2021年以降の改正動向
―コロナ危機下の操業短縮手当の緩和等
不況時の雇用維持策である「操業短縮手当(操短手当)」は、新型コロナウイルス危機下で、様々な要件緩和や延長策がとられている。以下に操短手当を中心に2021年の主な改正動向を紹介する。
操短手当の受給要件・期間の緩和
「操短手当令改正に関する第1命令」により、2021年3月31日までに操業短縮を開始した事業所に対しては、2021年12月31日まで、以下の受給要件緩和に関する規定が適用される。
- 一事業所において従業員の10%(従来は3分の1)以上に賃金の減少があること。
- 労働時間口座の残高をマイナスにする必要はない(注1)。
操短期間中の労働者の社会保険料の払い戻しに関しては、以下の期間延長措置が講じられる。
- 2021年6月30日までは社会保険料が全額、払い戻される。
- 2021年6月30日までに操業短縮を開始した全ての事業所に対して、最長で2021年12月31日まで、引き続き半額が払い戻される。
- 2021年7月1日以後、操短期間中に職業訓練を実施する場合、同年12月31日まで、社会保険料の払い戻しを半額から全額へと引き上げることが可能となる。
派遣労働者も操短手当を受給可能とする措置は、2021年3月31日までに操業短縮を開始した派遣元事業所に対して、同年12月31日まで延長される。
また、「操短手当の受給期間に関する第2命令」により、操短手当の受給期間を24カ月まで延長する措置は、2020年12月31日までに操業短縮を開始した事業所に対して、最長2021年12月31日まで適用される。
操短手当の補填率の引き上げ
「雇用確保法(COVID-19感染拡大を受けた雇用確保に関する法律)(Beschäftigungssicherungsgesetz)」に基づく操短手当の補填率の引き上げ(4カ月目から休業により減少した手取賃金の70%(子がいる場合は77%)、7カ月目から80%(同87%))に関する規定は、2021年3月31日までに操短手当の請求権が発生した全ての労働者に対して、2021年12月31日まで延長される。
操短手当に関連した社会保険料・訓練費用の払い戻し
操業短縮による休業期間を継続職業訓練のために利用するインセンティブが強化される。具体的には、訓練期間中の社会保険料の半額払い戻し措置に関し、訓練実施期間を休業期間の50%以上とする要件を撤廃する。また、社会保険料の半額払い戻しに加えて、操業短縮中に開始された継続職業訓練に対して、事業所の規模に応じて定率で、訓練費用の払い戻し(助成)が受けられるようになる。
- 従業員数10人未満の事業所は訓練費用の100%
- 従業員数10人~249人の事業所は訓練費用の50%
- 従業員数250人~2499人の事業所は訓練費用の25%
- 従業員数2500人以上の事業所は訓練費用の15%
なお、上記の要件として、継続職業訓練措置を120時間以上継続すること、訓練措置と訓練機関が社会法典第3編(SGB III)に基づく認定を受けていること等を満たす必要がある。
また、職業向上訓練支援法(Aufstiegsfortbildungsförderungsgesetz)に基づく訓練措置についても、操短期間中は、社会保険料の半額の払い戻しを受けることができる。
技術革新によって代替される可能性がある労働者への支援
「明日の労働法(Arbeit-von-morgen-Gesetz)(構造変革における継続職業訓練および初期職業訓練の支援強化のための法律)」に基づき、2021年1月以降、雇用エージェンシーによる継続職業訓練支援の手続きが簡素化された。具体的には、技術変革によって企業の相当数の労働者に継続職業訓練が必要になる場合、従来のように従業員一人ひとりの要件確認や支援申請を行う必要がなくなった。これまでは訓練助成対象の使用者や労働者が狭く限定されていたが、今後は「技術革新による代替可能性」を理由とした助成対象が労使ともに拡大され、申請も簡素化される。使用者は、従業員または従業員代表委員会の合意があれば、原則として、雇用エージェンシーへ初回のみの申請で、支援給付を受けることができる。
この新規定の目的は、助成申請手続・決定を容易にすることで、企業における継続職業訓練の実施を促進することである。
注
- 操短手当の申請には従来、あらゆる回避策を講じることが必要で、企業は申請前に労働時間口座制度を利用する(=残高がマイナスとなる)必要があった。(本文へ)
参考資料
- BMAS、Bundesregierungほか。
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