労使関係委員会、臨時労働者に育児休業を認める決定を下す

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

オーストラリア労使関係委員会(AIRC)は、いくつかの産業を代表する労働組合からの申請を受けて 臨時労働者に育児休業を付与するかどうかについてを検討を重ねた結果、2001年5月31日に連邦ア ワードの適用を受ける一定の臨時労働者に育児休業等を付与する決定を下した。

決定の背景と内容

AIRCは1990年に「Parental Leave Test Case」として、アワードに定められている出産休暇、父親休暇、養子縁組休暇に関わる規定を育児休業規定として一つにまとめる決定を下している。この決定は、連邦アワードにおける育児休業に関する最低基準を確立するもので、その後1998年に見直しが行われている。このテストケース基準は、アワードの対象となっているフルタイム労働者とパートタイム常用労働者には適用されたものの、臨時労働者は適用対象とされていなかった。

そのため労働組合側が、臨時労働者もテストケース基準の対象とするよう申請していたのである。

AIRCは今回の決定を示すにあたって、臨時労働者を取り巻く環境の変化に言及している。つまり、テストケース基準が示された1990年に比べ、雇用者全体に占める臨時労働者の割合が増大したこと、臨時労働者の多くが定期的に労働し、短期的な労働とは必ずしもいえなくなっていること、そして使用者と継続的な関係を持つ臨時労働者も目立っていること等から、こうした臨時労働者に育児休業を認めないのは公平とはいえないと指摘している。

その上で、AIRCは今回の決定により新たなテストケース基準(正確には「New Parental Leave Test Case Standard」)を定めることを明らかにした。

AIRCの決定内容は、①既存のテストケース基準が一定の臨時労働者に適用されること。②一定の臨時労働者とは、一人の使用者の下で数回にわたって定期的かつ計画的に雇用されている者、あるいは一人の使用者の下で少なくとも12カ月間継続的に定期的かつ計画的に雇用されている者をいう、③使用者は、臨時労働者やその配偶者の妊娠、あるいは臨時労働者の育児休業取得を理由に、臨時労働者の再雇用を怠ってはならない、④人材派遣会社により雇用され、その顧客会社のために働いている②の条件を満たす臨時労働者については、育児休業取得前についていた仕事に復帰する権利が与えられる(例外規定あり)等となっている。

これにより、対象となる臨時労働者は出産後12カ月間の無給の育児休業を取得する権利を得ることになる。ただし、アワードの一方当事者がこれに反対する場合等には、AIRCに申請を行うことができる。オーストラリア労働組合評議会(ACTU)によると、およそ120万人の臨時労働者が今回の決定の対象となるという。

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