中国政府、新型都市化計画(2014~2020年)を発表

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中国政府は3月16日、「国家新型都市化計画(2014~2020年)」(以下「新型都市化計画」という)を発表した。習近平政権は2013年の発足以来、「新型都市化」の建設推進を重要政策に掲げている。今回の「新型都市化計画」は、伝統的な人口移動とは異なり、都市インフラの建設、環境への配慮、戸籍制度の改善、出稼ぎ労働者に対する職業訓練・福利厚生の改善などの対策を盛り込んでいる。

都市化の進展により都市病が深刻化

中国政府は、都市化に「城市化」ではなく「城鎮化」という名称を当てている。「城鎮」は「城市」と「建制鎮(注1)」の総称である。1978年の改革開放以来、「城鎮化」はかなり速いスピードで進展した。1978年から2010年までの間に、「城市」の数は193から658に増加し、「建制鎮」の数も2173から1万9410に増えた。都市化の進展に伴い、都市部の発展格差、特有の戸籍制度などが原因で人口が沿海部の大都市に集中し、就職難、大気汚染、交通渋滞、環境破壊といった都市病がますます深刻になっていった。こうした問題を解決するため、中国政府は都市化について1978年から研究し始め、2001年から国家戦略として重視してきた。

「新型都市化」政策の何が「新型」なのか。李克強首相は、2013年11月21日に北京で開催された「中国・EU都市化パートナーシップフォーラム」で、「新型都市化は人を核心とした都市化であり、農民の意志を尊重し、農民の権益を保護する都市化であり、集約型、インテリジェンス、クリーン、低炭素など人と自然を融和させる都市化である」と主張した。

「新型都市化」のポイントは大小都市化建設を強化し、大都市が元から持っている能力を発展させ、中小都市や小都市の発展に先導的な役割を発揮させることにより、地域の協調的な発展を推進することである。

都市化に伴い1億人に戸籍を付与

1978年から2013年までの間、都市の常住人口は1.7億人から7.3億人に増加し、都市化率は17.9%から53.73%に上昇した(図1)。しかし、都市部に戸籍のある人口の割合は2012年で35.3%にとどまり、常住人口の都市化率52.6%と17.3ポイントも差がある。

「新型都市化計画」は初めて、都市化率を常住人口都市化率と戸籍人口都市化率の2つに区分した。計画によると、常住人口都市化率が2012年の52.6%から2020年までに60%前後に達し、戸籍人口都市化率は2012年の35.3%から2020年には45%前後に達する。このため、2020年まで1億人に居住している地域(城鎮)の戸籍を与えるという目標を掲げている。

図1:中国都市化率の推移(単位:%)

図

出所:『中国統計年鑑2013』中国統計局

都市規模に基づく戸籍制度の差別化を検討

中国では、戸籍制度は単に人口登録の手段だけではなく、教育や医療、社会保険など社会保障全般に関わっている。それは、北京、上海、広州などの特大都市で特に顕著である。それらの地域の戸籍は価値が高く、取得希望者が大勢いるため、都市部の人口バランスが崩れ、「都市病」の問題が深刻化する要因となっている。現在、出稼ぎ労働者は中国産業労働者の重要な部分を占めている。中国特有の戸籍制度の影響で、現在2.34億人の出稼ぎ労働者および一緒に移動するその家族は、教育、就職サービス、医療、年金、社会保障型(中低所得者向け)住宅などの都市住民が享受している公的サービスを受けることができない。その上、農村に残る待機児童や女性、老人などの問題も日々深刻になっている。「新型都市化計画」はこれらの問題を解決するため、都市規模に基づき、戸籍登録制限を一定程度自由化する対策を盛り込んでいる(表1)。

表1:都市規模に基づく戸籍登録制限の自由化策
都市規模 戸籍登録制限の自由化策
50万~100万人 段階的に展開
100万~300万人 合理的に展開
300万~500万人 合理的に確定
500万人以上 厳格に制限

出所:「国家新型都市化計画(2014~2020年)」より作成

また、特大都市の戸籍登録制度にポイント制などの方式を段階的に導入することを提案している。特大都市の戸籍登録ポイント制は、2009年に広東省中山市を試行地域として開始され、上海、天津などの大都市でも順次試行された。北京政府も今年から戸籍登録ポイント制の導入を検討している。

戸籍制度の変更に伴い、都市における基本公的サービスの提供も地元から居住している地域に移して実施する。都市部に居住する戸籍のない農民も都市部で公的サービスを享受することができるようになる。

出稼ぎ労働者に起業や職業技能訓練を提供

「新型都市化計画」は、社会福祉の提供を、地元戸籍がある人口から常住人口に転換して実施することを表明した。常住出稼ぎ労働者の子供が都市部で義務教育を受ける権利をはじめ、公的就職サービスの提供、社会保障(年金、医療など)の拡大、地域サービス利用条件の改善、公的住宅の提供拡大など、様々な分野を提示した。そのうち、出稼ぎ労働者に対する公的就職サービスの提供(表2)に関しては、政府が補助金を出して、技工学校、中高等職業学校、職業技能訓練機関などにおける職業育成訓練を奨励する。そのほか、就業情報を全国ネットでつなぎ、出稼ぎ労働者に無料で就職情報や政策に関する問い合わせサービスを提供する。

表2:出稼ぎ労働者職業技能向上計画
計画 対象 育成訓練レベル 内容
1.就職技能育成訓練 非農業に移動した農村労働者 特定技能と初級技能
  1. 技工学校、中高等職業学校、職業技能訓練機関などの職業育成訓練を奨励
  2. 政府が補助金を支給
  3. 毎年1000万人を目標
  4. 少数民族を2言語で訓練
2.職場技能向上育成訓練 企業と労働契約を結んでいる在職出稼ぎ労働者 技能向上
  1. 職位技能向上の訓練
  2. 毎年1000万人を目標
3.高技能人材と起業人材育成訓練 中高級技能と起業希望を持つ出稼ぎ労働者 高技能人材と起業人材の育成訓練
  1. 政府が補助金を支給
  2. 毎年100万人を目標
  3. 起業人材育成訓練
4.就業前育成訓練 進学できない非農業あるいは都市に出る農村の中学高校卒業生、農村戸籍の退役兵士 専門準備技能訓練 専門準備技能訓練
5.コミュニティ公益性育成訓練 出稼ぎ労働者 職業技能と教養
  1. コミュニティと協力
  2. 出稼ぎ労働者の技能と教養を向上させる訓練
6.職業技能育成訓練に関する能力の向上
  1. 現有の職業教育と訓練機構に基づいて、職業技能実践訓練機構を改編する。
  2. 大中企業と技工学校、職業学校の提携により、出稼ぎ労働者実践訓練機構の設置を奨励する。
  3. 特色ある学校と中高等職業学校の建設を奨励する。

出所:「国家新型都市化計画(2014~2020年)」より作成

参考文献

  • 中国政府網、人民網、経済参考報、人民日報、新華網、南方日報

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