サービス部門の雇用急進
IBGE(ブラジル地理統計院)のデータを国立経済社会開発銀行(BNDES)が処理した統計によると、ブラジルにおいても、農業、工業部門からサービス部門への人口の移動は、最近、特に顕著になって来ている。
経済部門 | 1999年 | 2000年 | ||
生産額 | 就業人口 | 生産額 | 就業人口 | |
農業・牧畜 | 6.4 | 25.7 | 7.0 | 23.0 |
鉱業 | 0.6 | 0.5 | 0.5 | 0.3 |
製造工業 | 38.6 | 15.7 | 37.3 | 12.4 |
公益事業 | 2.5 | 0.6 | 3.2 | 0.3 |
建設業 | 7.6 | 6.8 | 7.9 | 6.3 |
商業 | 7.8 | 13.1 | 7.4 | 15.1 |
運輸 | 3.8 | 3.4 | 3.5 | 3.8 |
通信・報道 | 0.8 | 0.4 | 2.3 | 0.3 |
銀行 | 9.1 | 1.9 | 4.1 | 1.1 |
不動産賃貸 | 3.2 | 0.4 | 6.6 | 0.5 |
公共行政 | 11.3 | 9.9 | 11.4 | 8.8 |
その他のサービス | 8.4 | 21.6 | 8.9 | 28.0 |
出所:ブラジル地理統計院/国立経済社会開発銀行 |
BNDESの雇用部門の執行取締役シェイラ・ナジベルグは次のように言う。
工業部門からサービス部門への就業人口の移動は、既に、1990年代から顕在化している。この期間、工業生産は、3%後退したが、就業人口は、さらに低下し、21%も減っている。商業部門は、生産で、5%減退したが、雇用は15%増加している。サービス部門は、生産で6%増加し、就業人口では、30%も伸びている。これは、国内市場開放の進展とともに、工業部門が競争力の強化につとめた結果、リストラ、業務の社外化に努め、これに、公共サービスの民営化が加わったからだと考えられる。
しかし、ブラジルでは、の雇用を増進するには、単純にサービス業を強化拡大するだけでは足りない。まず、数百万の失業者がいるブラジルでは、サービス部門だけでこれを吸収することはできない。第2に、国際収支バランスの改善を念頭におかなくてはならない。
この点で、政府が、とるべき政策は、農業部門、観光部門、教育、保健部門の強化である。農業部門は、観光出門外貨バランスの改善に役立つし、間接雇用の効果が大きい。観光部門も直接、外貨獲得に役に立つし、ブラジルは潜在資源が豊かである。教育、保健部門は、まだ、立ち遅れがはなはだしい。シェイラ・ナジベルグは以上のように述べている。
スーパーの労働者、自動車産業を追い越す
経済雑誌エザーメによると、銀行を除いた民間企業部門で、自動車産業を追い越して、スーパー・マーケットが首位を占めた。
順位 | 1996年 | 従業員数 | 順位 | 2002年 | 従業員数 |
1 | フォルクスワーゲン | 29,616 | 1 | ポン・デ・アスーカル | 57,833 |
2 | フィアット | 21,359 | 2 | カレフール | 44,723 |
3 | GM | 20,800 | 3 | マクドナルド | 36,000 |
4 | ポン・デ・アスカール | 20,737 | 4 | サジア | 30,400 |
5 | サジア | 20,007 | 5 | アテント | 26,561 |
出所:エザーメ誌 「大企業と優良企業」
上記で、ポン・デ・アスーカルとカレフールはスーパー・マーケット、サジアは食品工業で、アテントは、テレ・マーケッティングの専門サービス会社である。
これを見て分かるように、1990年代に、上位3位までを占めていた自動車工業が、残らず姿を消し、かわってスーパー・マーケットの雇用数が、上位を占めている。ポン・デ・アスーカル社は、全国に507店舗を有して、ますます拡張を続けているのに、フォルクスワーゲンは、今年に入ってからも、700のポストを閉め、現在では、25,200人の従業員を有するのみで、上位5位にも入っていない。
フォルクスワーゲンの人事部長ジョン・ラシェードは、これについて、1997年には、自動車部門は、200万台を製造したが、今年は、150万台である。景気が回復すれば雇用も増えるだろう。しかし、技術的進歩ということも考慮しなくてはならないと述べて、慎重な態度をとっている。
これに対して、小売部門は、人依存産業であるから、事業の拡大は、直接、雇用の増進につながる。
例えば、マクドナルドは、さらに、94のキヨスク、26のマク・カフェー、配達サービスの開始、24時間レストランの開設で、12月までに、5,200、近い将来に、41,200の雇用を造出する予定である。
ブラジル・カレフールの人事部長アルバロ・デ・アンジェリス・コルデイロによると、ハイパーマーケット1店で、300名から400名の新規雇用が見込まれ、スーパーマーケット1店で、100から200人の新規雇用が見込まれる。
スーパーマーケットのトップであるポン・デ・アスーカルは、本年、2店のハイパーマーケットと2店のスーパーマーケットで、1,400人を雇用し、年末まで、さらに3店のハイパーマーケットの開店を予想して1,500人の新規雇用を見込んでいる。
しかしながら、賃金水準からすると、商業部門、サービス部門の賃金水準はまだ低く、サン・パウロ州とDIEESE(組合総連合調査統計部)の調査によると、大サン・パウロ圏内の平均賃金は、工業部門が、968.00レアルであるのに対し、商業部門は601.00レアル、サービス部門は、822.00レアルとなっている。
とは言うものの、商業部門の高学歴化は、すでに始まっており、特に、外資系企業(例えばカレフール)、大企業において特にこの傾向が著しい。
ポン・デ・アスーカル社の人事担当部長マリア・アパレシーダ・フォンセッカによると、15年前、小売業は、銀行、工業に就職がかなわなかった者の次ぎの選択部門であって、高度な知識と技能を必要としなかった。各級の長でも、上級教育在学中で、就職してから学業を継続する者が多かったし、中以下の職種では、毎日、低学歴、半失業者の求職者が、来社したが、今日では、キャッシュ・レジスターでも高校卒業、又は、大学卒の者が採用されている。管理職ともなると、大学卒業又は修士課程卒、時には、大学院専門課程を修了した者が求められている。
これとともに、スーパーマーケットからの転職率は激減し、かつてはなかった金融部門、工業部門から、小売部門の有望性を見て、転職して来る者も多くなったと言う。
2002年11月 ブラジルの記事一覧
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