資料シリーズ No.136
父親の働き方と家庭生活―ヒアリング調査結果報告―

平成26年 5月26日

概要

研究の目的

家庭や職場における男女の関係性の観点から、男性の育児参加支援の課題を明らかにする。

研究の方法

育児期の男性労働者を対象とするヒアリング調査

主な事実発見

  1. 男性の育児休業は家事・育児に対する理解を深め、その後の妻との分担を円滑なものにする契機となりうる。妻の産後1か月や妻の復職時に休業のニーズはあるが、休業にともなう収入の減少は切実な問題である。
  2. 育児参加に積極的な男性は、家族関係が希薄になる働き方として、長時間労働と単身赴任には否定的であり、働き方を変えるため転職する可能性もある。
  3. 家庭での役割関係によって就業ニーズに多様性がある。妻と家事・育児を分担している男性は、平日に家事・育児の時間を確保できる働き方を望む。一方、家事・育児は主に妻が担っているものの、自身と妻の精神的な充足を目的に家事・育児を担う男性は、土日や祝日に家族と過ごす時間をつくるために休日の確保を重視する。
  4. 育児に積極的な意識の裏返しとして、父親不在の「昭和の家庭」に対する否定的意識がある。仕事をしっかりとし、子どもとも向き合うことが「働くお父さん」の理想。

政策的インプリケーション

  1. 積極的に育児休業を取得する男性が増えるためには、産後1か月の妻の支援を想定した短期間の所得保障や、妻が低所得者の労働者を対象とした所得保障の充実が効果的。
  2. だが、育児休業を取ることができても、長時間労働や単身赴任など、育児参加が恒常的に阻害される働き方がある場合、これを回避するために転職する可能性がある。特に単身赴任は転職と結びつく可能性が高い。育児・介護休業法が定める転居転勤配慮義務の実効性を確保するなど、育児期の転居転勤に関するルールづくりが課題。
  3. 長時間労働対策は引き続き重要な課題であるが、効率的に労働者が家族との時間を確保するためには、仕事の進め方の裁量性を高めるとともに、平日の働き方の見直しと休日確保のどちらに重きをおくか、労働者のニーズを踏まえることが重要。
  4. 育児に積極的な男性は、家族関係が良好であることによる精神的安定や、職業経験を育児に生かそうとする意識から、仕事も前向きな意欲をもっている可能性がある。その意味で、男性の育児参加支援は、労働生産性向上に結びつくといえる。

政策への貢献

イクメンプロジェクト等、男性の育児参加促進施策を検討するための基礎資料となりうる。

本文

研究の区分

プロジェクト研究 「企業の雇用システム・人事戦略と雇用ルールの整備等を通じた雇用の質の向上、ディーセント・ワークの実現についての調査研究」

サブテーマ「仕事と生活に関する調査研究」

研究期間

平成25年度

執筆者

池田 心豪
労働政策研究・研修機構副主任研究員
橋本 嘉代
労働政策研究・研修機構臨時研究協力員

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