安定志向が高まり、大学院志願者数が初めて減少

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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中国教育部の統計によると、中国の2024年の大学院志願者数は前年比で36万人減少し、438万人だった。大学院志願者数が減少したのは9年ぶり。経済の見通しの不安と就職状況の悪化により、競争が激しくなっている中で、大学院卒の有利性も揺らぎ始めている。一方で、安定を求めて、国家公務員試験への参加が増えている。

将来への期待と現実のギャップ

調査機関麦可思(Mycos, マイコス)が2022年に発表した調査結果によれば、大学院進学を選択する主な動機は「就職における競争力の向上」である。学歴が向上することによって、卒業後、時間が経過するとともに報酬等の経済面や就職の満足度に良い影響がもたらされると指摘していた。そのため、大学院志願者数は年々増加。さらに「脱職考研」(仕事を辞めて大学院入学試験の準備をすること)の人数も著しく増加してきた。

中国教育部の統計による過去の大学院志願者数の推移を見ると(図1)、2014年と2015年には若干の減少が見られたが、その後は増加傾向が続き、2017年には志願者数が200万人を超えた(201万人)。2017年以降は特に志願者数の増加が著しく、2020年には300万人を超え(341万人)、2022年には400万人を超え(457万人)、そして、2023年にはピークに達した(474万人)。

図1:2010-2024年大学院志願者数の推移(単位:万人)
画像:図表2

出所:教育部統計より

大学院進学は就職活動において有利であり、将来的に高収入の職に就きやすいという期待があった。しかし、最近では、経済の先行き不安や就職環境の悪化により、就職競争はますます激化している。2024年は大学院への志願者数が前年比で初めて減った(前年比で36万人減少し、438万人)。その理由として考えられるのは、まず、大学院入試の準備にかかる負担が増えてきたことだ。次に、大学院入試に挑んでも、それが将来の仕事につながるかどうか不安視する声があること。さらには、他の志向(公務員入試、外国留学)にも興味がある人が増え、今ではキャリアの選択肢を考える際、大学院入試だけにこだわらない人々が多くなっていると考えられる。

中国国家教育試験指導委員会の陳志文専門家は「多くの人が学歴を追求した。彼らは大学院入試を通じて学歴を引き上げ、より『立派な』仕事を見つけようと期待した。しかし、次第に多くの人が修士号を取得しても就職が難しい可能性があるということに気づいた。そこで、受験生たちは大学院入試の効果を計算し始めた。これは合理的な行動であり、より冷静になっている。」と指摘している。

国家公務員試験への熱狂

就職環境の不安が高まる中で、安定を求める人が増えている。「鉄飯碗」(食べるのに困らない安定した職業)として知られる国家公務員への試験は、新華社によると、2024年に過去最高の受験者数を記録し、初めて300万人を超えた。1つの職位に対する平均競争率は約77倍に達した 。2023年の受験者数が250万人近くであったことと比較すると、平均競争率は70倍から上昇している。また、採用職位や合格率など、すべてが上昇傾向にある。

図2:2015-2023年国家公務員入試受験者数と採用人数
画像:図表2

出所:中公教育より作成

2020-2024年の過去5年間、国家公務員試験の採用人数は着実に増加してきた(図2)。2020年から2024年までの採用人数は、それぞれ約2.41万人、2.57万人、3.12万人、3.71万人、3.96万人となっている。

参考文献

  • 人民網、央視網、麦可思、中公教育

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