看護職場の7割の人が慢性疲労訴える――医労連の調査

(2010年4月28日 調査・解析部)

[労使]

看護職場で働く7割以上の人が人手不足による過密労働で慢性疲労を訴えている――こんな実態が日本医労連(田中千恵子委員長、14万4,600人)の「看護職員の労働実態調査」で明らかになった。また、賃金不払い労働(サービス残業)をしている人が6割以上にも及んでいる実態も浮かび上がった。調査は、昨年11月から今年1月にかけて、看護職の組合員を対象に実施し、約2万7,500人の回答を得てとりまとめたもの。日本医労連は調査結果を踏まえて、「看護職員の労働実態は、看護の質に影響を及ぼす。良い看護をめざす上で、看護職員の増員は不可欠な課題だ」と訴えている。

調査によると、疲れの回復具合について聞いた設問では、「疲れが翌日に残ることが多い」が50.5%ともっとも多く、次いで「疲れを感じるが次の日までには回復している」(24.2%)、「休日でも回復せず、いつでも疲れている」(22.3%)と続く。「翌日に残る」と「いつでも疲れている」を合わせた、いわゆる慢性疲労の状態を訴える答えが7割以上に及んでいる。これを20年前の88年調査と比較すると、慢性疲労の割合は7.2ポイント上昇している。

そのため、健康状態については、「健康に不安」を感じている人が50.5%と過半数を占め、「大変不安」(11.3%)だとする人を合わせると6割以上の人が健康不安を訴えている。「健康である」との回答は3人に1人の割合(34.2%)に止まった。

6割強がサービス残業したと回答

こうした状況の背景に過密な労働実態がある。昨年10月1カ月間の時間外労働をみると、全体の約9割が時間外労働をしており、そのうち「20時間以上」が23.7%となっている。また、昨年10月の1カ月間の賃金不払い残業(サービス残業)について尋ねたところ、6割強がサービス残業をしたと回答。そのうち、10時間以上のサービス残業が22.5%に及んでいる。休憩時間がきちんと取れているかについては、きちんと取れているのが「日勤」で23.9%、「準夜勤」で11.8%、「深夜勤務」で17.2%、「2交代夜勤」で16.7%となっており、休憩時間も満足に取れない現状が浮かび上がっている。年次有給休暇の取得も、過半数の人(52.8%)が3割以下の取得率で、約1割の人が「まったく取れなかった」としている。

夜勤回数は上限の8回が最多

夜勤にかかわる問題も深刻だ。3交代勤務での夜勤回数をみると、昨年10月1カ月間で、92年の看護婦確保法に基づく指針の基準上限の「8回」が45.7%ともっとも多くなっているものの、指針を超える「9回」以上の人が3割強(31.7%)となっている。2交代勤務の夜勤回数(昨年10月1カ月間)は、「4回」が最も多く、「5回」以上が37.6%となっており、3交代勤務よりも少ない。しかし、夜勤の労働時間をみると、「16時間以上」が53.0%と過半数を占めており、長時間労働となっている。

このような労働環境は患者への看護サービスの質にも影響を与えている。十分な看護が「できている」と答えた人は8.8%と僅かで、過半数(51.9%)が「できていない」と回答。その理由については(複数回答)、「人員が少なく労働が過密」が81.4%と圧倒的に多く、次いで、「看護以外の『その他の業務』が多すぎる」(49.3%)、「自分の能力や技量の不足」(39.3%)、「スタッフの意志疎通が悪い」(15.9%)などの順となっている。

仕事のやりがいについては、「少し感じる」が59.5%と最も多く、「全く感じない」人が13.1%。全般的にやりがいを感じる度合いが低くなっているため、21.7%の人が仕事を「いつも辞めたいと思っている」としており、「ときどき思う」(57.6%)を合わせると約8割が離職を考えていることになる。辞めたいと「思わない」のは15.0%と僅か。

日本医労連では、調査結果を踏まえて、5月12日の看護の日にあわせて全国で展開する集会、シンポジウムなどで、看護職員の増員や労働時間をはじめとする労働条件の改善を訴える考えだ。