NPOと雇用:ドイツ
ドイツのNPO
—失業者支援などで活躍

ドイツでNPOに相当する民間非営利団体としては、社団(登録社団e.V.、登録協会とも訳される)、財団(Stiftung)、公益有限会社、信託などがある。民間非営利団体は歴史的には古くから存在したが、公益的な活動は、とくに70年代以降に発展し、制度の枠組も整備された。活動領域は福祉、文化、環境、途上国援助などにわたるが、とくに福祉分野での存在感が強い。

日本の市民団体や民間非営利団体に近い登録社団は、設立要件として7人以上の社員の存在がある。設立総会の議事録、目的・名称・所在地などを記した定款を用意し管内の裁判所に登録することで、法人格を得ることができる。財団および有限会社の設立も、比較的容易であるとされる。

税の優遇措置は、法人格とは別に租税通則法(AO)が定めている。基本的に、非営利であり公益性が認められれば非課税の扱いを受けられる。寄付税制についてみると、原則として法人税の優遇団体への個人や法人の寄付は控除できることになっている。

このようなドイツの非営利セクターは、雇用者総数に占めるNPO職員の割合が約6%に達している。また、財政的には運営費の約64%が公的補助によってまかなわれているが、とくに福祉・医療・社会分野ではこの比率が8割を超えている。ただし、スポーツ・レジャー関係の登録社団の場合、会費収入が運営費の約7割を占めるなど、活動分野によって割合は大きく異なる。

雇用に関しては、失業者支援を実施する主体の一つが登録社団である点が興味深い。一例としてドルトムント(北西部ノルトライン・ヴェストファーレン州にある工業都市)の失業者センターをみると、失業者のための相談受付、情報提供、支援活動をメニューに掲げている。ドイツでは05年1月から、失業扶助(失業給付期間終了後に支給される)と社会扶助(生活保護に相当)が「失業給付II」に統合されるが、そのような制度変更の情報提供、相談は、このような団体によっても担われている。ドルトムント市に近いモエルス市には、モエルス失業者センターがある。ここでも失業に関する制度、求職、職業訓練などに関する相談が行われているが、労働組合が運営の主体となっていることが特長になっている。

北ドイツ、ブレーメンの北西にあるオルデンブルク失業者センター(略称ALSO)では、「朝食の日」や「コーヒーの日」を週に1回程度設けるなどして草の根の活動を行い、年間約6000人の相談を受けている。ALSOはウェブサイトで、雇用促進政策などについての自治体との見解の相違を紹介。また、自治体からの公的補助が削減された事情を説明し、寄付を呼びかけている。地方自治体や行政との関係をみても、さまざまなケースが存在していることをうかがわせている。他の地域の失業者センターでも寄付を呼びかけているところがあり、財政も一つの課題といえそうだ。

2004年8月 フォーカス: NPOと雇用

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