社会、教育予算以上に、公務員年金に補助

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

3権の公務員は退職時の給料水準を終身保証されると言う公務員年金制度と、民間部門の年金生活者は社会保障制度に対する納付金の金額に関係なく、社会保障院の支給額は一定に制限する(02年は月額1.561レアル(最低給料の約6.5倍)に制限)と言う制度にしているために、約300万人の公務員年金の負担額は年々増大して、公務員年金負担額が政府の衛生、教育予算を上回る事態になった。

公務員も一部は社会保障分担金を払っているが、年々年金生活者が増加して01年末には300万人に達しているために、現役公務員が払う分担金ではたりず、不足分を政府は国庫から補填しているが、その補充額が01年には486億レアルに達した。公務員年金生活者1人当たり、社会保障院負担は別にして、国庫は年間1万4.590レアルを支出して不足を補っているが、民間部門の年金生活者1.950万人に対する1人当たり補充支出は656レアルとなっており、民間部門は社会分担金納入者が就労者の半分以下に下がったとは いえ、1人当たりの国庫負担は比較にならないほど小さい。

また国家予算全体が公務員年金に食われる率が増大して行く可能性が大きい理由として、公務員は男性53歳、女性48歳で退職を認め、退職時の給料を終身、受けるほかに、現役と給料調整率と同率で、年金のアップを受ける制度にしていることで、更に国庫負担は加速する。民間は男子60歳、女性55歳を最低退職年限にしている。

この不均衡を是正しようと、現政府は過去5年間に渡って社会保障制度改革を試みたが、法案を審議する国会議員自体が自身の年金でもある為に、公務員の年金制度に変更を認めず、公務員は現役、年金生活者共に行政訴訟を起こして改革案の阻止を行い、司法も自身の年金であるために、政府案を、公務員の既得権に違反する違憲法案であると判決して阻止しており、公務員の特権は、行政府の意向が通用しない国家的問題となった。公務員年金制度改革が立法、司法によって阻止されるために、社会保障制度改革案が国会で審議されるたびに、民間部門の年金生活者に対する支給額が、退職年限の引上げや、民間年金支給額制限のような形により抑制されている。

政府は公務員負担金を軽減しようと、連邦、州、市に公務員から分担金を徴収して、独自の基金を設け、現役公務員と政府が同額負担して、基金の能力内で公務員年金を払う制度を制定したが、地方自治体は全く無関心で、年金問題は社会保障院に押し付けている。公務員の年金問題は、国家的重大問題となったが、3権のトップから下までピラミッド全体が改革に反対しているために、選挙では年金改革問題を公約として取り上げることは、タブーといわれており、次期大統領選候補たちも1人として取り上げていない。

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