な労働力供給の規定要因に関する基礎的な研究を実施する。また、従来の「労働力需給の推計」とは異なる労働力供給の推計方法の検討も行う。

研究の方法

総務省「社会生活基本調査」のマイクロ(特別集計)データを用い、夫の家事分担、インターネットの活用、及び65歳以上の要介護者の介護が労働市場参加や就業に与える影響を計量経済学の手法によって分析した。また、同データを用い、統計的学習の手法によって就業状態選択を予測する方法の検討を行った。

主な事実発見

  • 夫の家事分担比率(夫婦の家事時間計に占める夫の家事時間の割合)の1%ポイント上昇が妻の就業確率及び労働市場参加確率を高める効果(限界効果)は、女性の労働力率のM字カーブの谷付近の年代、つまり25~44歳の妻で相対的に大きくなる。とりわけ、25~29歳及び30~34歳の妻の就業確率及び労働市場参加確率を高める効果の大きさが顕著である(図表1)。
  • インターネットの活用は15~64歳、特に25~44歳の活用者の労働市場参加率及び仕事に就くための学習・研究の実施確率を高め、無業確率を低下させる。さらに、2006年についてインターネットの内容別の影響を見ると、「電子メールの利用」、「情報検索及びニュース等の情報入手」、「画像・動画、音楽データ、ソフトウェアの入手」は労働市場参加確率を高め、無業確率を低下させる。ただし、「掲示板・チャットの利用」は、労働市場参加確率に有意な影響をもたず、無業確率を高める。
  • 1996年以降(男性が介護者の場合は2001年以降)、65歳以上の要介護者の存在は、15~64歳の介護者の就業確率及び労働市場参加確率を下げ、無業確率を高める傾向がある(図表2)。年齢階級別に見ると、とりわけ35~54歳において、65歳以上の要介護者の存在が介護者の就業確率を低下させ、無業確率を高めている。従来は女性が介護の中心的役割を担っていたが、徐々に男性の介護者も増加しつつある状況のなかで、65歳以上の要介護者の存在は女性のみならず男性の就業を抑制する要因となることが窺える。
  • 統計的学習手法による予測を実施した結果、同じ調査年においても、異なる調査年においても就業状態の予測に関する全体としてのパフォーマンスの良さが確認されている。カーネル法を入れるなど一般化線形推計法を用いることによって、労働力供給の推計に利用できる可能性がある。

図表1 妻の就業の有無に対する限界効果(2011年、プロビットモデル)

図表1 画像

注1:括弧内は標準誤差を示している。***、**及び*は、それぞれ有意水準1%、5%及び10%で統計的に有意であることを示している。

注2:妻(65歳以上)には70歳以上の妻も含まれる。 

図表2 15~64歳の就業の有無に対する限界効果(プロビットモデル)

図表2画像

注1:括弧内は標準誤差を示している。***、**及び*は、それぞれ有意水準1%、5%及び10%で統計的に有意であることを示している。

政策的インプリケーション

1)夫が家事分担率を高めることが可能な環境の整備は、妻の労働市場参加を促進させる可能性があること、2)インターネットの活用が可能な環境の整備は、若年層を中心に労働市場への参加に資する可能性があること、3)高齢の要介護者の存在は男女ともに中堅層を中心に就業の抑制要因となる可能性があることが定量的に示された。

政策への貢献

「労働力需給の推計」の精緻化に貢献する情報提供が間接的な貢献である。また、就業を希望する者の労働市場参加を促進する政策の企画・立案の基礎資料となることが期待される。

本文

  1. 資料シリーズNo.160全文(PDF:1.68MB)

本文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

プロジェクト研究「我が国を取り巻く経済・社会環境の変化に応じた雇用・労働のあり方についての調査研究」

サブテーマ「労働力需給推計に関する研究」

研究期間

平成26年度

執筆者

中野 諭
労働政策研究・研修機構 研究員

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