特定業種の労働市場における問題と雇用創出プログラム

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2005年8月

5月の全体的な失業率は4.10パーセントまで上昇した。そこで、行政院労工委員会(CLA)は就業サービス法に基づき、恵まれない求職者と障害のある求職者に焦点を絞った雇用創出プログラムを開始した。6月から年末まで地方政府と協力して実施されるこのプログラムに従い、 CLAは、台湾全域のサービスセンターとステーションを含む公営職業安定所の勧告に基づいて、家庭の切り盛りをする既婚女性、中年、高齢の求職者、軽度の心身障害者、原住民、公営職業安定所に登録している3ヶ月以上失業中の労働者のために、3500の雇用を創出する計画である。

また、CLAは、産業開発、ソーシャルサービス・医療、地域の安全、人文科学、住宅設計、環境保護の分野の雇用に関して地方政府が提出する雇用促進プロジェクトを雇用促進支援努力の一環として実施している。

教師有資格者の失業

こういった分野以外で、最近政府に雇用機会の創出を求めた特定グループは、失業中の教師である。失業中の教師とは、すでに教員免許を持っているが、卒業してから一度も教鞭をとる機会がなかった者、あるいは臨時で代用教員を務め、その後再び失職した者である。最近、約3000人の失業中の教師が街頭デモを行い、資格のある教師のための仕事を増やすよう政府に要求している。具体的には、一学級の規模を小さくし、一学級の生徒に対する教師の比率を上げ、教師数を増やすことで、一人でも多く教職に就けるよう政府に陳情したのである。

「失業中の教師」が増大した背景は、1994年に教師教育法が可決され、政府が一般大学に教師の資格を取得するための教育単位プログラムを設定・開発する権利を与えるようになったことから原因となっている。これにより需給のバランスが崩れ、小中学校での教授資格のある教師が過剰になった。実のところ、現在教師の免許を持つ失業者は6万人で、教師有資格者が教師になれる希望はほとんどない。数日前行われたばかりの台北市の公立中学校の教員採用試験では、9000人の有資格者が96の教師ポストを争った。

このような状況になった理由は、教師の需要と供給に関連があるのは間違いない。カリキュラムを修了し、台湾の大学で教育と教授の単位を履修し、新たに教師の雇用市場に参入しようとする資格ある教師は、約1万8000人と推定される。

一方で、台湾では少子化が進行している。男女とも未婚者がふえていること、生活の質を高めようと子供を一人しかもうけない台湾の夫婦が増えていることなどにより、出生率は、1971年の3.71、1951年の7.04から激減し、昨年には1.2人という低い記録になった。小学校の入学者も昨年28万9000人という低い記録に達し、2010年には20万人ほどに減少すると推定されている。政府は、こういった趨勢のなかで、むしろ学級数と教師の雇用数を減らす方向にある。政府は、さらに今後の需給のギャップが徐々に拡大することを見込んで、中学校の一学級の生徒数を38人、小学校の一学級の生徒数を35人に減らすなど措置を行い合計1万の教師の雇用が創出したが、教師の欠員総数が、失業中の有資格教師の数にはるかに及ばない。

教師有資格者の就業問題を解決するため、インターネットを介して集めた全国の1万人ほどの教師の署名を後ろ盾に、一学級の生徒数を30人未満にし、一学級に2人の教師をつけるべきだと主張する運動家も現れている。しかし、潜在的な教師の増加と教師の欠員の減少というアンバランスな状況が悪化した場合、この問題を本当に解決することができるであろうか。それとも、文部省( MOE )のように、学校における需給は経済問題として扱うべきだと強調する方がよいのだろうか。理論的には、これは、有資格教師の雇用機会創出の問題というより、教師の需要と供給の調整の問題である。政府は、学校をめぐる環境と状況の変化に直面して問題を解決するタイミングが遅れたことを認めないわけにはゆかず、全般的な見直しと合理的な構造的改善が必要とされている。そういった中、文部省は、今後10年の人口変動予測に基づく戦略を構築し、教師・生徒比率の算出に漸く動きだした。

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