(香港特別行政区)政府、年間成長率を8.5%に上方修正

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

香港の景気回復は、特に2000年1月以来、予測を上回る勢いで進んできたが、特別行政区政府は8月25日、今年度の国内総生産(GDP)の成長予測を8.5%とし、先の5月の成長予測6.0%を上方修正した。

ドナルド・ツァン財務長官は、今年の最初の2四半期の力強い成長は、香港がアジア経済危機から完全に立ち直ったことを示していると、強気の発言を行った。現に第2四半期の成長は前年同期比で10.8%で、第1四半期の前年同期比14.3%に引き続いて高い成長を示した。もっとも第2四半期の成長は多少鈍り、第1四半期との比較では成長率マイナス0.8%と幾分低下した。

タン・クォン・ユウ政府エコノミストは、香港経済の強い回復基調は継続しており、第2四半期に多少成長が鈍ったことはかえって状況の安定を示していると、楽観的な見方をしている。また当地の専門筋は、高い成長の原動力は輸出の増大で、前年同期比で17.7%増大していることを指摘し、さらに域内経済自体も改善の兆候を示しており、消費の拡大、企業の設備投資の増大、失業率の低下、さらには不動産市場の条件の一時的好転の兆しさえあり、これが政府予測の上方修正につながったとしている。

さらに、地元のエコノミストや金融機関の中には、政府の予測は控え目であり、成長予測を9.8%とし、香港経済は現在アジアで最も急成長しており、2000年末には、世界で最も成長率の高い経済になる可能性があるとするものもある。また、最近注目されている、中南米や中東をも越える勢いの貧富の差の拡大についても(本誌2000年10月号参照)、これに対する即効薬はなく、教育の門戸を拡大して対処するのが最善の策で、時間をかけて格差を縮小するほかないだろうとする意見もある。

このように比較的楽観的な見方の中で、香港経済の成長が輸出主導であることから生ずる不安定要素を指摘する向きもある。ある専門筋は、香港経済が輸出に依存していることは、世界経済の持続的成長に依存しているということで、輸出相手国の消費者が香港製品を継続的に購入しうるかどうかにかかっているが、日本経済が順調に回復するとはかぎらず、米国の金利が上昇し、米国の株式市場が再び下降線をたどるかもしれず、しかもこれらのことは、香港政府や地元企業の制御の範囲外にあることから、状況が急転することもありうるとして、過度な楽観視を戒めている。

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