2002年上半期の工業雇用低下

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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ブラジル地理統計資料院(IBGE)の工業雇用調査は、02年上半期に前年同期比でマイナス1.7%、6月だけを取れば1.3%後退、6月を5月比にすると0.1%低下と、いずれもマイナスとなった。資料院では、02年6月から特に強まった政治経済不安が工業生産と雇用に影響してきたと予想している。6月の工業生産は、節電義務のために生産が急に下がった昨年6月と比較しても0.7%下がっている。サンパウロ州工業連盟の発表でも、02年7月の州内工業雇用が前年同月比で0.52%減少して、7月の結果としては過去5年間で最悪となった。02年の7ヵ月では1.58%に当たる2万5.056人の減少となった。しかも連盟では8月以降の結果も、雇用減少の継続、あるいは解雇が加速される予想をだした。

社会政治情勢の悪化をみて、外資の金融投資引き揚げ、政府、企業共に国際融資確保困難、企業の投資計画延期など、03年1月1日からスタートする次期政権に対する警戒心が内外企業家や、銀行に強まり、これが悪循環を起こしている。政府は、国内経済の基礎的条件は安定していることを強調して、金融市場の投機だけが金融市場を混乱させていると発表して、財界の不安を沈静化しようと努力しているが、IMFから300億ドルの融資が決定して、次期政権への過渡期に、国家の財政危機を回避する防壁は確立したが、金融市場は動揺が止まらず、ドル相場は短期間で激しい変動を繰り返している。

次期大統領選に優勢となっている上位2者の候補がいずれも野党候補であり、これまで、IMF協定を非難し、民営化した公社や公銀の再国有化を公約に掲げ、銀行金利の引き下げ、政府の負債支払いは期限延期に向けて交渉を行うなど、ラジカルな発言を行っているために、外資は企業も銀行も懸念を持っており、03年に新政権が発足して、いかなる政策を実施するかを見極めるまで、ブラジルから遠ざかろうとしている。そのため、融資の中で最も安全といわれる輸出融資まで外国の銀行は削減しており、外貨不足は国内市場でドル高を起こして、輸入コストを上昇させ、政府や、民間企業のドル負債コスト上昇、インフレ圧力となっている。政治経済上の動揺と失業の増加は消費者にも警戒心を強めて、消費は低下しており、例年7月以降は、年末商戦向けに工業生産活動が活発化する時期であるが、02年は先行き不安だけが強まって、工業では各部門から減産計画が発表されている。

経済コンサルタントや銀行では、02年始めに02年のGDP成長を3~4.5%の高い予想にしていたが、下半期に入って、1~1.5%の低い予想に下方修正している。

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