ブッシュ政権下NLRB:団結権の範囲縮小へ

カテゴリー:労働法・働くルール労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年2月

ニューヨーク・タイムズなどの米メディアは、共和党多数となった全国労働関係局(NLRB)(注1)が、使用者側に有利な決定を下す傾向が顕著になりつつあると報じている。

2004年7月にNLRBは、私立大学で教職補助・研究補助に携わる大学院生の「労働者性」を認めず、団結権・団体交渉権を否定。続く9月には、会社からリハビリ援助受給中の障害を有する従業員の「労働者性」を否定し、団結権を否認している。さらに11月には、派遣先の正規労働者が組織する労働組合への派遣労働者の加入は、派遣先企業及び派遣会社の許可がない限り認められないとの決定を下している。

このうち派遣労働者の正規労働者組合への加入について、NLRBはこれまで、逆の判断を下してきた。例えば、2000年には、派遣労働者が正規労働者と同様に代表選挙に参加する権限を認め、2001年には、派遣労働者による派遣先組合への自動的加入を容認していた。もっとも、この二つの決定に対しては、「使用者が異なる労働者の交渉単位を複数使用者単位とし、両使用者の合意なく単一交渉単位に組み込むことは、全国労働関係法(NLRA)に反するものだ」といったNLRB委員の反対意見も提示されていた。2004年11月の決定は、従来の少数派意見の趣旨がむしろ尊重され、従来の決定を覆すものだ。

2004年11月のケースは、ニューヨーク州オークデールの老人ホームで就労する正規労働者及び派遣労働者の代表選挙手続きをめぐって、全米サービス従業員労組(SEIU、組織人員170万人)が提起したもの。NLRB地方支局長は「派遣労働者、正規労働者双方に代表選挙における投票権がある」との決定を下したが、当該老人ホームがワシントンDCのNLRB本部に控訴。NLRB本部は、「NLRBは、従来から複数使用者が雇用する労働者グループの混合を否認し、複数使用者交渉単位が容認できるのは、団体交渉の際に一定の要件を満たした場合のみである。使用者の合意なく複数使用者が雇用する労働者を単一単位に組み込むと、使用者間の不必要な紛争を招きかねない」として、NLRB地方支局長の決定を破棄した。本決定に対しては、「経済のグローバル化が低所得・非熟練労働者の非典型労働力化を余儀なくした現状に鑑みると、複数使用者単位の団結を容認した先例の価値は大きかった。今回の決定は使用者側の歓迎を受けるだろうが、団体交渉の法的安定性や予見性に欠けたものといわざるを得ず、政策的正当性を裏付ける立場に偏りすぎている」との見解が少数派意見として提示されている。米メディアも、ブッシュ政権下のNLRBが、労働者の権利縮小に向かいつつあることに懸念を示している。

全国労働関係法(NLRA)は、従業員の団結権行使に対する使用者の干渉・妨害・威圧、解雇などを「不当労働行為」として禁止している。しかし、NLRB独自調査では、23分に1度の頻度で、結社の自由の行使を理由とする労働者の解雇や差別が確認されている。また、コーネル大学が実施した調査は、1)使用者の5割以上が、組織化を望む労働者に対し職場封鎖(ロックアウト)を示唆するなどの非合法な脅迫を行っている(注2)、 2)3分の1以上が反組合従業員を買収したり、優遇措置を講じている、3)4分の1程度がオルグ活動中に組合支持の従業員を非合法解雇している――などの実態を明らかにしている。

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