リスボン戦略の進捗状況に関する報告書

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2005年1月

欧州連合(EU)は、2010年までにEUを競争力のあるダイナミックな経済圏にすることを目的とした「リスボン戦略」を2000年のリスボン欧州理事会で採択し、2005年春に中間見直しを行うこととしている。そのため欧州理事会と欧州委員会は、2004年3月にコック元オランダ首相を座長とする高級専門家グループによる委員会を設置した。委員会は、6回に渡ってリスボン戦略の進捗状況を検証し、11月3日、「挑戦に向かって」(”Facing Challenge”)と題する報告書(コック報告書)を欧州委員会に提出した。

報告書は、過去4年間のリスボン戦略の進捗状況に落胆を示し、確固たる政治的行動の欠如により、数多くの課題調整ができず、優先順位の設定も誤っていた、と結論づけた。高級専門家グループは、リスボン戦略が掲げる経済、社会、環境の3つの分野の目標は現在も有効であり、世界的競争の激化と高齢化が進展する中、とりわけ経済成長率を高め、雇用を増大させることが重要であるとした。そのためには、1)知識社会:研究開発、情報技術活用の促進、2)内部市場:金融サービス等内部市場の整備と貿易障壁の除去、3)ビジネス環境:行政コストの軽減、法制度の質の改善、新会社設立の簡易化とビジネス支援環境の整備、4)労働市場:欧州雇用タスクフォースの勧告を速やかに実施し、生涯学習、活力ある高齢者及び経済成長と雇用促進のパートナーシップのための戦略を発展させること――など、5つの重要分野において確固たる政策を緊急に講じなければならないと提言している。報告書は、欧州理事会、加盟国、欧州委員会、欧州議会、欧州労使それぞれにリスボン戦略を前進させるための行動を勧告している。また、各国レベルでも政府、議会、労使が協調して2005年末までに行動計画を策定するよう呼びかけている。

11月の欧州理事会は、2005年春のリスボン戦略中間見直しの重要性を強調するとともに、欧州委員会に対し2005年1月末までに、高級専門家グループの報告書の内容を考慮に入れた必要な提案を行うよう要請した。12月の欧州理事会においてもコック報告書の指摘事項に関する討議が行われ、欧州委員会が準備中のリスボン戦略の中間見直しに関する報告書への示唆がなされた。

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