メールマガジン労働情報 No.1913

■□――【メールマガジン労働情報/No.1913】

「賃金と物価の好循環、強まっていくか注視が重要」/日銀・展望レポート(23年10月) ほか

―2023年11月1日発行――――――――――――――□■

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  本号の主な内容
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【行政】「賃金と物価の好循環、強まっていくか注視が重要」/日銀・展望レポート(23年10月) ほか
【統計】9月の完全失業率2.6%、0.1ポイント低下/労働力調査 ほか
【労使】職種別賃金分析の報告書を発表/連合 ほか
【動向】介護離職、発生企業の5割超で「支援制度が利用されなかった」/民間調査 ほか
【企業】管理職転身支援制度に200名が応募/ENEOS
【イベント】障害者雇用をテーマに「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を開催/JEED ほか

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【JILPT研究成果情報】
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◇調査シリーズNo.232『人への投資と企業戦略に関するパネル調査(JILPT企業パネル調査)(第1回)』

本調査は、企業における「人への投資」をはじめとする人材戦略の変化が経営や労働市場に及ぼす影響を
継続的に把握することを目的として、企業パネル調査を2022~26年度の5年度にわたり毎年1回行う予定です。
本調査シリーズは、第1回調査の集計結果を公表するもので、企業の経営戦略、人材マネジメント、
デジタル技術(AI等)の活用、新型コロナの影響、賃上げの状況などについて明らかにしています。
今後、本調査によるパネルデータの蓄積を待って更なる分析を進めることを想定しています。
https://www.jil.go.jp/institute/research/2023/232.html

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【JILPTからのお知らせ】
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★「メールマガジン労働情報」は11月3日(金曜)の配信をお休みします。
 次回の配信は11月8日(水曜)です。

★令和5年度 労働関係図書優秀賞(第46回)・論文優秀賞(第24回)を発表!

JILPTでは、労働に関する総合的な調査研究を奨励し、労働問題に関する知識と理解を深めることを目的として、
「労働関係図書優秀賞」の表彰事業を行っています。今年度の受賞図書は、以下の2作に決定しました。
◇池田心豪氏『介護離職の構造―育児・介護休業法と両立支援ニーズ』(JILPT 2023年3月刊)
◇市原博氏『近代日本の技術者と人材形成・人事管理』(日本経済評論社 2022年10月刊)

また、新進研究者の調査研究を奨励する「労働関係論文優秀賞」には、以下2本が選ばれました。
◇内田大輔氏・浦川邦夫氏・虞 尤楠氏「日本企業における男性の育児休業の普及―先行要因の解明と業績への影響の検証」
◇百瀬由璃絵氏「埋もれたインターセクショナリティ─『障害者/健常者』の境界にいる女性」
https://www.jil.go.jp/award/bn/2023/index.html

★任期付研究員の募集について(2024年度採用)

労働政策研究・研修機構では、任期付研究員を募集します。応募書類の提出期限は2023年11月10日(金曜)必着です。
https://www.jil.go.jp/information/koubo/kenkyuin/2023/07.html

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【行政】
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●「賃金と物価の好循環、強まっていくか注視が重要」/日銀・展望レポート(23年10月)

日本銀行は10月31日、「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」(2023年10月)を発表した。「政策委員の大勢見通し」では、
2023年度の消費者物価指数を2.8%とし、前回(7月)の2.5%から引き上げ、実質GDPも1.3%から2.0%に上方修正した。
企業の賃金・価格設定行動について、「今後の動向次第では、価格転嫁が想定以上に続き、物価が上振れる可能性がある」、
「人材確保などを意識し、企業の賃金設定行動がより前傾化する可能性がある」などと指摘。
「長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が
社会に定着してきたことを踏まえると、賃金と物価の好循環が強まっていくか注視していくことが重要」との見解を示した。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2310a.pdf
▽当面の金融政策運営について(10月31日)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k231031a.pdf

●景気判断「緩やかに回復」を維持、中東情勢を新たなリスクに追加/10月・月例経済報告

政府は10月30日、10月の「月例経済報告」を公表した。基調判断は、「景気は、緩やかに回復している」を維持。
先行きについては「緩やかな回復が続くことが期待される」としつつ、世界的な金融引締めや中国経済の先行き懸念の
リスクに加え、中東地域をめぐる情勢等の影響にも十分注意する必要があるとしている。
個別判断では、公共投資を「底堅く推移」へ下方修正し、業況判断を「総じてみれば緩やかに改善」へ上方修正した。
雇用情勢は、「改善の動きがみられる」の判断を維持した。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2023/1030getsurei/main.pdf

●個人事業主等の安全衛生対策、業務上災害の「報告制度」を創設/厚労省検討会報告

厚生労働省は10月27日、「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」報告書を公表した。
個人事業主等の業務上災害を把握するため、「休業4日以上の死傷災害」の報告制度の創設を盛り込んだ。
被災した個人事業主等は、直近上位の「特定注文者」または「災害発生場所管理事業者」に対して報告し、
個人事業主等から報告を受けた「特定注文者」または「災害発生場所管理事業者」は監督署に報告することを
義務付ける(罰則なしの義務)。監督署への報告は、電子申請システムを活用し、過度な負担とならないような
環境整備を図り、報告制度の普及・定着を図るとしている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36009.html

●新たな「港湾雇用安定等計画」策定に向け議論/厚労省委員会

厚生労働省は10月25日、労政審雇用対策基本問題部会「港湾労働専門委員会」を開催し、2024年4月から始まる
新たな「港湾雇用安定等計画」の策定について議論した。同計画は、6大港における港湾労働者の雇用改善や
能力開発に関し、行政、港湾労働者雇用安定センター、事業主等が講ずべき措置の指針を示したもの。
港湾運送業界については、急速な高齢化や低い入職率により人材確保が極めて重要な課題と指摘。
若者・女性・高齢者を含む幅広い人材が活躍できる働きやすい職場の確保、港湾荷役作業の革新等に対応した
教育訓練の支援、などの取組を計画に盛り込む予定。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35977.html

●第61回「技能五輪全国大会」、11月17日~21日に開催/厚労省・JAVADA

厚生労働省と中央職業能力開発協会(JAVADA)は、11月17日から21日まで、「第61回技能五輪全国大会」を
愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)など13会場で開催する。原則23歳以下の青年技能者たちが日頃の鍛錬の成果を
競い合う大会で、「メカトロニクス」「情報ネットワーク施工」をはじめとする41職種に1,010人の選手が参加。
競技や開会式・閉会式の様子は、専用サイト上で動画配信予定。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35782.html
▽専用サイト
https://worldskills.jp/

●「建設人材育成優良企業」の受賞者決定/国交省

国土交通省は10月24日、建設産業の担い手の確保・育成に積極的に取り組む企業等を表彰する「建設人材育成優良企業」の
受賞者決定を発表した。「建設キャリアアップシステム」の活用をはじめ、技能や経験に応じた給与の引き上げや、
キャリアパスに基づいた計画的な人材育成などで顕著な功績を挙げている企業等を表彰するもの。
国土交通大臣賞(4社)および不動産・建設経済局長賞(4社)の取組のポイントを紹介している。
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo14_hh_000001_00183.html
▽受賞企業の取組のポイント
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001705558.pdf

●「労働基準関係法令違反に係る公表事案」を公表/厚労省

厚生労働省は10月31日、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」を公表した。2022年10月1日から2023年9月30日の間に、
都道府県労働局が労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働安全衛生規則等の労働基準関係法令違反の疑いで
送検し公表した内容を集約したもの。
https://www.mhlw.go.jp/content/001150620.pdf

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【統計】
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●9月の完全失業率2.6%、0.1ポイント低下/労働力調査

総務省は10月31日、2023年9月の「労働力調査(基本集計)」を公表した。完全失業率(季調値)は2.6%で、
前月比0.1ポイント低下。完全失業者数は182万人(前年同月比5万人減)で、3カ月ぶりの減少。
就業者数は6,787万人(同21万人増)で14カ月連続の増加。雇用者数は6,124万人(同54万人増)で、19カ月連続の増加。
正規従業員数は3,633万人(同44万人増)で2カ月連続の増加。非正規従業員数は2,141万人(同8万人増)で、2カ月ぶりの増加。
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html
▽概要
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf

●9月の有効求人倍率1.29倍、3カ月連続で同水準/一般職業紹介状況

厚生労働省は10月31日、「一般職業紹介状況」を公表した。2023年9月の有効求人倍率(季調値)は1.29倍で、
前月と同率となり3カ月連続で同水準。新規求人倍率(同)は2.22倍で、前月比0.11ポイント低下。
新規求人(原数値)は、前年同月比で3.4%減。産業別では、宿泊業・飲食サービス業(5.2%増)、学術研究、
専門・技術サービス業(2.6%増)で増加。製造業(12.7%減)、建設業(8.1%減)、情報通信業(5.4%減)などで減少した。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35965.html
▽報道発表資料
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001159971.pdf

●9月の鉱工業生産、「一進一退で推移している」で基調判断を維持/経産省速報

経済産業省は10月31日、9月の鉱工業生産・出荷・在庫指数(速報)を公表した。生産指数(季調値)は103.3(前月比+0.2%)で、
3カ月ぶりの上昇。業種別で上昇したのは「自動車工業」「汎用・業務用機械工業」等。低下業種は「生産用機械工業」
「電気・情報通信機械工業」等。出荷は103.2で前月比0.4%上昇。在庫、在庫率はいずれも同1.1%の低下。
基調判断は、「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」として前月判断を維持した。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
▽概要
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/press/b2020_202309sj.pdf

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【労使】
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●職種別賃金分析の報告書を発表/連合

連合は10月26日、職種別賃金分析の報告書を発表した。2022年の賃金構造基本統計調査特別集計にもとづき、
男女別や正社員・契約社員・短時間労働者等の雇用形態別の賃金の比較分析の結果や、職種別・産業別の賃金額等の
ランキングを示している。第5章では、賃金カーブの5分類(高山型、低山型、高原型、台地型、平地型)を試み、
第6章ではケーススタディとして13の職種を取り上げ、関連データを分析している。
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2024/wage_analysis/wage_analysis_report.pdf

●「国際ケア・サポート・デー」、ケア労働者の処遇改善を/連合ニュース

連合は、10月29日を「国際ケア・サポート・デー」とすることが国連総会で決議されたことに伴い、
国際労働組合総連合(ITUC-AP)が展開している啓発キャンペーンの内容や、ケア労働者の処遇改善に向けた
連合の取組方針等を「連合ニュース」で伝えている。
https://www.jtuc-rengo.or.jp/news/news_detail.php?id=2042

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【動向】
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●介護離職、発生企業の5割超で「支援制度が利用されなかった」/民間調査

東京商工リサーチは10月25日、「介護離職に関するアンケート」調査結果を発表した。
2023年8月までの1年間に介護離職が「発生した」と回答した企業は10.1%、このうち正社員が65.3%を占めた。
規模別では、大企業が18.3%、中小企業が9.0%。過去1年間に発生した介護離職者のうち、介護休業・介護休暇の
いずれかを利用していた人の割合を尋ねたところ、「(利用した従業員が)いない(0割)」が54.5%と半数以上を占め、
休業・休暇を取得した従業員がいる企業では、「1割」15.0%、「10割」14.5%と拮抗し、二極化がみられた。
また、仕事と介護の両立支援について、約4割の企業が「十分とは思わない」と回答。
その理由は「代替要員を確保しにくい」が62.4%で最多だった。
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198090_1527.html

●経済情勢報告「持続的な賃上げにつながる社会経済の構築へ」をHP掲載/連合総研

連合総研は、2023~2024年度「経済情勢報告:持続的な賃上げにつながる社会経済の構築へ」をホームページに掲載した。
同研究所は、勤労者生活にかかわる内外の経済情勢を分析し、毎年「経済情勢報告」として発表。
今回の報告は、リスキリングの現状と課題、労働参加の促進の課題について分析、提言を行っている。
第3部では、マクロ経済学及び労働経済学、雇用労働政策、労使関係などの観点から、有識者の寄稿も収録。
https://www.rengo-soken.or.jp/work/2023/10/260900.html

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【企業】
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●管理職転身支援制度に200名が応募/ENEOS

ENEOSは10月24日、管理職転身支援制度に200名(対象者の15%)の応募があったと発表した。
同制度は、50歳代管理職のENEOSグループ外への転身(リタイア・転職・起業等)を支援するため、
退職時から定年までの残余年数に応じて退職割増金を支給するもの。本年度は、ジョブ型人事制度による
ダイナミックな人材シフトを加速度的に進めることを目的に、割増金を増額し、当該管理職の会社への
残留も含めたキャリアの選択肢を広げることができるプログラムとしていた。
https://www.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20231024_01_01_0960492.pdf

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【イベント】
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●障害者雇用をテーマに「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を開催/JEED

高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は11月8日(水)・9日(木)の2日間、東京ビッグサイトで
第31回「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を開催する。
障害者雇用をテーマに、企業経営者による「特別講演」、行政・企業・研究者を交えた「パネル討論」、
分科会形式による「口頭発表」や「ポスター発表」を行う。
現在、ライブ配信の視聴申込を受付中(会場参加者の申込受付は終了)。

<プログラムのうちライブ配信する内容>
11月8日(水)13:00~16:40
▽特別講演  「アフターコロナの障がい者雇用~障がい者雇用の質向上に向けて~」
▽パネル討論Ⅰ「情報通信技術の活用の進展を踏まえた障害者雇用のあり方について」
11月9日(木)15:10~16:50
▽パネル討論Ⅱ「アセスメントを活用した就労支援の今後のあり方について」
(募集ページ)
https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/news/vrhappyou31-history.html
(プログラム/全日程は8ページ参照)
https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/news/h3iskd0000003aoj-att/31sanka.pdf

●シンポジウム「取締役会のジェンダー・ダイバーシティが企業価値向上に果たす役割」/日弁連

日本弁護士連合会は11月22日(水)、シンポジウム「取締役会のジェンダー・ダイバーシティが企業価値向上に
果たす役割~女性・独立社外取締役のありのままの姿から~」をオンラインで開催する。
ジェンダー・ダイバーシティが取締役会にもたらす効果、女性・独立社外取締役の企業価値向上への貢献などについて、
基調講演とパネル討論を行う。参加費無料。定員500名、11月15日(水)までに申し込む。
https://www.nichibenren.or.jp/event/year/2023/231122.html

●セミナー「日本の賃金を考える 2023冬」/全国社労士会ほか

全国社会保険労務士会連合会は11月30日(木)、事業主向けセミナー「日本の賃金について考える 2023冬
~社員全員が向上心と納得感を持って働ける賃金制度をどう作るか~」をオンラインで開催する(共催:労働新聞社)。
持続的賃上げの実現が言われる中、日本の賃金水準が停滞してきた要因等を探るとともに、同一労働同一賃金の実現が
賃金全体の底上げに果たす役割について考える。JILPTの樋口総監による基調講演のほか、事例紹介、パネル討論を行う。
参加無料、27日(月)までに申し込む。
https://www.rodo.co.jp/seminar/otherseminar/167512/