調査シリーズ No.95
子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査

平成24年 3月17日

概要

研究の目的と方法

本調査は、子どものいる世帯の生活状況やその保護者(主に母親)の仕事の実態や要望などを調査し、今後の保護者の仕事に対する支援策のあり方等を検討するための基礎資料として実施されたものである。

調査の概要

  1. 調査対象の母集団 :末子が18歳未満のふたり親世帯またはひとり親世帯(全国)
    (※いずれも核家族世帯に限らず、親族との同居世帯を含む)
  2. 調査方法:訪問留置き回収法
  3. 標本数:ふたり親世帯2,000 ひとり親世帯2,000
  4. 標本抽出方法:住民基本台帳から層化二段無作為抽出
  5. 調査期間:2011年10月~12月(原則として11月1日時点の状況を調査)
  6. 有効回収数:ふたり親世帯 1,435票、母子世帯699票、父子世帯84票
  7. 有効回収率(世帯計):55.5%

主な事実発見

  • 保育サービスの不足が貧困を引き起こす大きな理由

    専業主婦世帯の平均年収は、妻が「パート・アルバイト」として働く世帯より65万円ほど高い。一方、専業主婦世帯の貧困率は、12.4%となっており、妻が「パート・アルバイト」の世帯より約4ポイント高い(図表1)。比較的裕福な専業主婦世帯が存在する一方で、貧困層でありながらも妻が何らかの事情で働けない専業主婦世帯も大勢いる。そのうち、「保育の手だてがない」ことが理由で働けない母親は全体の半数以上を占めている。

  • 経済格差の世代間継承

    保護者の成育環境は、現在の経済状況との間に強い相関関係があるようである。世帯全体の生活保護受給率は、0.8%となっているが、保護者(母親)が成人する前に「その親が生活保護を受給していた」場合に、該当世帯の生活保護受給率は約12倍の9.8%に跳ね上がる。また、保護者(母親)が「両親の離婚」を経験した世帯の場合、生活保護率は6.9%となっており、全体平均より6ポイントも上昇する。そのほか、保護者(母親)が成人する前に「父親と死別した」世帯においても、生活保護率(3.8%)は高くなっている(図表2)。貧困率についても、おおむね同様な傾向がみられる。

  • 児童虐待、育児放棄は多くの家庭で起こりうること

    「わが子を虐待しているのではないか、と思い悩んだことがある」と回答した保護者の割合は、無業母子世帯が18.8%でもっとも高く、有業母子世帯とふたり親世帯(無業母親)はいずれも12%程度となっている。また、「育児放棄になった時期がある」と回答した母子世帯と父子世帯はいずれも全体の5%前後を占めている。さらに、「子どもに行き過ぎた体罰を与えることがある」と回答した保護者の割合は、母子世帯5.4%(無業母親)~10.2%(有業母親)、父子世帯7.1%、ふたり親世帯5.9%(有業母親)~6.3%(無業母親)となっている。上記のいずれかの育児の挫折を経験した者の割合がもっとも高いのは、「無業母子世帯」(24.1%)である。ひとりでの育児に追い込まれ、さらに仕事を通じて社会とのつながりを持つ手段も絶たれたことが、「無業母子世帯」の高い育児挫折率をもたらす原因だろうと考えられる。

図表1 妻の就業形態別でみるふたり親世帯の平均年収と貧困率

図表1 妻の就業形態別でみるふたり親世帯の平均年収と貧困率/調査シリーズNo.95(JILPT)

図表2 保護者(母親)の成育環境と現在の経済状況

図表2 保護者(母親)の成育環境と現在の経済状況/調査シリーズNo.95(JILPT)

政策的含意

  • 今後保育園の拡充などで妻の就業障壁を除去することによって、専業主婦世帯の貧困率を引き下げることが可能である。
  • 経済的格差の世代間連鎖を断ち切る対策を急ぐべきである。
  • 児童虐待を防ぐためには、母親、とくにひとり親に対する育児面のサポートが重要である。

本文

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執筆担当者

周 燕飛
労働政策研究・研修機構副主任研究員

研究期間

平成23年度

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.85.1)。

入手方法等

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