若年失業率が史上最悪の14.4%を記録

カテゴリー:雇用・失業問題若年者雇用統計

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  • 国別労働トピック:2004年10月

ILO(国際労働機関)は、8月11日に発表した若年者の世界雇用情勢報告で、03年の全世界の若年(15~24歳)失業率が、過去最悪の14.4%(約8800万人)に達したと報告した()。世界の労働力人口(15~64歳)全体に占める若年層の割合は25%だが、失業人口では47%と約半数を占める。若年層の失業人口の推移をみると、過去10年(93年~03年)で26.8%増加している。地域別では、中東及び北アフリカ(25.6%)、サハラ以南アフリカ(21%)、移行経済諸国(18.6%)の若年失業率が最も高く、先進諸国(13.4%)、東アジア(7%)で低い。このうち、過去10年間に若年失業率が低下したのは先進諸国のみで、全体的に上昇傾向にある。

一方、雇用は確保しているものの、1日1米ドルの貧困ライン以下の生活を強いられる若年就業者は、1億3000万人で、世界全体(5億5000万人)の4分の1を占める。こうした若年貧困層は、インフォーマル部門を中心に、長時間労働、低賃金、非典型労働といった劣悪な労働条件を強いられ、ライフサイクルの各段階で貧困の悪循環に晒される可能性が高い。途上国のみならず先進国でも、高失業率を背景に若年層の貧困が拡大しており、短期雇用や非典型労働に従事する傾向が加速化している。

報告書は若年層の失業増加の理由として、1)学校から就業へのスムーズな移行過程の整備が不十分であること、2)世界的な不況による企業の採用手控え、3)若年層の離職率の上昇、4)進学率の上昇――などを挙げたうえで、「若年層への良好な雇用機会が限られていることが、若年層の家族への依存度を高め、非合法活動の上昇につながっている」と指摘。学校から就業への移行過程で、早期に良好な職業生活のスタートを切った若年労働者は、後になって長期失業に陥らない傾向が強い。また、失業を理由とする途上国の高学歴層の頭脳流失が、途上国の開発にもたらすマイナス影響にも言及。UNDP(国連開発計画)の報告によると、2001年にヨーロッパ諸国もしくはアメリカに移住したアラブ諸国の大卒者は、45万人以上に及んでいる。

ILOの推計では、若年層の失業率が半減すれば、世界全体で国内総生産(GDP)が少なくとも2.2米兆ドル(注1)(2003年時点の世界のGDP総額の約4%相当)増加する。このためILOは、若年者の就業困難の解消を緊急事態と受け止め、若年雇用への関与を強化している。グローバルレベルでも、コフィ・アナン国連事務総長の発案により、国連、世界銀行、ILOの連携で、「若年雇用ネットワーク」を設置。既にインドネシア、ブラジル等10カ国で若年雇用対策を含む国家行動計画を策定したほか、政策ガイドブックの開発や、技術支援・政策助言を実施している。

図:若年失業率及び若年失業者数(1993年・2003年)
  若年失業者数(千人) 若年失業率(%)
1993 2003 1993 2003
世界 69542 88195 26.8 11.7 14.4 23.1
先進諸国 10441 8609 -17.6 15.4 13.4 -13.0
移行経済諸国 4399 5051 14.8 14.9 18.6 24.8
東アジア 9288 11292 21.6 4.8 7.0 45.8
東南アジア 4894 9989 104.1 8.8 16.4 86.4
南アジア 13921 16963 21.8 12.8 13.9 8.6
ラテンアメリカ及びカリブ諸国 6568 9473 44.2 12.4 16.6 33.9
中東及び北アフリカ 5962 8172 37.1 25.7 25.6 -0.4
サハラ以南アフリカ 14068 18646 32.5 21.9 21.0 -4.1

出所:GET Model 2004

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