論文要旨 中小企業におけるミドル・マネージャー層の育成
─中小サービス業調査に基づく分析

藤本 真(JILPT副主任研究員)

企業内の特定業務の管理を司るいわゆる「ミドル・マネージャー」層は、企業の事業運営を支える重要な主体であるとともに、人事労務管理上の役割も大きい。こうしたミドル・マネージャーの重要性・必要性は、企業規模を問わず、中小企業においても強く意識されている。本稿では、こうした中小企業において、ミドル・マネージャーの育成・能力開発がどのように進められ、いかなる結果をもたらしているのかについて、中小企業経営者を対象としたアンケート調査を基に分析を行った。

ミドル・マネージャーの育成を志向し、実現できているとする企業と、育成を志向しているものの十分に実現できていないという企業に比べると、前者の方が指導者を決めて実施するなど、従業員の計画的な育成・能力開発により積極的である。また、Off-JTに関わる諸施策の実施状況は、育成の成否と統計的に有意な相関を持たないが、社内勉強会の実施や自己啓発支援といった従業員が自ら学ぶ機会を会社として積極的に提供することは、ミドル・マネージャーの育成がうまくいく可能性を高めることがわかった。さらに、こうした企業の姿勢はミドル・マネージャーとして働く従業員にも認識されており、そのことが仕事上の能力を高めるために必要な研修や教材などに関する情報をより積極的に収集するといった、従業員自身のより積極的な能力開発活動につながりうることが示された。

2014年特別号(No.643) 自由論題セッション●第2分科会(職場とキャリア形成)

2014年1月24日 掲載