新卒者、スキルアップが必要
経済危機以後、タイにおいても学卒者の就職が困難になっている。
タイ国内の7つの国立大学を対象にした調査によると、1998年度卒の学卒者の雇用は厳しい状況を表している。就職が比較的容易なのは医療・看護系の学生で、ほぼ100%の就職率であるのに対して、社会人文学部では4~5割の学生が就職できない状況にある。特筆すべきは、就職に有利と思われる理系の学生でさえ、3~4割の学生が職を見つけられないことである。さらに、工学部卒の学生は40%、農学部卒では35%の学生しか就職できていない。
産業の変化と急速に成長する情報産業の影響が、この10年で労働市場をさらに競争的なものにしていると、専門家は指摘する。チュラロンコン大学のトンチャイ講師は、今後の労働市場において、英語と基礎的なコンピューターの知識が決定的に重要になってくると述べている。
さらに、専門性を要求する企業も増え、修士号や博士号の要望も高まっている。トンチャイ講師は、3~5年のうちは労働市場が劇的に変化することはないだろうが、10年以内には公共部門、民間部門ともに大きな変化が起きるであろうと予測している。
現在必要とされている人材は、企業のホームページの作成やネットワークの構築ができるコンピューター・プログラマーや、オンライン上の膨大な情報を用いて、市場の動向をつかむことのできる統計学者や経済学者などである。国際貿易やビジネスの取引が複雑化するなかで、新しい会計基準に明るい会計士、会計監査員、弁護士も求められている。今後の経済のカギを握っているのはバイオテクノロジー分野とe-マーケティングである。
一方で、メッセンジャーやタイピスト、事務員といった、機械化が進むにつれて消えていかざるをえない職業もある。
政府の雇用政策に打ち出されているように、雇用吸収が期待されている分野は中小企業と自営業であるが、新卒者の雇用吸収も例外ではない。
タイの教育政策が時代遅れのものであるために、企業が必要とする人材を供給していないのではないかという批判から、1999年には、労働市場と将来の経済の需要が合致するように国家教育制度が改正された。これによって、今後の雇用状況が多少なりとも改善することが期待されている。
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