諸外国における外国人材受入制度 ―非高度人材の位置づけ
―ドイツ

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ドイツに滞在(短期除く)する外国人は、滞在法に基づく滞在資格が必要であり、就労を目的とする滞在については、滞在法で就労資格を認めた上で、就労令において細かい規定がなされている。就労令上、非熟練労働者は、主に一般区分における期限付き雇用に位置づけられる。ただし、この就労令上の区分には高度人材対象と目される職種も混在していることから、図表では、非熟練関連の職種を分けて記載した。

図表
区分 レベル 業種(職種) スキーム
熟練労働者 高度 高資格者、EU ブルーカード、大卒者、上級幹部、専門家、学術・研究開発、訓練終了資格者、ドイツ語学校卒業者、外国専門資格・継続訓練修了者、求職者・長期滞在時の雇用 就労には、原則として連邦雇用エージェンシーの同意が必要(高度人材等、例外的に同意不要あり)
期限付きの雇用   人材交流、外国プロジェクト、外国企業派遣者、外国語教師・外国料理人、慈善活動、教育実習(インターンシップ)
非熟練 オペア(子守)、家事使用人、季節労働者、ショービジネス、介護
送り出し労働者   商業活動出張者、社内研修、ジャーナリスト、製品納品・組み立て・保守・管理・修理等、陸運・鉄道、EU・EEAに営業所がある企業の常用労働者の一時的派遣
特定の職業グループ・特定のグループ   講演・公演・プロスポーツ選手・コーチ・モデル・旅行ガイド等、国際スポーツ行事への参加者・関係者、海運・航空、芸術家・エンターテイナー、特定国民(アンドラ、オーストラリア、イスラエル、日本、カナダ、韓国、モナコ、ニュージーランド、サン・マリノ、米国等)、ドイツ民族、越境労働者  
その他   国際協定(トルコ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア等)、滞在許可なしの雇用 国際協定
人道的   人道配慮等に基づく外国人に対する就労許可、職業訓練許可等 国際条約

ドイツで就労を伴う滞在をする場合、原則として連邦雇用エージェンシー(注1)の出先機関である労働局が発行する「労働許可」が必要となる。外国人は原則として、有効な「滞在許可」と「労働許可」の両方の交付を受けるまでは一切の就労活動はできない。また、非熟練労働者については、期限付きの区分で受け入れられるため、長期滞在や定住資格を得ることも不可となる。域外からの非熟練労働者の流入については、やはり厳しく制限されていると言ってよいだろう。

しかし、欧州の中でも比較的好調な経済状況を受け、ドイツ労働市場の労働力需要は強い。従って、域外向けのゲートを狭める一方で、域内へのゲートは拡げる政策をとっている。従来、ドイツの非熟練労働市場の中で最も規模の大きかったのが「季節労働者」であった。就労許可は毎年30万件程度発行されていたが、2011年から急激に減少し始め、2013年以降は発行されていない。この変化は、EU第5次拡大で加盟した新規加盟国に対する移行措置の終了時期、すなわちドイツが労働市場を域内労働者に完全開放した時期と重なる。このことから、ドイツにおいても、非高度人材供給は域内労働者によって置き換えが進んでいるものと見られ、需要の増大を背景に域内労働者の流入は拡大している。

このほか、非熟練の関連区分としては「送り出し労働者(Posted Worker)」がある。例えば建設労働者などは、EU・EEAに営業所がある企業を通じて一時的派遣という形態で供給されている。また、特定の職業グループや国際協定を通じての受け入れなどでも個別の受入規定が設けられ、一部非熟練労働力の受け入れが行われている。

他方、近年においては、大量の難民受け入れがあり、労働市場へも少なからず影響を及ぼしていると言われる。特にシリア紛争の影響で100万人規模の難民を受け入れた2015年以降、認定された難民の一部が労働市場へも参入し始めているものと見られ、難民受け入れをめぐる議論が増大している。

2019年1月 フォーカス:諸外国における外国人材受入制度 ―非高度人材の位置づけ ―イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、韓国、台湾、シンガポール

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