資料シリーズ No.118
男性の育児・介護と働き方―今後の研究のための論点整理―

平成25年5月17日

概要

研究の目的

家庭や職場における男女の関係性に着目して、仕事と家庭の両立支援の課題を明らかにする。特に男性の育児・介護については研究の蓄積が浅いため、重点的に検討する。

研究の方法

ヒアリング調査と既存データの二次分析。

主な事実発見

  1. 介護のために退職したり、休暇・休業を取得したりする労働者だけでなく、仕事を休まずに介護との両立を図る労働者も、介護疲労の蓄積等による仕事の能率低下など、両立困難に直面している可能性がある。
  2. 男性労働者の育児参加においては、これまでも指摘されてきたことではあるが、1日あたりの労働時間が長いことが大きな阻害要因である。加えて、既存研究では注目されてこなかった点であるが、土曜日、日曜日や祝日の勤務も、男性の育児参加を低くし、仕事と家庭生活の両立に関する悩みの種となっていることが分析結果から示唆される。
  3. 家庭生活との両立を支援する労働時間管理の問題としては、勤務する時間や場所の柔軟性を高めることの重要性がたびたび指摘される。しかしながら分析結果によれば、そうした柔軟性の高い働き方が、現状において家庭生活にプラスに作用しているとはいい難い。男性が自宅に仕事を持ち帰るのは、家庭生活のためというより、仕事自体の必要性による持ち帰り残業という面が強い。特に成果を厳しく求められる環境下での在宅就業は家庭生活の時間を侵食し、家事・育児にはマイナスである。
  4. WLB支援制度利用経験がありかつ高いキャリア意識を有する要因を職場の特徴やWLB支援制度との関係に着目した結果、キャリアの向上を図る上で、男性は多様な働き方にかかわる制度を多用し、女性はWLBに理解ある上司や職場の連携を重視するといった男女の違いがある。

政策的インプリケーション

  1. 仕事と介護の両立においては、重い介護負担に手当てをすることだけでなく、介護負担が軽いうちに事態の悪化を予防する観点から支援を拡充することも重要。特に外から見えにくい介護疲労への対応は重要な課題であり、この観点から企業の両立支援制度と介護サービスの拡充を図ることが重要。
  2. 男性の育児参加においては、長時間労働の是正が依然として大きな課題であるが、一日の労働時間の長さのみを問題にするのではなく、メリハリの利いた働き方を進め、土日・祝日にはしっかり休んで家族と過ごす時間を持てるようにすることが重要。
  3. 労働者が育児・介護と仕事の両立を円滑に図ることができるために、職務遂行の裁量性を高めることは有効。ただし、この裁量性が、両立支援として実質的に機能するためには、成果の管理を厳しくしすぎないことが重要。
  4. 加えて重要なのは、育児・介護との両立を重視するあまり、労働者のキャリア意識が低下しないようにすること。この点について、今後の社会的仕組みや役割の変化により変化する可能性はあるものの、現時点では効果的な企業の取り組みは男女で異なることに留意し、男女がともに高いキャリア意識を維持できる人事制度を構築することが重要。

政策への貢献

育児・介護休業法改正や次世代育成支援対策推進法の延長が決まった後の政策推進のための基礎資料として活用できる。

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「企業の雇用システム・人事戦略と雇用ルールの整備等を通じた雇用の質の向上、ディーセント・ワークの実現についての調査研究」

サブテーマ「仕事と生活に関する調査研究」

研究期間

平成24年度

執筆担当者

池田 心豪
労働政策研究・研修機構 副主任研究員
橋本 嘉代
労働政策研究・研修機構 臨時研究協力員
松田茂樹
第一生命経済研究所 主席研究員
高見 具広
東京大学大学院博士課程
松原 光代
東レ経営研究所 主任研究員 兼 コンサルタント

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