第2次 女性の指導的地位法、22年施行へ
 ―取締役会の女性クオータ義務付け

カテゴリー:労働条件・就業環境

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2021年10月

女性の社会参画を進める「第2次 女性の指導的地位法(FüPoG II)(注1)」が、連邦参議院で承認され、2022年からの施行が確実となった。FüPoG IIは、2015年に成立したFüPoGを発展させ、同法の実効性を強化し、不備を埋めることを目的としている。改正の主なポイントは、取締役が3名超の大企業の取締役会に対して、女性のクオータ(数量割当)を導入することである。

主な概要

2015年に成立したFüPoGでは、2016年1月から大手企業108社の「監査役会(Aufsichtsrat(注2))」の女性役員比率を30%以上とすることが義務付けられた。これにより、施行時に21.9%だった監査役会の女性割合は、35.2%(20年4月末)まで上昇した(注3)

今回成立したFüPoG IIは、この女性クオータを、監査役会より強い決定権を持つ「取締役会(Vorstand)」に導入するもので、2022年1月から施行される。主な概要を以下にまとめて紹介する。

(1)従業員数が通常2000人超で、労資同数(注4)の監査役会による共同決定制度をもつ上場企業で、取締役が3名超の場合、少なくとも1名が女性、1名が男性でなければならない(2020年の対象企業66社のうち、21社の取締役会には女性がいない)。

(2)今後、取締役に任命する女性の数をゼロとする目標を設定する場合、当該企業はその理由を根拠付けて報告しなければならない。目標値を設定しない企業、または目標値をゼロとする根拠を示さない企業は今後、実効的な制裁が科される可能性がある。

(3)連邦は模範としての役割を果たすため監査役会の女性クオータ(30%以上)を、連邦が過半数の株式を保有する企業にも拡大する(例:ドイツ鉄道、連邦印刷局、ドイツ航空保安会社等)。さらに100社強に対し、取締役が2名超の取締役会における女性クオータ(最低1名以上)を導入する。

(4)公法上の団体(疾病金庫、年金保険・災害保険機関、連邦雇用エージェンシーなど)においても、複数名の取締役会における女性1名の最低参加を義務付ける(同クオータ規定は今後、約155の社会保険機関にも適用する)。

(5)同法はまた、株式会社、欧州会社(SE)、有限会社の取締役が母性保護、両親時間、病気、家族介護に直面した場合に『タイムアウト』を取る可能性を認めることにより、仕事と家庭の両立に寄与する。該当する取締役には、任命取消の権利と同時に、再任の確約が認められる。例えば、母性保護の事例では、母性保護法に基づく保護期間を対象とし、任命機関の拒否の可能性は存在しない;両親時間、病気、家族介護については3カ月を上限とし、任命機関は重大な事由が存在する場合のみ拒否の可能性を有する。4カ月目以降、12カ月目までの期間については、任命機関の裁量でのみ認められる。

(6)連邦はさらに、行政機関の指導的地位における男女平等参画を2025年までに達成するという目標を、連邦平等法(Bundesgleichstellungsgesetz)に明記する。

(7)連邦委員会構成法の適用を拡大し、さらなる平等を実現する。今後は委員が2名のみでも女性クオータを導入する(従来は委員3名以上)。これにより、追加的に約107の連邦の委員会で女性を就任させる必要がある。

所管大臣による制定意義説明

政府サイトによると、同法を所管する「連邦司法消費者保護省(BMJV)」と「連邦家族高齢者女性青少年省(BMFSFJ)」の大臣を兼務するランブレヒト大臣は今回の改正法の制定意義について、次のように説明している;「同法はドイツの女性にとって、重要な節目になると同時に、社会や企業自体にも大きな機会を提供する。取締役会の中には依然として閉鎖的な男性限定クラブが存在するが、それは今後終わりを迎えるだろう。取締役が母性保護、両親時間、病気、家族介護に直面した場合の『タイムアウト』に関する規定を補足することで、組織のトップでも家庭と両立できるようになる。2015年法(FüPoG)により、クオータには持続的な効果があることが確認された。FüPoG II法は今後、取締役会の構成を変えるだけでなく、企業文化全体に影響を及ぼすだろう」。

参考資料

  • BMFSFJ, FT ほか。

関連記事

2021年10月 ドイツの記事一覧

関連情報