世界の賃金上昇率1.2%
―欧州危機で先進国伸び悩む、ILOが報告

カテゴリー:非正規雇用

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  • 国別労働トピック:2012年12月

国際労働機関(ILO)は12月7日、「世界賃金報告2012/2013―賃金と公正な成長」と題する報告を発表した。それによると、世界平均の実質賃金の対前年上昇率は2011年に1.2%を記録し、2010年の2.1%に比べて落ち込んだ。欧州経済危機の影響を直接に受けた先進国の伸び悩みが影響している。

実質賃金上昇率はわずか0.2%

世界全体の平均から、大きな比重を占める中国を除くと、実質賃金の上昇率は0.2%に落ち込み、世界経済危機直後の2008年、2009年の数字よりも低かった(図1)。

図1:世界の実質賃金平均上昇率 (年間、%)図1.世界の実質賃金平均上昇率(年間、%))

  • ※「暫定予測値」(対象75カ国)
  • 注:124カ国の実質平均月額賃金の年間上昇率の加重平均として算出したもの、世界の全雇用労働者の94.3%を網羅
  • 出所: ILO世界賃金データベース

日本、生産性向上が賃金に反映せず

日本については、アメリカやドイツとともに1999年から2007年にかけて労働生産性が向上したにもかかわらず、賃金が上昇していない点を指摘。多くの先進国でその傾向が見られたが、反対にギリシャやアイスランドなど一部の国では、労働生産性の向上率に対して実質賃金の上昇率が非常に高いという結果も見られた(図2)。

図2:先進国における労働生産性向上率と実質賃金上昇率との相関関係図 (1999-2007)

図2.先進国における労働生産性向上率と実質賃金上昇率との相関関係図

  • 出所: ILO世界賃金データベース

労働分配率は下落傾向に

このほか労働分配率(注1)については、日本、アメリカ、ドイツを筆頭に、先進国では過去40年間下落傾向にあり、とりわけ日本にその傾向が顕著だ(図3)。

ILOは報告書の中で、労働分配率の低下は、労働者の消費心理に影響を与え、結果として家計消費の低下や総需要不足を引き起こす要因にもなると指摘。特に、競争力を維持するために単位労働コストを削減しようとする賃金カット競争を多くの国で同時に実施した場合、労働分配率の「底辺化競争」を引き起こし、全世界の総需要を冷え込ませる悪循環に陥るかもしれないとの懸念を示している。

図3:労働分配率の推移 (先進国、日本、アメリカ、ドイツ)(1970-2010)

図3:労働分配率の推移(先進国、日本、アメリカ、ドイツ)(1970-2010年)

  • 注:先進国(オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、オランダ、スペイン、スウェーデン、イギリス、アメリカの16カ国)
  • 出所: AMECOデータベース

生産性向上、賃金上昇に関連づけを

ILOは低下する労働分配率について、多くの国で長期間にわたり賃金が下落して企業利益が増加したことや、労働者間の資金配分(例:「正規と非正規」、「経営幹部と一般従業員」など)が一層不公平になり貧富差が拡大していることに警告を発している。こうした事態を改善するため、各国は労働生産性の向上と賃金の上昇をもっと緊密に関連付ける政策を行う必要があるとして、特に経常黒字国で生産性が向上しているのに賃金が抑制されている場合、国内需要の刺激策としての賃金増加策を積極的に進めるよう政府に求めている。また、経常赤字の国についても、賃金決定から労使を排除するような極端な緊縮政策を行わないように訴えている。さらに、国内の貧富格差については、特に低賃金労働者に対する強い保護が必要だと主張している。

参考資料

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