戸籍制限の規制緩和が労働市場にインパクト

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年6月

2002年に入ってから、中国各地では、戸籍による移住や就労制限に対する規制緩和政策が相次いで導入され、農村と都市の労働市場一体化の動きが急速に進んでいる。中国は、1958年から「戸籍登記条例」を公布し、法律上、農民の都市への移住や就労を規制してきた。1985年に、中国は初めて身分証明書制度を導入し、これまで一枚岩だった戸籍制度にも規制緩和の兆しが見えた。1990年代以降、広東省、浙江省と上海市などでは、人口流動に対する規制を緩和する政策が相次いで導入された。

2002年に入ってから、広東省は率先して、従来の農業戸籍と非農業戸籍の撤廃を発表し、雇用の大幅な成長が見込まれている。それにつづき、浙江省の労働行政が、これまでの一部業種における農村労働者の就労禁止の撤廃を発表し、農村労働者に都市労働者と平等な就労チャンスを付与した。南京市の労働行政も、市内すべての労働市場を農村労働者に開放すると発表し、農村からの出稼ぎ労働者は身分証明書などをもって職業斡旋機関で自由に就労を求めることができるようになった。農村からの労働者の権利を守るために、南京市は、企業側が農村からの労働者を採用する場合、雇用契約の締結や保険の提供を義務付け、また賃金も一カ月当たり430元という南京市の最低賃金基準を下回ってはならないと発表した。

雲南省も戸籍改革をすすめ、省庁所在地の昆明市内の居住者と結婚して5年を経過した者、または省内他の都市居住者と結婚して2年を満たした者は、元の居住地で固定職や安定した収入がない場合、配偶者の居住都市に移住することを認めるようになった。また、昆明市で5年以上居住した外来人口で、職をもち安定した所得や住所をもっている場合、昆明戸籍の取得を申請することができ、本人が昆明戸籍を取得後、配偶者や子女の移住もできる。

福建省も戸籍改革に着手し、省内における農業戸籍と非農業戸籍をはじめ各種の戸籍制限を撤廃し、住民戸籍に統一し、これまでの都市への移住人口の数的制限も撤廃し、より柔軟な制度に切り替えた。

湖南省も都市への移住人口の数的制限を撤廃し、2002年末を目標に農業人口と非農業人口の二元的戸籍管理の撤廃を掲げている。農民が中小都市に住所をもち、安定した職業をもつ場合、居住都市への移住が認められる。国が認める短大卒以上の学歴を持つ者、或いは一部特別な専門学校卒業者には、都市で仕事を見つけた場合、都市への移住を認める。中級以上の技術資格を取得し、会社に雇用され1年以上の勤続年数をもつ技術労働者の場合、本人および直系家族の都市戸籍の取得も認めることになった。

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