非正規労働者の雇用問題をめぐる動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年7月

労使政委員会及び労働部の非正規労働者保護対策

非正規労働者の雇用問題は2002年の賃上げ及び労働協約改訂交渉における主な争点のみでなく、通貨危機後一貫して政府の主要政策課題にもなっている。この非正規労働者の雇用問題を解決するために2001年7月に発足した労使政委員会傘下非正規労働者対策特別委員会は、5月6日に非正規労働者保護立法の前段階として、次のような保護対策を講じることで、合意に達したことを明らかにした。

第一は、社会保険の拡大実施である。1月80時間、週18時間未満の日雇い労働者に対して雇用保険を適用し、個人講師・キャディなど特殊な雇用形態の労働者(業務上災害からの保護が必要な者)に労災保険を適用する。2飲食・宿泊・自動車販売などの15業種に対しても健康保険の事業所加入を段階的に拡大し、5人未満の事業所と3ヶ月未満の臨時日雇い労働者に対しても国民年金の事業所加入を段階的に推進する。

第二は、労働監督の強化である。労働監督官を増員し、労働監督をめぐって労使が意見を述べることができるよう別途の機構を設ける。現行法の下でも労働監督を強化することで、非正規労働者の雇用問題の多くは解決できるとの立場にたっている。

第三は、非正規労働者の分類規準の明確化である。雇用形態に基づいて、雇用期限付労働者、短時間労働者、派遣・呼出などの形態に従事する労働者を非正規労働者として分類する。これに基づくと、非正規労働者は賃金労働者の27.3%を占めると推計される。このような非正規労働者の分類には入らないが、労働基準法上の保護及び社会保険の適用対象から外されてしまい、何らかの保護が必要な契約職労働者や長期臨時職労働者などを新たに「脆弱な労働者」と分類し、別途の保護対策を講じることにしている。

このような労使政委員会の非正規労働者保護対策は、労働部が5月20日、大統領主宰の「中産階層の育成及び庶民の生活安定対策会議」で、報告した「非正規労働者権益保護案」に反映されている。

第一に、国民年金の事業所加入(労働者の保険料率が7%から4.5%に下がる)の対象を2003年7月から雇用期間1?3ヶ月の臨時職と月80時間以上の短時間労働者、5人未満の事業所の労働者にまで拡大する。

第二に、今国会での雇用保険法改正で日雇い労働者にも雇用保険を適用し、2003年7月から健康保険の事業所加入の対象を段階的に拡大する。

第三に、非正規労働者を雇用する事業所に対する労働監督を強化し、地方労働官庁における非正規労働者専門の相談員を増員する。

第四に、労災に遭う非正規労働者の割合が比較的に高い製造業を対象に労災予防活動を強化するなどである。

韓国通信公社契約職労組の長期闘争終結

非正規労働者の雇用問題をめぐる労使紛争の典型として注目されていた、韓国通信公社契約職労組の517日に及んだ闘争は5月13日に幕を閉じた。韓国通信公社が2000年11月に契約職7000人の雇用契約を打ち切ったのに反発して、契約職労組は2000年12月13日にストに入った。その後、同労組は非正規労働者に対する不当な雇用差別であるとして訴訟を起こすと共に、様々な形で示威や篭城などを続け、非正規労働者の雇用問題に対する社会的関心を高めようとした。

しかし、その間、組合員198人が拘束され、罰金と損害賠償額も3億2000万ウォンに上った。そして訴訟に相次いで敗訴し、韓国通信公社労組の支援も得られなかった。それに経済的理由から労組を離れる組合員が相次ぎ、最後まで残ったのは1200人のうち、211人にとどまったという。

結局、事態改善の見込みが全くないうえ、これ以上の経済的困窮には耐えられないとの判断から、同労組は「2002年上半期に下請け企業への就職斡旋及び3年間の雇用保障、慰労金の支給」などで韓国通信公社と合意し、517日に及んだストに終止符を打ったようである。

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