若年層ホワイトカラーが社会の中間層の主流に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

2001年12月、中国国家統計局は都市社会経済調査の結果を公表し、中国では、25~35歳の若年層の所得が他の年齢層を上回っていることが明らかになった。高所得若年層の多くは、比較的高い学歴をもち、証券、情報、通信などの新興産業もしくは外資や民営企業に就業しており、その多くはベンチャ企業の創立者や技術者、外資企業の管理者、技術者、または個人経営者、自由職業の人たちである。

2001年12月に、中国社会科学院は3年間にわたる社会階層変化の研究成果をまとめた『当代中国社会階層研究報告』を出版公開した。この研究によれば、1978年の改革・開放以来、中国の社会階層には中間層の出現という大きな構造的変化が起きている同研究によれば、現在中国の中間層が二つのグループから形成されており、その1つは、中小私営企業の企業主や個人経営者であり、もう1つは、近年に現れてきた新中間層であり、具体的には専門職や技術者、経営管理者、公務員、サービス業従事者や技術労働者である。中間層の重要な特徴の1つは、年齢構造の若年化である。

北京清華大学の社会学者によれば、通常の社会発展の原則として、人々は45歳前後にキャリアや所得の頂点を迎えるが、中国の現状では、25~35歳の若年層の所得が45歳前後の中年層を上回っている。これは転換期にある中国社会の特殊現象である。

中華英才網が2001年上半期に行ったインターネット上の賃金調査の結果によると、業界の平均賃金で、上位3位を占めるのは通信、コンピュータ(インターネット)と電子産業である。これらの新興産業に比較して、伝統的製造業の賃金は最下位にある。また、外資系企業や民営企業の賃金収入は国有セクターを大きく上回っている。新興産業と外資・民営企業は、いずれも若年層が比較的集中する分野である。これらの産業や企業は上昇期にあり、競争優位をもつ若年層がこれらの企業と産業に入り、経済収入が向上すると同時に、社会的地位も向上している。

若年層の高所得は彼らの教育水準からある程度の説明を得られる。しかし、市場メカニズムの下で、若年層が高所得を得ているのはやはり特殊であり、これは、通常の市場経済の国々における年齢と所得の相関関係カーブが中国ではまだ形成されていないと理解すべきである。

中国では1970年代末まで計画経済体制をとっており、完全な年功制度を採択していたため、所得と年齢の相関関係も直線的な上昇傾向を示した。しかし、1980年代以降、市場メカニズムが徐々に導入され、とりわけ1990年代以降では、かつての政府による職場への配属制度が廃止され、自由な雇用制度が一般化されてきた。そのため、比較的競争優位をもつ若年層がより良い就職チャンスとそれに伴う高所得を得ており、一方では、このような社会や経済システムの劇変に適応できない中高年層の所得は激減している。つまり、現在の若年層と中高年層はまったく異なる2つの世代であり、若年層の所得が中高年層を上回っているのは、市場経済への転換期ゆえの特殊な社会現象である。しかし、現在の若年層が中年層に入る時には、彼らは通常の市場経済の社会における中堅階層を形成するだろう。

若年層がメインとなる新しい中間層は今後中国の社会、経済、政治などの諸分野に多大な影響を及ぼすに違いない。若年層の所得や社会地位の向上には特別な注意を払うべきであると社会学者は見ている。

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