労働費用と生産性:ユーロスタットレポートより
この夏、ドイツのダイムラー・クライスラー、シーメンスなど西欧の一部大手企業は、生産拠点を労働費用の安い東欧などに移転させることを「ほのめかし」、雇用確保と引き替えに労働者から週労働時間の延長合意を勝ち取ったと米国ニューズ・ウィーク誌などが報じた。西欧企業にとって東欧の労働費用の相対的な低さは、距離の近さとともに大きな投資誘因。欧州連合(EU)統計局ユーロスタットが最近発表した「EUの市場経済下の雇用/構造商業統計に基づく分析」(Employment in the market economy in the European Union: An analysis based on the Structural Business Statistics)のデータをみても、労働費用の東欧・西欧間格差は大きいことがわかる。
労働費用の東西格差
5月に加盟した東欧8か国の労働費用(従業員1人当たり、2001年)をみると、高い順にスロベニア(1万3000ユーロ)、ポーランド(8000ユーロ)、ハンガリー及びチェコ(ともに7000ユーロ)となっている。最も低いのはラトビア、リトアニア(ともに4000ユーロ)である。最も高いスロベニアでも、従来加盟国15か国の平均(3万5000ユーロ)と比較すると、その4割にも達しない。
従来加盟国 | 35 |
15か国 | |
ドイツ | 41 |
フランス | 37 |
スペイン | 25 |
チェコ | 7 |
エストニア | 5 |
ラトビア | 4 |
リトアニア | 4 |
ハンガリー | 7 |
ポーランド | 8 |
スロベニア | 13 |
スロバキア | 5 |
注:鉱業・採掘業、製造業、電気・ガス・水道業及び建設業の計。
資料出所:Eurostat、the Structural Business Statistics
(「EUの市場経済下の雇用/構造商業統計に基づく分析」表24より作成。)
労働生産性の東西格差
労働費用のみならず、労働生産性においても東欧・西欧間には大きな格差がある。ユーロスタットのレポートでは、労働生産性の指標として労働時間当たり付加価値を示している。東欧8か国のうち、労働時間当たり付加価値(2001年)が最も高いのはポーランド(13.6ユーロ)で、次いでハンガリー(8.7ユーロ)、チェコ(6.2ユーロ)の順。最も低いのはリトアニア(4.0ユーロ)である。最も高いポーランドでも、従来加盟国と比較してみるとドイツ(35.3ユーロ)はポーランドの2.6倍、フランス(27.8ユーロ)は2倍と、やはり大きな開きがある。
西欧が東欧に比べて生産性が高いのは、職業訓練やインフラの整備がより進んでいるためとされる。そうした優位性のために、あえて生産拠点を国内に留める企業もある。
東欧のEU加盟により、長期的には労働費用などの東西格差は縮小・解消することが期待されているが、現実にはどう展開するのか。
ドイツ | 35.3 |
フランス | 27.8 |
スペイン | 22.5 |
チェコ | 6.2 |
エストニア | 4.9 |
ラトビア | 6.1 |
リトアニア | 4 |
ハンガリー | 8.7 |
ポーランド | 13.6 |
スロベニア | データなし |
スロバキア | 6 |
注:鉱業・採掘業、製造業、電気・ガス・水道業及び建設業の計。
資料出所:Eurostat、SBS、LCS(労働費用調査)、LFS(労働力調査)
(「EUの市場経済下の雇用/構造商業統計に基づく分析」表7より作成。)
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