最低賃金8月1日より引き上げへ
中央賃金委員会は、2005年8月1日より全国75県の最低賃金を2~8バーツ引き上げることを発表した。これによりバンコクは6バーツアップの181バーツ、バンコクの近隣県である、ノンタブリ、ナコンパトム、パトゥンタニ、サムットプラカン、サムットサコンの5県も同額となった。一方、南部のナラティワート県では、県の賃金委員会が引き上げを要求しなかったため、今回は据え置きとなった。
労働組合は、引き上げ額に不満
タイ労働議会(LCT)のプラチュワン議長は今回の引き上げについて、現在の経済状況を考慮すると、東北部の数県の引き上げ額が不十分であるとしている。引き上げが十分でない理由のひとつは、県の賃金委員会が中央賃金委員会から、賃金額を低く抑えるように圧力をかけられたためであると説明した。今回の引き上げは、従来の引き上げ額よりも多少高い額となったが、プラチュワン議長は2004年からの日用品価格の高騰に対応するには十分な額ではないと述べている。
7月18日には、首相官邸前で約3000人の労働者が、タクシン首相に1)全国一律223バーツの日額最低賃金制度の開始(2005年10月1日から)、2)物価の調整(物価の安定制度)、3)現行の社会保障制度と30バーツ医療制度の統合の中止、の3つの項目を要求するデモを行った。
日給223バーツという額に関しては、5月1日のメーデーにおいて労組側から提示された額であるが、メーデー時のタクシン首相の回答は、33%もの賃金引上げは解雇や工場の閉鎖、中国への工場移転などを促進させる恐れがあるとして、受け入れられないというものであった。
タイ電気機器・自動車・鉄鋼などの労組の合同調査による報告書によれば、労働者の多くが現在の所得は生活水準を維持するために十分ではないと回答しているという。そして、政府の物価調整の政策に対しても不満があり、労働者が、副業や内職をすることによって生活費の増加に対応している現状を改善してほしいとの声があった。
チュラロンコン大学政治学部のチ・ウンプラコン氏も、労働者の要求額である223バーツは妥当、もしくは生産性を考慮すればいまだに低い水準であるとコメントしている。
経営者側は、6バーツの引き上げに不安
賃金委員会の使用者団体代表であるアタユット氏は、最低賃金の引き上げに関して強い懸念を表している。アタユット氏は、経営者側も、原料費や燃料費の増加などのコスト増加に直面しており、さらに人件費が増加となった場合、工場閉鎖による解雇が増加する恐れがあることを示唆した。そして、タイの現状では、4バーツの引き上げが精一杯と個人的見解も示した。
政府は、貧困層に配慮
中央賃金委員会のジャルポン委員長は、今回の賃金引上げが、世帯収入が月額1万5000バーツ以下の全国260万人の労働者の生活水準向上になれば、と述べている。
新最低賃金額一覧
(2005年8月1日より実施、括弧内は新しい賃金額:バーツ)
- 8バーツ引き上げ(1県)
プラチュアップキリカン(147)
- 6バーツ引き上げ(16県)
バンコク(181)、カンチャナブリ(148)、チャチュンサオ(150)、チョンブリ(163)、トラート(145)、ノンタブリ(181)、ナコンパトム(181)、パトンタニ(181)、ラノン(153)、ロップブリ(146)、サムットプラカン(181)、サムットサコン(181)、サラブリ(161)、ナコンラチャシマ(156)、アユタヤ(152)、ラヨン(153)
- 5バーツ引き上げ(16県)
サムットソンクラン(147)、シンブリ(145)、チェンライ(142)、トラン(145)、パッタニ(144)、プーケット(178)、ヤーラー(144)、ソンクラ(144)、サトゥーン(144)、カラシン(144)、ヤソトン(142)、プラチンブリ(145)、ペチャブリ(147)、ラチャブリ(147)、ルーイ(144)、ウドンタニ(144)
- 4バーツ引き上げ(22県)
チャンタブリ(146)、サケーオ(145)、アントン(146)、チェンマイ(153)、ターク(143)、ピサヌローク(143)、ペチャブン(143)、メーホンソン(141)、ランパーン(143)、ランプーン(145)、スコータイ(145)、ウッタラディット(143)、コンケン(144)、ブリラム(144)、スリン(141)、ウボンラチャタニ(141)、クラビ(148)、チュンポン(145)、パンガー(153)、パッタルン(143)、スラタニ(143)、ナコンサワン(143)
- 3バーツ引き上げ(19県)
チャイナート(142)、ナコンナヨック(141)、スパンブリ(143)、カンペンペーット(143)、ナーン(140)、パヤオ(140)、ピチット(141)、プレー(140)、ウタイタニ(142)、チャイヤプーン(142)、ナコンパノム(142)、マハサラカム(140)、ムクダハン(142)、ロイエット(142)、シーサケット(142)、サコンナコン(142)、ナンカイ(142)、ノンブラアンプー(142)、ナコンシタマラート(142)
- 2バーツ引き上げ(1県)
アムナッチャルン(139バーツ)
- 引き上げなし(1県)
ナラティワート(139バーツ)
参考
- Bangkok Post,2005年7月6,13,14,17,18,19日
参考レート
- 1タイバーツ=2.70円(※みずほ銀行ウェブサイト2005年8月3日現在)
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