ユーロ圏経済、強い回復の兆し
―6大経済研究所、春季景気・労働市場動向予測発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年7月

6大経済研究所は2002年4月23日、春季景気・労働市場動向予測を発表し、回復する米国経済が牽引車となり、ユーロ圏の景気も今年度は力強く回復し、ユーロ圏の中では景気回復が遅れているドイツ経済もこれから来年にかけて好転するとの予測を示した。またこの好転が2001年には低迷した労働市場にも及び、ドイツ全体の失業者数(年平均)も2002年は400万人を割ると予測した。

同研究所は、春季予測で特に米国経済の回復を強調し、大減税と企業の大バーゲン計画による消費の回復が今まで米国経済の回復を支えてきたが、今後も在庫を補充する企業の受注の増加により生産が増大する等、世界経済を支える米国経済の牽引力は継続すると予測している。そして米国の国内総生産(GDP)は前年比で2002年は2.3%、2003年は3.7%成長すると予測し、この影響をうけてユーロ圏全体のGDPも2002年は1.4%、2003年は2.4%成長し、ドイツのGDPは2002年は0.9%、2003年は2.4%成長すると予測している。

ただ同研究所は、このような景気回復予測に幾つかの前提条件を挙げている。それは1中東紛争が中東地域に限定されること、2原油価格が1バレルにつき2002年は24ドル、2003年は25ドルに保たれること、3欧州中央銀行による金利の上げ幅が、2002年から2003年の冬季に2段階で0.5ポイントの上昇に止められること等であり、特にドイツ経済については、1税制改革の第2段階の実施、22004年までの財政均衡を目標とする80億ユーロの緊縮財政の実施等を挙げている。そして同研究所は、米国経済を減速させ得る不安定要因として、今までの米国の民間消費の増大が減少に転じることと原油価格が高騰することの可能性を排除していない。

このような景気動向予測との関連で、同研究所はドイツの労働市場が2002年末から2003年初めにかけてゆっくりと回復基調に向かうと予測し、ドイツ全体の年平均失業者数は2002年は396万人、2003年は381万人になると予測している。また失業率は、ドイツ全体では2002年9.3%、2003年8.9%、西独地域では2002年7.7%、2003年7.3%、東独地域では2002年17.2%、2003年16.8%と予測している。同研究所は、景気の回復段階では、企業は差し当たり新規雇用をひかえ、増大する需要に対しては操業短縮の廃止、超過労働の増加等で対処するから、失業率は漸進的に改善するだけだとしている。

2002年の賃金協約交渉については、春季予測の発表前に、化学業界ではすでに賃上げ3.3%で交渉が妥結し、金属業界ではIGメタルがストを目前にしていたが、同研究所は控え目な賃金協約の締結を推奨し、賃上げは平均2.5%程度となろうとしただけで、進行中の協約交渉自体については立ち入った統一見解は発表していない。各研究所の研究員が個別の意見表明をしているが、例えばキールの世界研究所(IfW)のヨアヒム・シャイデ氏は、化学業界の3.3%が容認し得る上限だとし、ミュンヘンのIfo研究所のヴォルフガング・ニアハウス氏は、賃上げが4%に達するとドイツ経済の現状から見て危険だと述べている。これに対して経済界からは、賃金協約交渉に対する6大研究所の見通しは楽観的すぎるとの批判が出ている。

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