TUC、最低賃金29%引き上げを要求

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年11月

労働組合会議(TUC)は8月12日、最低賃金を2004年10月までに29%引き上げ、時給5.3ポンド(時給、以下同)にするよう政府に求めた。最低賃金額は9月時点で4.1ポンドだが、政府は10月に1ポンド引き上げることになっていた。低賃金対策をめぐっては労組と政府との対決が予想されていたが、労組側がまず口火を切った格好だ。

TUCの主張

TUCのモンクス書記長は、最低賃金が雇用に否定的な影響を及ぼしたことを示唆するような証拠はなく、むしろ英国に数百万人いる低賃金労働者に大きな利益をもたらすと主張している。また、最低賃金の大幅な引き上げは、イギリスの労働市場にはびこる大きな賃金格差を是正するのに不可欠であるとも論じている。TUCの調査によれば、経営トップは過去1年間に平均1万6000ポンドの賃上げを受け、8年連続でほぼ同額の引き上げを享受してきたが、もし最低賃金額で週35時間働いた場合、年収はわずか7462ポンドにしかならない。

最賃引き上げのほかにTUCは、通常レートよりも額が低く設定されている18~21歳対象の特別レート(10月から3.6ポンド)を廃止するとともに、適用対象年齢を16歳まで引き下げることも要求している。

使用者団体は反対

英国産業連盟(CBI)など使用者団体は、最低賃金はすでに十分な水準にあるとの認識である。使用者団体も賃金格差是正の必要性は認めているものの、雇用と経営の双方に害を与えない方法で行うべきであると主張する。TUCの提案が通って賃金が大幅に上昇した場合、それと同時に生産性が上昇しない限り利潤は圧縮され、その負担は結局雇用削減の形で労働者に転嫁せざるを得ないという。

使用者団体はまた、若年層向けの特別レートの廃止についても反対だ。使用者にとって特別レートは若年層を雇用する動機付けになっており、廃止すれば使用者は若年層の雇用を控えることになるばかりか、若年層自身が積極的に労働市場へ参入しようとしなくなると述べている。

エコノミストの見方

エコノミストらも大幅な引き上げには懐疑的である。最低賃金をTUCの提案通りに引き上げれば、経済全体に照らした適正な所得上昇率を超えてしまい、イギリスの労働市場を危険な実験にさらすことに等しいと警告を発している。

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