NPOと雇用:フランス
フランスのNPO

1.アソシエーション(注1)

日本のNPO法人に相当するフランスの市民団体は、アソシエーションといい1901年の「アソシエーション法」(注2) によって規定されている。フランス革命により、封建制度下の宗教団体や同業者団体などが解体され、中央集権的な政治体制をとってきたフランスでは、「団体の成立は個人の自由意思を拘束するもの」とされてきた。民間の非営利団体の自由な活動には規制が加えられ、個人と国家の間にいかなる団体の存在も認めないという体制が長く続いた。しかし、この「アソシエーション法」により、公的自由としての「結社を結成する自由」と「結社に加入する自由」が宣言・保障され、非営利団体(アソシエーション)に関する規定が設けられた。同法によれば、アソシエーションとは「2名以上の者が、利益の分配目的以外の目的のために、自分たちの知識や活動を恒常的に共有するために結ぶ合意」であり、不法な目的や利益を内部で分配しない限り、かなり広範囲にアソシエーションの設立が認められている。この法律によると、アソシエーションは、1)無届のアソシエーション、2)届出をしたアソシエーション、3)公益性を承認されたアソシエーション――の大きく3つに分類することができる(注3) 。

2.アソシエーションの活動と参加の形態

フランスのアソシエーション活動は飛躍的に拡大している。アソシエーション創設の届出数をみても、1975年では年間2万件であったが、現在では年に6万を超えるとされる。その種類は多種多様で、平均寿命は5年程だが、長いものでは「人権リーグ」のように百年以上続いているものもある。全国で毎日のように届出があり、その数は実質的につかみきれていないが、730万から800万といわれている。現在活発な活動をみせているアソシエーションは多岐にわたり、活動内容は、職業上の利益を守ること(注4)や、公衆衛生、保健からスポーツ、文化など、また教育や職業訓練、自然保護や社会福祉に至るまで、千差万別である。1990年の国立統計局が行った国政調査によると、スポーツ関係:24.5%、文化、観光、娯楽:23%、衛生・福祉関係:16.5%、社会生活:9.5%、住まいや環境:9.5%、教育・訓練:8.5%、企業へのサービス:8.5%となっている。

アソシエーションの活動では、「国や自治体との関係のあり方」がひとつのテーマとなる。この問題は、フランスでも過去20年ほどさかんに議論されてきた。そこで一般的な考え方とされるのが、「パートナーシップ」である。これは、アソシエーションが自立性を確保して、国や自治体とは一定の距離を保ちながら最も客観的な作業を展開できるようにすることを理想とし、その活動の発展に対する国や自治体の経済面での支援が重要という考え方が基盤となっている。

国や自治体が拠出する補助金は、アソシエーションの年間予算の何割かを構成する場合もあれば、ある特定の行動プロジェクトごとに支援金を出す場合もある。しかし、その判断基準については不透明な部分もあるとされる。2001年5月にフランス政府が公表した最近のデータによれば、アソシエーションの年間予算の平均42%が公的補助金であり、以下会費が40%、企業メセナ(企業がパートナーシップの精神に基づいて行う芸術文化支援)が3%、私的寄付金が1%で、残りの14%が事業収益となっている。

市民がアソシエーションに参加するには、会員になる、寄付金を定期的に出すなど、いくつか方法がある。大きく分けた参加の方法では、寄付金を出しているという人が6.5%、催しなどに時々参加するという人が49.6%、アソシエーションが提供するサービスを買うという人が44.3%いる。

フランス人の39%が少なくともひとつのアソシエーションに参加しており、参加者は月5時間から10時間以上、アソシエーションのために仕事をしている(このうち63%が最低2つ以上のアソシエーションに加入し活動している)が、直接参加はせずに支援金を払ったりすることで活動を支援するというひとたちが39%いる。つまり、10人中8人が、何らかの形でアソシエーション活動に関与していることになる。

3.アソシエーションと雇用

アソシエーションで働く専従職員(給与をもらって働いている被雇用者)は120万人といわれ、給与労働者の約6%強を占める(ちなみに、1975年には約100万人)。すべてボランティアで運営しているアソシエーションもまだ無数にあるとはいえ、雇用という観点からみても、このセクターの広がりは無視できない。また、失業問題が深刻化するなか、16歳から30歳未満の青年を対象にして、公的セクターと非営利アソシエーションにおいて35万の雇用を創出するという政策(「青年-雇用:Emplois-jeunes」プログラム)が97年末から実行されている。35万のうち公的セクターでの雇用(多くは教育省、地方自治体の保健・福祉局や住宅・環境局、警察、国鉄などの公企業)が70%、アソシエーション(スポーツ・余暇・文化関連、保健・福祉領域)での雇用が30%となっており、「雇用の受け皿」としてもアソシエーションの重要性が増している。

参考資料

  1. ディディエ・ドマジエール著/都留民子訳『失業の社会学-フランスにおける失業との闘い-』 法律文化社、2002年
  2. コリン・コバヤシ(編)『市民のアソシエーション フランスNPO法100年』大田出版、2003年

2004年8月 フォーカス: NPOと雇用

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