賃金カーブ維持分確保が大前提/自動車総連、2012生活改善取り組み方針決定

(2012年01月13日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連第79回中央委員会/メールマガジン労働情報 No.784(2012年01月13日 調査・解析部)

自動車総連(西原浩一郎会長、75万9,000人)は12日、大阪市で中央委員会を開催し、2012春闘に向けての「2012年総合生活改善の取り組み方針」を確認した。方針では、昨年と同様、すべての組合が「賃金カーブ維持分確保を大前提」として要求し、賃金改善分については、格差是正や体系是正の課題を抱える組合が取り組み、明確な額で要求するとした。一時金についても昨年と同じ「5カ月を基準とする」方針を掲げた。

交渉環境の厳しさは昨年を上回る

2011年の自動車の国内販売状況をみると、四輪車は1月~11月までの新車販売累計では、前年同期比で17.3%減(約386万台)となっている。四輪車の生産は、東日本大震災による稼働停止が響き、1月~11月までの累計で前年同期比15.0%減(約755万台)。自動車総連加盟各社の業績をみると、2011年度は減収減益を予想する企業が全体の32%を占めており、超円高の進行もあいまって、交渉を取り巻く環境は「昨年を上回る厳しさ」(西原会長)となっている。

こうした状況をふまえ、方針は賃金要求について、平均賃金要求では2011春闘と同様の文言を掲げ、「すべての組合は、現状の賃金水準を維持するため、賃金カーブ維持分確保を大前提とする」とし、各組合が取り組むかどうかを主体的に判断する賃金改善については「生産性向上に向けて懸命に取り組む組合員の努力・成果、賃金実態を踏まえた格差・体系の是正等を重視し、明確な額で要求する」とした。

あいさつした西原会長は今回の交渉環境について、欧州をはじめとする世界経済の不確実性や不透明感、日本経済のデフレの進行、経済・貿易に関する国際連携協定締結への遅れ、電力供給不安、超円高などを不安要素にあげ、「先行き不安を払拭しきれる状況にはほど遠く、国内産業空洞化の危機に直面していることは認識せざるをえないし、メーカーを中心にばらつきはあるが業績面でも総じて厳しい状況にあることは否定できない」と述べた。

そのうえで、国内産業空洞化を阻止し、国内事業基盤を維持・強化するための絶対的条件となる「人への投資」を通した基本的労働条件の維持・向上を求めていくと表明。「雇用の維持・確保と賃金・労働条件改善を通した雇用の質の向上により産業・企業を根っこから支える人材力・現場力を高めることこそが、直面する幾多の困難を乗り越え、産業・企業の生き残りと健全成長への道を切りひらく唯一の道と確信する」と訴えるとともに、震災以降の復旧や生産変動、夏期電力需給に対応した組合員の苦労と協力に報いるためにも「経営は最大限の誠意をもってわれわれの要求に応えることを求める」と強調した。

容認しえない部門間格差

同日、中央委員会前に記者会見した西原会長は、賃金カーブ維持分が確保できなかった組合は2009年が220組合、10年が160組合、11年は回答日直前に震災が発生したにもかかわらず153組合と、過去3年間で減少傾向にあると説明。ただ、35歳標準労働者の個別賃金ポイントでメーカー部門、部品・車体部門、販売部門の平均水準を比較すると、メーカーを100とすると部品・車体が90.6、販売が82.0と格差があり、「この格差は容認しえない」と述べた。

賃金改善の取り組みについては、2011春闘では、全1,100組合の48.7%を占める540組合が改善を要求し、130組合が改善を獲得した。西原会長は「今年も一定数の組合が格差是正に取り組むことを期待している」と述べた。

なお、平均賃金要求と並行して掲げている個別ポイント絶対水準での要求基準は、「技能職中堅労働者(中堅技能職)の現行水準を維持し、水準向上や格差・体系是正に向け、各組合の判断により賃金改善分を設定する」とした。

一時金は業績以外の面も重視

一方、一時金の要求基準は「年間5カ月を基準とし、最低でも昨年獲得実績以上とする」と昨年と同じ文言を掲げた。ただ、西原会長はあいさつで、「過度に業績反映ありきに陥ることなく、総連方針を踏まえ、納得のいく水準を求めていくべきだ」と呼びかけた。最終利益については円高による目減りの影響もあるだけに、西原会長は会見で「震災以降の復旧作業などを成し遂げてきたとの自負が組合員にある」「現場が納得できる水準を要求していくべきだ」と述べ、例年以上に組合員の努力・協力が公正に評価されるべきとの考えを示した。

要求提出日は2月末日までとしたが、大手自動車メーカー労組など拡大戦術会議登録組合(12組合)は2月15日に統一して要求を経営側に提出する。