資料シリーズNo.271
「job tag」(職業情報提供サイト(日本版O-NET))の
インプットデータ開発に関する研究(2022年度)

2023年11月20日

概要

研究の目的

2018年度と2019年度に当機構が初期開発し、その後毎年度情報の拡充・更新を行っている職業情報のデータセットについて、2022年度は既存7領域のうち「仕事の内容」領域の情報更新と、新たに「アビリティ」の領域の情報作成を主たる目的とした。また、仕事量と就業者数の変化に関する調査も併せて実施した。

研究の方法

企業・団体等へのヒアリング調査、およびWebモニターを用いた就業者調査

Web調査の実査期間:
2022年12月~2023年1月
スクリーニング後の有効回答数:
20,792件

主な事実発見

本研究の主たる目的である公共の職業情報インフラの作成については事実発見という考え方は馴染まないが、職業大分類ごとに集約してデータを整理したところ、図表1に示す通り概ね各大分類の特徴と合致する結果が得られた。たとえば第1群「管理的な職業」ではWA10「意思決定と問題解決を行う」が、第3群「法務・経営・文化芸術等の専門的職業」と第4群「医療・看護・保健の職業」ではWA12「仕事に関連する知識を更新し、活用する」が、第8群「福祉・介護の職業」ではWA29「他者に対する支援とケアを行う」が、第13群「配送・輸送・機械運転の職業」ではWA19「乗り物を運転・操縦する」がそれぞれ最も平均値が高かった。それぞれの職業群の内容と合致した結果と言える。

図表1 仕事の内容の取得データ:職業大分類別の平均値と標準偏差 (いずれかの職業群で平均値最大であった8項目を抜粋)

409の職業を15種の職業大分類別にグループ分けして、仕事の内容各項目の平均値と標準偏差を記載している。また職業群ごとに最も平均値が高かったセルを色づけして強調しており、上述の本文ではこれらの強調セルについて言及している。
WA10 WA12 WA15 WA17 WA19 WA26 WA28 WA29
職業大分類 該当職業数 意思決定と問題解決を行う 仕事に関連する知識を更新し、活用する 仕事を整理、計画する、優先順序を決める 手と腕を使って物を取り扱い動かす 乗り物を運転・操縦する 上司、同僚、部下とコミュニケーションを取る 人間関係を構築し、維持する 他者に対する支援とケアを行う
1 管理的職業 7 M 3.51 3.30 3.41 2.14 1.88 3.44 3.49 2.94
SD (0.24) (0.22) (0.25) (0.23) (0.28) (0.46) (0.29) (0.41)
2 研究・技術の職業 50 M 3.36 3.35 3.38 2.30 1.94 3.28 3.12 2.67
SD (0.29) (0.29) (0.24) (0.37) (0.45) (0.25) (0.23) (0.19)
3 法務・経営・文化芸術等の専門的職業 49 M 3.41 3.68 3.57 2.05 1.68 3.11 3.34 2.66
SD (0.30) (0.20) (0.18) (0.44) (0.32) (0.42) (0.27) (0.44)
4 医療・看護・保健の職業 28 M 3.27 3.45 3.31 2.85 1.77 3.29 3.32 3.41
SD (0.39) (0.37) (0.30) (0.34) (0.20) (0.45) (0.33) (0.37)
5 保育・教育の職業 16 M 3.15 3.37 3.36 2.62 1.76 3.26 3.41 3.22
SD (0.20) (0.19) (0.19) (0.43) (0.51) (0.39) (0.20) (0.26)
6 事務的職業 46 M 2.96 3.08 3.22 2.10 1.82 3.25 3.07 2.63
SD (0.43) (0.37) (0.33) (0.38) (0.39) (0.33) (0.36) (0.34)
7 販売・営業の職業 37 M 2.97 3.10 3.23 2.52 1.98 3.09 3.19 2.69
SD (0.39) (0.35) (0.31) (0.40) (0.39) (0.36) (0.33) (0.29)
8 福祉・介護の職業 11 M 3.44 3.45 3.37 2.66 2.32 3.62 3.64 3.71
SD (0.25) (0.23) (0.19) (0.43) (0.28) (0.25) (0.25) (0.21)
9 サービスの職業 35 M 2.73 2.90 3.04 2.83 1.86 2.85 3.00 2.67
SD (0.43) (0.49) (0.32) (0.38) (0.46) (0.40) (0.34) (0.44)
10 警備・保安の職業 11 M 3.28 3.29 3.24 2.91 3.04 3.54 3.42 2.99
SD (0.50) (0.50) (0.45) (0.47) (0.78) (0.38) (0.39) (0.34)
11 農林漁業の職業 9 M 2.86 3.07 3.14 3.24 3.09 2.69 2.90 2.33
SD (0.31) (0.23) (0.25) (0.25) (0.57) (0.42) (0.29) (0.23)
12 製造・修理・塗装・製図等の職業 59 M 2.90 2.93 3.15 2.89 2.36 3.01 2.91 2.53
SD (0.32) (0.30) (0.22) (0.27) (0.42) (0.29) (0.23) (0.26)
13 配送・輸送・機械運転の職業 25 M 2.72 2.81 2.94 2.74 3.48 2.89 2.84 2.48
SD (0.50) (0.45) (0.34) (0.27) (0.65) (0.36) (0.32) (0.30)
14 建設・土木・電気工事の職業 12 M 2.78 2.95 3.20 3.12 2.74 2.93 3.09 2.53
SD (0.21) (0.22) (0.20) (0.22) (0.28) (0.21) (0.16) (0.15)
15 運搬・清掃・包装・選別等の職業 14 M 2.49 2.53 2.85 3.12 2.39 2.87 2.84 2.41
SD (0.36) (0.34) (0.29) (0.24) (0.63) (0.24) (0.30) (0.26)
全体 409 M 3.06 3.17 3.24 2.57 2.13 3.12 3.13 2.73
SD (0.45) (0.44) (0.33) (0.51) (0.65) (0.40) (0.35) (0.44)

※網掛けは、各職業群において平均値が最大であったセルを表す。

一方、併せて調査した各職業の仕事量と就業者数の増減傾向については一定数のデータが得られた409職業を対象として主に就業者数の観点から集計を行った。その結果、新型コロナウイルス感染症が広がる前の2019年での職業毎の就業者の増減の傾向と、コロナ禍がかなり収束しつつあった2022年の職業毎の就業者数の増減の傾向の間で、増加傾向から減少傾向に、あるいは減少傾向から増加傾向にというような大きな傾向の変化を示す職業は無かった(図表2)。今後、増加傾向、減少傾向、それぞれが大きなものから順次、職業解説の更新の必要性を確認していくことが考えられる。

図表2 職業毎の就業者の増減傾向の変化

就業者の増減傾向について増加をプラス、横ばいをイコール、減少をマイナスとした上で、2019年と2022年の結果を3かける3のクロス集計表で表し、各セルに該当する職業数を記載している。全体として、2019にプラスだったのに2022にマイナス、あるいは2019にマイナスだったのに2022にプラス、といった極端な傾向変化を示す職業はゼロだったことを示している。
2022年 2019年
2019年 0 1 6 7
47 316 3 366
35 1 0 36
2022年 82 318 9 409

政策への貢献

作成したデータの一部は厚生労働省が開発・運営する「job tag」(職業情報提供サイト(日本版O-NET))新しいウィンドウに収録され、全国のキャリア教育、キャリア支援の現場で活用されることが期待される。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「職業構造・キャリア形成支援に関する研究」
サブテーマ「職業構造・職務分析(日本版O-NET含む)に関する研究」

研究期間

令和4年度

執筆担当者

田中 歩
労働政策研究・研修機構 統括研究員
鎌倉 哲史
労働政策研究・研修機構 研究員
松本 真作
労働政策研究・研修機構 元特任研究員
大橋 英永
労働政策研究・研修機構 研究助手

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