失業率4.8%、過去15年間で最悪を更新

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

人材開発省が2002年10月31日に発表した第3四半期雇用統計によると、9月末時点の失業率(速報値、季節調整済み)は4.8%で、6月末の4.1%から急激に悪化した。また過去15年間で最悪を記録した3月の4.5%をも上回った。同省は、新卒者が労働市場に参入したことと、とくに建設業で業況が悪化したためと説明している。

雇用情勢、一転して悪化

2002年第2四半期の雇用情勢は、解雇者数、雇用者数、失業率のどの指標とも、前期から好転したが、第3四半期については、再び悪化に転じた。

まず第3四半期の解雇者数は4100人で、前期の4091人をわずかに上回った。経済を財生産とサービス生産の二部門に分けてみると、財生産部門が2600人で前期よりも約1000人増加した。サービス生産部門は1500人で、逆に前期を大きく下回り、2001年の上半期の水準まで戻りつつある。

雇用者数は1万5000人減少し、5四半期連続の減少となり、しかも減少幅は今期が最大となった。部門別では、財生産部門が大半を占め、1万200人の減少。サービス生産部門は4800人の減少にとどまったものの、前期は600人増だった。

これを反映して9月の失業率は4.8%と、前期の4.1%から大幅に上昇しただけでなく、過去15年間で最悪を記録した3月の4.5%をも上回った。

雇用情勢が悪化に転じた背景には、新卒者が労働市場に参入したうえに、新規雇用が不十分であったために、市場の吸収速度がかなり遅くなっていることがある。人材開発省は、今後の失業率について、2002年末までに5~5.5%に達するとの厳しい見方をしている。

表 四半期別の解雇者数(人)
  2001年 2002年
通年
合計 3248 5631 8368 8591 2万5838 4857 *4100
財生産 2167 3954 5527 4377 1万6025 2200 *2600
サービス生産 1081 1677 2841 4218 9813 2657 *1500

*速報値 (出所)人材開発省

表 四半期別の解雇者数(人)
  2001年 2002年
通年
合計 2万3200 3300 -1万2500 -1万3900 100 -1万3800 -8200 *-1万5000
財生産 -5000 -9000 -8700 -1万4000 -3万6700 -1万1500 -8800 *-1万200
サービス生産 2万8200 1万2300 -3800 100 3万6800 -2300 600 *4800

*速報値 (出所)人材開発省

表 四半期末毎の失業率 (%、季調後)
2001年 2002年
3月 6月 9月 12月 3月 6月 9月
2.4 2.7 3.8 4.4 4.5 *4.1 *4.8%

*速報値 (出所)人材開発省

GDP成長率、5四半期ぶりにプラス

一方、通産省が11月18日に発表した2002年第3四半期国内総生産(GDP)成長率(確定値)は、前年同期比3.9%となり、5四半期ぶりにプラス成長に転じた前期に続き、2期連続のプラス成長となった。ただ、前期比(年率)はマイナス10.1%と大幅に低下し、2001年第4四半期以来のマイナスとなった。

これで、1~9月期のGDP成長率は2.0%となり、通年の成長率予測3~4%を達成することはほぼ絶望的となった。シンガポールの最大の輸出先であるアメリカの国内消費マインドは対イラク戦争の可能性などから冷え込んでおり、それに呼応して投資も落ち込んでいるためである。

政府は2002年の成長率予測を2.0~2.5%へと再下方修正するとともに、2003年の上半期中には、本格的な景気回復は見込めないとの見方を示している。

表 四半期末毎の国内総生産伸び率 (%)
  2001年 2002年
対前年同期比 合計 5.0 -0.5 -5.4 -6.6 -1.5 3.8 3.9
財生産 2.8 -6.3 -14.8 -15.2 -5.1 7.8 8.3
サービス生産 5.7 2.6 -0.2 -1.3 0.2 1.7 1.8
対前期比(年率) 合計 -11.4 -8.3 -10.5 5.6 8.1 13.4 10.1
財生産 -27.2 -19.0 -24.3 16.1 14.0 34.2 22.3
サービス生産 -0.3 -3.0 -3.1 1.5 5.5 3.2 2.8

出所:通産省

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