統一賃闘方針を決定、65歳定年制の実現も提起/UIゼンセン同盟中央委員会

(2012年01月27日 調査・解析部)

[労使]

民間最大産別のUIゼンセン同盟(落合清四会長、約111万5,800人)は26日、大阪で中央委員会を開き、2012統一賃金闘争方針や、65歳定年制の実現に向けた取り組みに着手することを決めた。また、特別議案として、UIゼンセン同盟の組織機構改革と、サービス・流通連合との産別再編統合を、同時併行で取り組む方針等も可決した。

「他産別に付和雷同することなく統一賃闘に取り組む」(落合会長)

あいさつした落合会長は、今次の統一賃闘に臨む姿勢として、「UIゼンセン同盟は約111万人、2,400組合が加盟し、中小が8割、短時間組合員が半数を占める内需型産業を中心とした組織。大手・中堅を除き、組合員の太宗は賃金水準が低位で定昇制度もないため、統一賃闘が重要な役割を果たす」などと指摘。そのうえで「他産別が本年も統一賃闘に取り組まないからといって、付和雷同することがあってはならない。全加盟組合はあるべき賃金水準を求めて引き上げ要求をする意志を固めて欲しい」と強調した。

未達組合は賃金体系維持分+平均1%基準・1,500円以上を要求

UIゼンセン同盟は2010統一賃闘から、要求の額・率を設定するのではなく、あるべき賃金水準を重視する方針に舵を切った。これに伴い、本部が基調となる要求基準を示したうえで、繊維関連、化学、流通、フード・サービス、生活・総合産業、地方の6部会(業種)別に具体的な基準を設定している。

今次方針では、要求基準として「格差是正を中心に労働者への分配として1%程度の賃上げ」を目指し、「高卒35歳・勤続17年の基本賃金で26万円、大卒30歳・勤続8年で25.5万円」等の到達水準を設定する。そして、これを下回る組合は、(1)賃金制度があれば「賃金体系維持分を確保した上で、格差是正分として一人平均1%基準・少なくとも1,500円以上」(2)賃金制度が未整備なら(賃金制度の整備とともに)「賃金体系維持分の社会的水準に格差是正を含め一人平均6,000円以上」 を要求する。また、到達水準を上回る場合は「賃金体系維持分の確保を最低限とし、賃金に係わる是正を部会毎に設定する」としている。

これを踏まえ、UIゼンセン同盟の正社員組合員の約3分の1が所属する、スーパーなど小売業を中心とした流通部会では、30歳大卒・勤続8年の到達水準を26万3,000円、同35歳・13年で29万9,500円などと設定。到達水準を下回る場合は、 (1)賃金体系維持分を確保した上で、格差是正分一人平均2,000円程度(2)体系維持が不明確なら、賃金体系維持分の社会的水準に格差是正分を含めて一人平均6,500円程度――といった基準を設定した。

また、到達水準を上回る場合は、(1)賃金体系が維持されている組合は「賃金カーブの是正や生活・職務関連手当の引き上げ等に取り組む」。(2)賃金体系維持が不明確な組合は「賃金水準を維持する」(連合が示すのは1歳1年間格差で5,000円程度)などとした。

短時間組合員の賃上げは時給20~40円目安で

一方、組合員の48%(53.5万人)を占めるパートを中心とした「短時間組合員」の時間給の引上げ要求基準については、連合方針を踏まえ、 (1)タイプA(正社員と職務も人材活用の仕組み・運用も同じ。組合員の約2割)は「正社員と均等の引上額」として「賃金体系維持分の30円程度に加え格差是正分で1%基準・10円程度」 (2)タイプB(正社員と職務は同じだが人材活用の仕組み・運用が違う、同約2割)は「雇用区分間の均等・均衡を考慮して決定。制度昇給がある場合は制度昇給+賃金改善分1%程度」 (3)タイプC(正社員とは職務も人材活用の仕組み・運用も違う、同約6割)は「20円を目安に決定。制度昇給がある場合は制度昇給+賃金改善分1%程度――とした。

一時金は少なくとも年間4カ月以上、年間4.8カ月基準で

また、一時金については、「毎月の必要生計費を補填する『季節賃金』と期間業績に対する『成果配分』の合算」と捉え、正社員組合員は「季節賃金部分を年間4カ月」とし、昨年と同じ年間4.8カ月を要求基準に設定。短時間組合員については、タイプAは原則、正社員に準じた要求として年間4.8カ月、タイプBは年間3.0カ月以上を目標、タイプCは年間2.0カ月以上を目標に据えた。

2025年までの「65歳定年制」の実現を要求へ

60歳以降の雇用については、2013年から厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、雇用との間に空白期間を生じることから、満額支給が65歳となる2025年までに「定年を満65歳とする制度を導入」するか、「定年制度を廃止」できるよう、今春から求めていく方針も決定した。

定年延長に当たっては「年金の受給開始年齢に合わせて段階的に引き上げることも可」とし、また、「60歳以前とは違う働き方を希望する労働者のため、一旦退職し再雇用契約を結ぶ継続雇用制度の併用も当面認める」などとしている。

なお現状、UIゼンセン同盟の多くの加盟組合で継続雇用制度が導入されているものの、希望者全員が対象となっているのは3分の1に満たないという。

本年11月中旬の組織機構改革と産別再編統合に向けた特別議案も可決

UIゼンセン同盟では2009年以降、10年後(2022年)の目標とその姿を示す新たな「中期ビジョン」(※1)の策定と、これを実現するための運動・組織機構の見直し(※2)や財政検証を進めてきた。一方、昨秋の大会で提起したJSDとの産別再編統合協議も「ほぼ合意が見通せる範囲まで到達した」(落合会長)ことから、これらを今後、一体的に進めていくための特別議案を提起し、満場一致で可決した。

議案では、「産別再編統合を進めるための前提」として、 (1)新組織の名称は(UIゼンセン同盟の正式現称である)「全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟」とし、総称には「ゼンセン」を残す (2)基本会費は800円としJSD加盟組合には激変緩和措置を講じる (3)2012年11月初中旬までを目途に新産別結成大会を開催する (4)新産別結成方式とする――などとした。

そのうえで、本中央委員会で提示した、ほぼ最終形に近いという「新しい組織機構と運動の姿」(案)や、現時点でのJSDとの協議の到達点となる「新産別結成方針」(案)等は、あくまで報告事項にとどめて今後、正式に方針化したうえで、今夏の定期大会に提案するとした。

落合会長はあいさつの中で、「中央委員会以降、JSDと改革案を共有化し、新産別結成大会を目指す。非常にハードなスケジュールだが、新産別結成に漕ぎ着けられるのもUIゼンセン同盟の組織力量があってこそと確信する」などと強調した。

※1:ビジョン2022(案)は、「働く者が報われる社会」「仲間が助け合う社会」「安心して生活できる社会」の実現による、ワーク・ライフ・バランス社会等を目指すもの。

※2:組織機構改革(案)は、複合大産別150万余を想定し、 (1)大産業分類ともいうべき製造、流通、サービス・フードの「部門制」を敷き、産業政策活動等の産別機能を持たせるほか、その中に業種別の共闘単位となる「部会」を設け、多様性・自主性ある運動を促す (2)都道府県支部にヒト・モノ・カネを量・質の面からシフトし、地域活動を強化する (3)本部の機能は三部門の共通課題を企画立案し、統一賃闘など一体的な運動展開の指導、指揮などに縮小する――ことなどが柱。100人以下の中小組合の解散・脱退の増加や、100人以下~16万人超の労連まで加盟規模の多様化、加盟組合の同盟体としての意識・連帯感の希薄化や、地域運動の強化の必要性といった組織運営上の課題をはじめ、単年度収支での恒常的な支出超過(赤字)、短時間組合員の増加に伴う交付金支出の増加、リーマン・ショック以降の利金収入の激減といった財政上の課題の克服に向けて検討してきた。