男女賃金格差の現状
 ―連邦労働省とEEOCが集計結果を発表

カテゴリー:労働条件・就業環境統計

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  • 国別労働トピック:2024年4月

連邦労働省は3月12日、2022年のフルタイム労働者の賃金(中央値)について、女性は男性の84%にとどまるとする集計結果を発表した。人種/民族による違いを考慮すると、白人男性(非ヒスパニック系)に比べて、アジア系女性は98.6%とほぼ同水準だが、白人女性(非ヒスパニック系)は80%、黒人女性は69%、ヒスパニック系女性は57%と低い。また、全国雇用機会均等委員会(EEOC)が同日発表した統計資料によると、2017年と2018年の年間給与額をそれぞれ12階層に区分した場合、女性の中央値は男性より1~2ランク低い区分に含まれる。また、最も高いランクに含まれる者の男女比は、男性が75%に対して女性は25%にとどまっている。

「平等賃金の日」

女性・公民権団体や労働組合などでつくる全米賃金平等委員会(National Committee on Pay Equity, NCPE)(注1)では、男女間の賃金格差を時間軸で把握できるよう、前年1月からの1年間に男性が稼いだ賃金水準に、年をまたいで女性の賃金水準が追いつく日を「平等賃金の日(Equal pay day)」とすることを提唱している。2024年は3月12日と想定し、行政機関や各種団体、労働組合などが、賃金平等に向けた啓発活動などを展開した。

連邦労働省がこの日に発表した統計資料によると、2022年におけるフルタイム労働者の賃金(中央値)は男性6万2,350ドル、女性5万2,360ドルで、女性は男性の84.0%にとどまる。この差は1960~70年代に60%前後で推移していたが、1980年代から次第に上昇。1990年に初めて70%を、2016年に80%をそれぞれ超えた。前年(2021年)は83.7%だった(図表1参照)。

図表1:男女間賃金格差の推移
画像:図表1

注:フルタイム労働者の年間賃金(中央値)について、男性を100とした場合の女性の数値。

出所:連邦労働省ウェブサイト

人種/民族間の格差

男女間の賃金格差を民族/人種別に見ると、さらなる開きを確認できる。白人(非ヒスパニック系)男性(7万1,591ドル)を100とした賃金水準は、アジア系女性では98.6%(7万583ドル)とほぼ同水準だが、白人(非ヒスパニック系)女性は80.0%(5万7,253ドル)、黒人女性は69.1%(4万9,467ドル)、ヒスパニック系女性(4万1,137ドル)は57.5%にとどまる(図表2)。

図表2:男女間賃金格差(白人(非ヒスパニック系)男性=100、2022年)
画像:図表2

注:フルタイム労働者の年間賃金(中央値)について、白人(非ヒスパニック系)男性を100とした場合の数値。

出所:連邦労働省ウェブサイト

なお、黒人女性(4万9,467ドル)は黒人男性(5万1,637ドル)の95.8%、ヒスパニック系女性(4万1,137ドル)はヒスパニック系男性(4万7,420ドル)の86.7%、アジア系女性(7万583ドル)はアジア系男性(8万7,409ドル)の80.8%の賃金水準となっている。

EEOCの賃金データ

また、全国雇用機会均等委員会(EEOC)も同日に、全米約7万の民間雇用主と毎年100人以上の従業員を雇う連邦請負事業者から収集した2017年と2018年のデータを基に、男女の年間給与を比較した集計結果を発表した。

EEOCの集計では、対象者の年間給与を12ランクの水準に区分した(図表3)。

それによると、女性の年間給与の中央値は男性より1~2ランク低い区分に含まれる(2017年は男性「3万9,000~4万9,919ドル」、女性「2万4,400~3万679ドル」、2018年は男性「3万9,000~4万9,919ドル」、女性「3万680~3万8,999ドル」)。

また、最も高いランク「20万8,000ドル以上」に含まれる者の男女比は、2017年が男性76%に対して女性24%、2018が男性75%に対して女性25%にとどまる。一方、最も低いランク「1万9.239ドル以下」の男女比を見ると、2017年は女性57%、男性43%、2018年は女性58%、男性42%と、女性が多い。

図表3:年間給与額ランク別人数と男女比
(2017年)
画像:図表3

(2018年)
画像:図表4

出所:全国雇用機会均等委員会

また、人種/民族や産業・職種別、地域別に見た年間給与ランクについても集計しており、①女性の給与の中央値を含むランクは、同じ人種・民族の男性よりも低い、②産業別に見ると、「宿泊施設・食品サービス」の中央値は、男女が同ランク(最も低い区分)に含まれるが、他の産業ではいずれも男性のランクが女性より高い、③職種別に見ると、「サービス職」及び「事務支援職(Administrative Support Workers)」は男女同ランク(最も低い区分)に含まれるが、他の職種はいずれも男性が女性より高い、④州別に見るとハワイ州を除くすべての州で、男性のランクが女性を上回る、ことなどを示している。

参考資料

参考レート

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