最低賃金、7.1%引き上げで4.5ポンドに

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

政府は3月18日、低賃金委員会(Low Pay Commission)の勧告にしたがって、現行4.20ポンド(時給)の最低賃金を10月から4.50ポンドに引き上げると発表した。伸び率は7.1%。さらに来年の10月からは4.85ポンドに引き上げることも予定されているが、使用者側の圧力により「経済状況次第」という但し書きがついた。

一般レートよりも額が低く設定されている18-21歳対象の若年レートについても、現行の3.60ポンドから3.80ポンドへ引き上げられ、経済状況次第では、来年の10月からさらに4.10ポンドに引き上げられる。低賃金委員会の見積もりによると、2004年10月までに最低賃金の恩恵を受けるのは、現行の100万人から170?250万人に増える。

今回の発表について、使用者側、とくに中小企業からは不満の声があがっている。英国商工会議所や中小企業連盟は、最低賃金それ自体には反対ではないが、今回の引き上げ率はインフレ率を大きく上回っており、経済状況に照らしてあまりに高すぎるとしている。今後予定されている国民健康保険料の引き上げとあわせると、企業の負担は大きく、人員削減に踏み切らざるを得ない状況になりつつあると論評している。

一方、労働界では、引き上げ率がインフレ率を上回ったものの、5ポンドへの早期引き上げを期待していただけに、失望感が広がっている。労組によると、最低賃金が雇用に否定的な影響を及ぼしたことを示唆する証拠はなく、政府はむしろ、否定的な影響が出始めるまで最賃を引き上げていくべきだと主張している。とくに、低賃金労働者の多い公共部門の労組、ユニソンは、生活費と比較すると現在の最賃はまだまだ低すぎるとしている。低賃金委員会のアデアー・ターナー委員長も、現行の最低賃金は、生活費の高い南東部では十分な所得を保障していないと、労組の主張を支持している。

今回の低賃金委員会の勧告のなかで政府が唯一受け入れなかったのは、21歳層を若年レートから一般レートに移行させる案だ。政府によると、21歳層は20歳層よりも就業率が高いが、この案を導入することで21歳層の雇用水準に悪影響が生じる恐れがあるという。

委員会は最低賃金の対象年齢を16-17歳まで拡大することも検討しているが、学校教育からの脱落者を増やす温床になりかねないと、政府は同案にも否定的である。

最賃レートの推移(ポンド/時間)
成人 若年
1999.4(最賃導入時) 3.60 3.00
2000.10 3.70 3.20
2001.10 4.10 3.50
2002.10 4.20 3.60
2003.10 4.50 3.80
2004.10(予定) 4.85 4.10

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