国民保険料の企業負担増で10万人の雇用減

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年7月

ブラウン財務相は4月に2002年度予算案演説の中で、国民医療サービス(NHS)を再建するため2003年度から国民健康保険の保険料率を引き上げることを明らかにしたが、これによって今後3年間に10万人の雇用が奪われる可能性があるとの報告が出ている。

現在の保険料率は収入の21.8%(労働者=10%、使用者=11.8%)だが、来年度以降これを労使それぞれ1ポイントずつ引き上げる。使用者側の負担は日本円で年間7600億円増えることから、産業界はこれに猛反発している。今回の保険料引き上げはいわば「雇用に対する課税」であり、場合によっては、雇用を縮小させかねないとの懸念が出ている。

オックスフォード経済予測研究所(OEF)が今回公表した報告は、こうした懸念をさらに強めるものとなった。

OEFは、今回の保険料引き上げによって雇用がどの程度縮小するかは、労働者の反応の仕方で変わってくるという。もし使用者が保険料引き上げ分を賃上げ率を抑えることで即座に労働者に転嫁できれば、雇用減は限定的で済む。ところが、労働者が使用者は自ら負担を負うべきだと考え、賃上げの抑制を拒めば、使用者はそのコストを雇用を縮小することで回収せざるをえない。

OEFは、労働者に選択肢を提示している。もし、来年4月からの2年以内に年収の0.8%ポイントの削減を受け入れれば、雇用減は約1万人程度で済む。しかし0.1%ポイントの削減しか認めない場合には、10万人以上の雇用が奪われる、とOEFは試算している。

現在、労働市場は逼迫し、労働者の交渉力の方が高いため、労働者が賃上げ抑制を容易に受け入れるとは考えにくく、OEFは、失業者数は3年後に8万人増加するだろうと予測している。

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