州、市町村が財政難で労働者を解雇

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年5月

州・市町村の財政難により、これまで雇用保障が高かった地方公務員が人員削減の対象になることが多くなっている。州・市町村政府は1930年代以来、雇用者数を増やし続けてきた。多くの地方公務員は、給与、給付水準が良く、組織率も高いため労組が強い雇用保障を確保していた。

現在、連邦政府職員は260万人おり、連邦政府機能の民営化や、政治家が世論を背景に連邦政府職員削減に乗り出したため、1990年年代に人員削減された。これに対し、1990年代に、州・市町村政府職員数は約20%増加した。現在、株式市場の低迷などの影響で収入が減り、40以上の州政府と多くの市町村政府は第2次世界大戦以来、最も深刻な財政危機に直面している。州・政府職員の人員削減を口にする州知事が増えている背景には、職員削減を行えば、増税をしても市民から強い抵抗を受けないですむという事情がある。

米国の財政年度は10月に始まるため、最終的な予算はまだ確定していない。州政府の政策分析などを行う全米州議会議員連盟(NCSL)が2003年2月上旬に発表した調査によると、州の赤字は大変な率で増加しており、2003年に8州が州政府職員解雇を開始した。コネチカット州は約3000人に解雇通知を渡し、6月末までにさらに850人に通知を出す可能性がある。また、フロリダ州では2905人の解雇をジェブ・ブッシュ知事が提案している。ヴァージニア州も1900人の解雇を提案した。

市町村レベルの例としては、イリノイ州で2番目に大きな規模のエルジン学区では、来年の予算を14%削減する試みの一環として、教育委員会が全員一致で同学区の5200人の従業員のうち1700人を解雇することを決めた。この解雇者の中には840人の教師と600人の教育助手が含まれている。予算が確定するまでに、このうちの何人かは再雇用される可能性があるが、児童数の増加が見込まれる中での人員削減に、多くの教員は困惑し、意気消沈している。

ロサンゼルスのシンクタンクのリーズン・パブリック・ポリシー・インスティチュートのアドリアン・ムーア副所長は、今後数年間に、全国の州・市町村政府から解雇される労働者は15万人にも達する可能性があると語っている。

州・市町村職員にとっては、解雇だけではなく、民営化で民間企業による雇用になったり、公務員としての雇用保障が弱められたりすることもある。フロリダ州は、州職員の団体交渉ルールのいくつかを削除し、州職員の先任権にかかわらず職員を解雇することを可能にした。

州・市町村から解雇された職員は、再就職の際に不利になることが多いと指摘されている。企業の採用者は、民間企業での職務経験がある労働者に比べ、公務員の実務能力を低く評価する可能性が高いからである。特に民間企業から解雇される労働者が一層増加すれば、公務員の再就職はさらに困難になる恐れがある。

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