組合結成に関する規則変更がもたらした変化

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  • 国別労働トピック:2010年12月

11月2日の中間選挙で民主党が議席を大きく数を減らしたことにより、組合結成を容易にする抜本的な制度改革の達成は困難さを増している。その一方で、7月1日に行われた組合結成に関する規則変更の影響が形となってあらわれてきた。

この変更は、これまで反対票に組み入れられていた棄権票を有効数から除外するというものである。これにより、実際に投票した数だけで判定されることになった。

鉄道・航空運輸業における集団的紛争解決を取り扱う全国調停委員会(National Mediation Board;NMB)には、7月1日の規則変更後に選挙の申請が続いている。

最初の選挙となった10月12日、トラック労働者を中心に組織する産業別労働組合チームスターが、アトランティック・サウスイースト航空のメカニックの組織化選挙に勝利した。

11月3日に行われた全米通信労組(The Communications Workers of America;CWA)に属する客室乗務員連合(The Association of Flight Attendants)によるデルタ航空の客室乗務員の組織化選挙では、僅差で組合側が敗れた。

続く11月4日に行われた、同じく客室乗務員連合ピードモント航空(Piedmont Airlines)の乗務員の組織化選挙では大差で組合側が勝利した。

デルタ航空とピードモント航空の選挙はそれぞれ異なる結果となった。しかし、どちらも規則変更がもたらした影響を考える良い材料となると思われる。

デルタ航空は2008年にノースウェスト航空と合併した。もともとノースウェスト航空の客室乗務員はCWAに組織化されていたため、組織化されていなかったデルタ航空の乗務員を含めて合併後に改めて組織化選挙が行われたのである。対象となる従業員が2万人にのぼることから注目を集めていた。結果は賛成49%、反対51%となり、165票という僅差で組合側が敗北した。

この結果を受けて、11月23日にCWAは使用者側が反組合的な選挙妨害を行ったとしてNMBに提訴した。CWAの主張は大きく二つある。一つは投票の秘密性が確保されていなかったこと。もう一つは従業員が組織化に反対するように使用者側が誘導したというものである。

NMBはパソコンもしくは電話を通じた投票により秘密性を確保するように指導している。しかし、デルタ航空では、使用者側が指定するパソコンから投票することを従業員に強制していた。そのため、投票結果の追跡が可能となって秘密性が阻害されたというが組合側の主張である。もう一つ、対象となる従業員に上司から組合結成に反対票を投じることを求める電話が家にかかってきたことや、反対票を投じる方法を解説したDVDの上映をしたことなどである。NMBはこれを受けて審査に入るが、選挙妨害が認められれば再選挙が行われることになる。

ピードモント航空の選挙は組合側の勝利となったが、この選挙は2008年にも行われた。この時は賛成票が対象従業員総数の48%にとどまり、組合側が敗北した。今回は賛成票がその数字を下回り、41%にとどまった。にもかかわらず、組合側が勝利した。有効投票数でみれば65%の賛成となったからである。棄権票が無効となったことが大きく影響した。

規則変更後の三つの選挙では、勝敗の差こそあれ、組合側に有利に働いていると言えるだろう。

参考

  • CWA Wins Vote by Piedmont Workers Under New NMB Rule, Reversing 2008 Loss, Daily Labor Report, Nov.4, 2010
  • AFA-CWA Files NMB Charges Against Delta In Flight Attendant Representation Loss, Daily Labor Report, Nov.26, 2010

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