フランス職業安定所(ANPE)と労働者派遣企業組合(Sett)が、協力体制の強化について合意
2005年7月6日、フランス職業安定所(ANPE)と労働者派遣(注1)企業組合(Sett)は、雇用のために協力体制を強化し、発展させることについて、合意した。合意文書では、1)求職者、とりわけ、雇用へのアクセスが困難な者に対して雇用への迅速な復帰を促進し、企業が要求する能力を彼らが取得できるようにすること、2)労働市場の流動性を高め、採用のニーズに対応すること――の実現のために、双方の協力関係の維持と、さらなる活性化を約束。よりスムーズな運営のための原則を表明した。
ANPEと労働者派遣企業の協力体制強化の背景には、2005年5月29日のEU憲法批准否決に端を発したラファラン首相の更迭とドビルパン新首相の任命がある。ドビルパン新首相は、就任演説直後の一般施政演説で、新内閣の最優先課題が「雇用創出」であることを示し、その具体案として、1)零細企業における雇用創出の促進、2)失業対策――の2点を挙げた(注2)。今回のANPEと労働者派遣企業との合意は、同計画の本格的な実施を図ったもの。
同首相は、2005年7月7日、パリでのセミナーに集まったANPEの代表達に対し、1)雇用のための闘いにおいて、ANPEのネットワークを動員すること、2)特に、1年以上失業状態にある5万7千人の若年者を対象とすること――を再確認した。さらに、「ANPEの各地方局では早期に対応することができない『採用の困難』という課題への対応が可能で、各地方局を支援する全国的なチームを立ち上げること」を要求。「全国レベルの大きなグループが、国内で何百という求職者を同時に雇用するには、その要求に迅速に応えられる『交渉相手』が必要である」と述べた。
ANEPと労働者派遣企業との協力体制の強化が、厳しい雇用情勢、特に、若年者失業の増加に歯止めをかけることができるのか。双方の具体的な取組みが注目される。なお、合意書に盛り込まれた原則の概要は以下のとおり。
『ANPE地方局と労働者派遣企業の相互義務を定めた文書』
(要点のみ)
- 労働者派遣企業は、自社のクライアントの名をANPEに知らせなければならない。
- ANPE地方局は、1件の採用ニーズを、同時に複数登録することはできない。企業からANPE地方局に直接雇用の申出が登録された場合、同時に、労働者派遣企業向けの雇用として登録することはできない。
- ANPE地方局は、労働者派遣企業によって伝えられた採用ニーズに対応するために、適切なサービスを提供する義務を負う。
- ANPE地方局は、情報の秘密性を保証しなければならない。
- 労働者派遣企業は、ANPE地方局のクライアントのうち、直接雇用の申出を登録してANPEのWebサイトに連絡先を掲載したものに対し、直接コンタクトを取ってはならない。
- 労働者派遣企業及びANPE地方局は、クライアントである企業に対して、それぞれが協力体制にあることを知らせる義務を負う。
注
- フランスでは、interimという労働契約の形態がある。これは、一時的な職務の遂行のために締結される契約であり、契約期間は、原則として最大18カ月に限られる(それ以上の更新は、原則的に不可能)。労働者の雇用及び賃金支払が、就労先企業によって行われるのではなく、一時就労登録会社によって行われる点が、他の期限付雇用契約と異なる。その意味で、このinterimは、日本でいう派遣労働に近い。ただし、日本の派遣労働のように「請負」と区別された概念ではない。
- ドビルパン首相が発表した「雇用のための緊急計画」の内容については、当機構ウェブサイト海外労働情報 国別労働トピック(2005年7月)を参照されたい。
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