海外出稼ぎ労働者数、送金ともに増加
―国内の企業は優秀な人材確保が困難に

カテゴリー:雇用・失業問題外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2004年11月

フィリピン海外雇用庁(POEA)の発表によれば、2004年上半期の海外出稼ぎ労働者(OFW)数は、前年同期比7.2%増の49万2485人に達した。また、フィリピン中央銀行(BSP)によると、2004年1月から8月のOFWの送金額(累計)は55億米ドル。前年同期比で4億米ドル増という結果であった。例年、9月以降は、クリスマス向けに送金が増える傾向にあるため、年内は増加が続くとBSPはみている。労働力の海外流出が続くなか、国内の企業は優秀な人材の確保が困難になっている。

2004年上半期のOFW数は、前年同期比7.2%増の49万2485人。国別では、1位サウジアラビア(11万218人)、2位香港(4万6637人)となっている。大規模なインフラ開発プロジェクトが進められている中東諸国(クウェート、バーレーン、カタール等)の就業者数も、今後増加が予想される。特に女性は、国内での賃金が男性に比べて低いだけでなく、求職そのものも少ないため、海外に職を求める傾向にあり、OFWに占める女性の割合は年々増加傾向にある。

OFWの送金額は、2004年1月から8月までの累計で55億米ドルに達した(前年同期比4億米ドル増)。BSPでは、OFWの数そのものの増加だけでなく、製造業や介護士等の専門サービス業、事務職といった比較的賃金が高い職種の労働者の増加が、送金額増加につながったと指摘。BSPが設定する2004年通年の送金目標額は、81億米ドル(前年比6%増)。このままでいけば、目標は達成できるとBSPは予想している。

この年間80億米ドルにもなるOFWの送金に支えられているフィリピン経済にとって、OFW数の増加とともに、彼らからの送金額が少しでも増加することが望ましい。しかし、労働力が海外へ流出する一方で、国内の企業が優秀な人材を確保することが困難になってきている。企業の多くが「6カ月以上の実務経験者で、即戦力になる人材」を求める中、優秀な人材は海外へ出てしまい、企業の要求に応えるだけの人材が国内に残っていない。そのために、失業率が高い水準にある(2004年7月:11.7%)なかで、求人数は増加するという現象が起こっている。

政府は、失業者数を減らすため、新卒者や未経験者の雇用機会を増やすよう企業に求めていく方針だが、優秀な人材確保に悩む企業との間のギャップをどう埋めるかが大きな課題となりそうだ。

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