公務員労組支援のキャンペーン開始
―AFL-CIO

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2011年5月

アメリカの労働組合のナショナルセンター、AFL-CIO(アメリカ労働総同盟産別会議)は、「我々はひとつ(We Are One)」と題したキャンペーンを4月4日に全米各州でスタートさせた。これは、ウィスコンシン州をはじめとして全米12州で起こっている公務員労組権利に制限をかけるという反組合的な動きに対抗するものである。

4月4日はキング牧師がフィラデルフィアで暗殺された日だ。この日、キング牧師は公共部門の労働者が団体交渉権を求めて行っていたストライキを率いていた。公民権運動の旗手として知られるキング牧師は、労働運動のさなかに暗殺された。そのため、4月4日が公務員労組の権利を守る象徴的な日として選ばれたのだ。

さまざまな労働組織が運動に結集

このキャンペーンにはいくつかの特徴的なことがある。

それは、労働組合だけでないさまざまな組織が結集したことと、フェイスブックなどのインターネットを通じたソーシャル・ネットワークサービスが活用されていることである。

労働組合員以外の組織とは、コミュニティ・レベルの活動家、人権活動家、大学生、宗教家などからなる。

コミュニティ・レベルの活動家は、アメリカの労働法、NLRA(全国労働関係法)の制約により労働組合を組織することができない労働者の労働条件向上や権利擁護などに取り組んでいる者である。大学生は、ロースクール、社会福祉学部、神学部などの学生が中心となっている。宗教家は、キリスト教に限らずさまざまな宗派からなり、「労働に正義を」の合言葉で集まった。また、AFL-CIOの地域別の組織である協議会や、労働組合とさまざまな労働関連組織とのネットワークづくりを行うジョブズ・ウィズ・ジャスティスといった組織も参加している。

インターネットを通じたソーシャルネットワークの活用は、現場で起こっていることが写真や動画などにより即座に全米中に伝わっていくという効果をもたらしている。

これら、労働組合以外の組織とインターネットを通じたソーシャルネットワークの活用は相互に連携しあい、広がりをみせている。

世論調査は組合支持が若干上回る

公務員労組権利の制限に関連した議論は複雑な問題も含んでいる。

それは、州財政の改善を目的とした公務員の労務コスト引き下げの必要性である。これには、労働条件低下の足かせとなる公務員労組の権利を剥奪しなければならないという主張がある。これが今回の問題を引き起こした論点である。公務員労組側は団体交渉権、団結権といった労働組合の基本的権利を維持するために労働条件低下を受け入れる選択を州政府側に提示した。それでもなお、共和党出身の知事達は公務員労組権利の制限を撤回していない。つまり、公務員労組権利制限と州財政状況の改善に直接の因果関係がもはや存在しないのである。

次に、州財政が悪化する中で公務員人件費の低下がやむを得ないことだとしても、合理的な妥協点がどこにあるのかということである。

これらの疑問に関し、民間調査会社、新聞、テレビ等は多くの世論調査を実施している。たとえば、公務員労組権利制限と増税のどちらを選択するか、という設問もある。この場合、増税を選択する回答も少なくない。

4月1日には、州知事と労働組合のどちらを支持するかという調査結果を、民間調査会社ギャラップ社が発表した。

これによれば、労働組合を支持するとした回答が48%だったのに対し、州知事を支持するとした回答は39%にとどまるなど、労働組合支持が州知事を上回っている。

公務員労組を支援する動きは、民間、公的の枠をこえた労働組合の運動となっているだけでなく、学生、宗教、人権問題、コミュニティといった組織を巻き込んだ幅広いものとなっている。

参考

  • Nationwide Events Held to Support Workers Draw Unity From Labor, Civil Rights Group.
  • Daily Labor Report, April 4, 2011
  • More Americans Back Unions Than Governors in State Disputes, Nearly 8 in 10 adults in union households are following the issue closely, April 1, 2011

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