雇用労働部、労働時間に関する大規模調査を実施
 ―一部分野には週52時間の超過を認める方針か

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  • 国別労働トピック:2023年11月

2023年11月13日、雇用労働部は、勤労時間関連設問調査の調査結果を発表した。

本調査の結果を受けて、政府は現行の週52時間制(法定労働時間40時間+延長労働12時間まで)から、一部の業種、職種に限り、週単位で管理する現在の最長労働時間を1カ月、四半期、半年、年単位で管理できるようにして、週52時間を超過する労働時間を認める方針である。

労働時間制度改編案の補足として大規模調査を実施

韓国の労働時間制度は、週の労働時間の上限を、法定労働時間40時間と超過分の延長労働の上限12時間の合計とする、週52時間制である。

今回の調査に先立って、政府は2023年3月、「労働時間制度改編案」を発表した(注1)。改編案には、現行の週単位以外に、延長労働分を3カ月、半年、1年単位で管理できるようになる、管理単位の拡大等が含まれた。改編案では管理単位を拡大する場合には勤務日間の11時間のインターバルや、管理単位に応じて総労働時間を減縮するといった労働者の保護を目的とした措置も定めていたが、最大で週69時間労働が可能であるなど強い反発を受け、制度は見直しとなった。

今回の調査は、労使の労働時間の状況及び政策の需要、国民の意識を聴取し、労働時間全般の基礎資料として活用することを目的に実施された。労働時間制度に影響を受ける労働者と使用者を対象とした政策需要調査と、国民の意識調査で構成されており、回答者は合計で6,030人にのぼる(注2)

労働時間の管理単位拡大には過半数が同意

調査によると、週52時間制はかなりの割合で定着していたが、一部の業種と職種は依然として困難を感じていることが明らかになった。国民の48.2%が、週52時間制は「長時間労働の解消に役立った」と回答している一方で、54.9%が「業種、職種ごとに多様な需要を反映することが困難」と回答していた。

週52時間制に困難を感じている企業の対応策は、包括賃金の活用(39.9%)、追加人材の採用(36.6%)、受注の放棄(30.6%)、法・規制の無視(17.3%)の順に多かった。

包括賃金とは、実際の労働時間にかかわらず延長労働手当を含む法定手当等を基本給に含めて支給するか、定額で支給するしくみである。

延長労働の単位期間を拡大するという案については、一般国民、労働者、使用者のすべてで同意する者の方が多かった(図表1)。一部の業種・職種に限定して導入する場合はさらに同意する割合が高い(図表2)。

図表1:延長労働の管理単位拡大
画像:図表1

出所:雇用労働部報道資料

図表2:一部の業種、職種のみ管理単位を拡大する
画像:図表2

出所:雇用労働部報道資料

管理単位の拡大が必要な分野としては、業種では製造業および建設業、職種では、設置/整備/生産職、保健/医療職、研究/工学技術職の割合が高い(図表3、4)。

図表3:延長労働の管理単位拡大が必要だと思う「業種」
画像:図表3

出所:雇用労働部報道資料

図表4:延長労働の管理単位拡大が必要だと思う「職種」
画像:図表4

出所:雇用労働部報道資料

延長労働の管理単位を拡大したときに、労働者の健康権を保障するための政策についての質問では、週あたり上限労働時間の設定(労:55.5%、使:56.7%)、勤務日間に11時間の連続休息(労:42.2%、使:33.6%)の順となった。

また、管理単位の拡大を導入する際に優先すべき事項は、労使と国民すべてにおいて、実際に働いた分の確実な賃金保障(労働者 57.0%, 事業主49.5%, 国民 63.7%)、普段よりさらに働く場合は確実に休める制度的装置(労働者34.3%、事業主29.6%、国民44.8%)の順に多かった。

管理単位拡大時に設定する週あたりの労働時間の上限を尋ねた結果、労使ともに60時間以内の割合が最も高かった(労:75.3%、使:74.7%)(図表5)。

図表5:労使が想定する1週間での最大労働時間制限の範囲
画像:図表5
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注:BASE- 労働者:延長労働の管理単位拡大時の週上限労働時間設定に対して非常に同意、同意、普通と回答した労働者、事業主

出所:雇用労働部「勤労時間制度改編大国民設問調査 定量調査結果報告書」

包括賃金について使用者側は現状維持を希望

延長労働時の賃金支給については、労使とも働いた時間分の超過労働手当を支給するという回答が最も多く(労:52.5%、使:62.1%)、続いて包括賃金を使用する(労:29.4%、使:58.8%)、賃金の代わりに休暇を補償(労:10.8%、使:9.8%)の順となった。

包括賃金形態で賃金を支給している事業主及び支給を受けている労働者を対象として、約定労働時間と実際の差を質問したところ、労働者と事業主いずれも半数程度が同じであると回答した。

しかし労働者の19.7%、事業主の19.1%は実労働時間が約定時間よりも長いと回答した。反対に実労働時間が約定時間よりも短いと回答した労働者は14.5%、事業主は9.1%であった。

包括賃金の改善策について、労働者は労働時間を基盤に賃金を算定する原則の確立を希望する人が最も多く44.7%であったのに対して、事業主は現行維持の割合が最も多かった(41.0%)。ただし労働者の約4分の1も現行維持を選択している。

今後は政労使の希望する部門を中心に労働時間の改編を実施予定

調査結果を受け、政府は週52時間制の枠は維持しながらも、一部の業種、職種においては労使が希望すれば延長労働の管理単位を選択できるよう改編する方針である。

改編する業種、職種に対しては、今回の調査結果にもとづき長時間労働の防止、健康権の保証のための安全装置を設定する予定である。

参考資料

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