基礎情報:フランス(2003年)

基礎データ

  • 国名:フランス共和国(France Republic)
  • 人口(年齢計):6138万7038人(2003年1月)
  • 人口(20歳以下):1559万3731人
  • 人口(20~64歳):3591万6426人
  • 人口(65歳以上):987万6881人
  • 実質経済成長率:0.8%(2003年推計値)
  • GDP:1兆4048億ユーロ(2003年)
  • 労働力人口:2576万2300人(2003年)
  • 失業率:9.6%(2004年1月)(ILOの定義による)
  • 失業者数:261万2000人(2004年1月)
  • 在留法人数:25574人(2001年6月1日現在)

資料出所:フランス国立統計経済研究所新しいウィンドウ国際労働機関新しいウィンドウ

I.2003年度の主な動き

2003年度のフランスにおける主な動きを労働法制を中心にみると、以下のとおりである。

まず、週35時間制の見直しが実施に移された。「賃金、労働時間、および雇用開発に関する法」(フィヨン法)が、2003年1月17日より施行され、年間超過勤務時間の上限を緩和し、130時間から180時間とされた。このことによってフランスの労働時間規制は週35時間制を規定しながら、時間外労働枠を180時間に拡大するデクレにより実質的に39時間制へ引き戻される結果となった。

また、失業保険制度改定が実施され2003年1月1日より失業保険料が給与の5.8%から6.4%(使用者負担4.0%、労働者負担2.4%)に値上げられた。更に、失業保険給付に関する改定が2004年1月1日に実施され、18万人から25万人の求職者が「失業手当受給権」を喪失し、給付が減額されたり給付期間が短縮されるなど含めると何らかのかたちで影響を受けた失業者の数は61万3900人とされている。

そして、2003年中の法律改定として、退職年金法の改革が挙げられる。2003年5月に閣議に提出、国民議会と上院で審議された後、2003年7月に成立した改革法は、公務員の拠出期間を現行の37.5年から2008年までに40年へ延長し、2012年には41年、2020年からは42年にわたって拠出しなければならないことなった。

この以外のこととして、最低賃金の改定が、毎年7月に改定されている法定最低賃金(SMIC)は5.3%上昇となり、この上げ幅は過去20年間で最大のものであった。

II分野別の動向

1.労働関連の法制度、法令など

フランスの労働関係の法律は、労働法典に編纂されており、「労働契約」「労働協約」「労働条件」「労働安全衛生」「雇用」「労使関係」「労使紛争」「労働監督」「職業訓練」などについて規定されている。社会保障に関しては、社会保障法典があり、その中の労働関係の規定については、「社会保険」「年金」「労働災害補償」「家族給付」などについて規定されている。労働法典には、法律(Loi=L)とともに、デクレ(Decre=D(行政命令))、規則((Reglerment=R)も含まれている。そして、賃金や労働時間といった労働条件については、産業別の労働協約が当該産業界の最低条件を規定するものとなっており、ある意味で法律以上の役割を果たしていると言える。

ちなみに、労働協約には、全職種共通協定、拡張適用された労働協約、部門別労働協約、企業別労働協約があり、さらに、就業規則、労働契約があって、この順序によって効力の強さが異なる。

2003年、フランスにおける労働法制の動きは大きく分けて、週35時間制の見直しと労使関係近代化法の解雇禁止規定の緩和の二つが挙げられる。ラファラン政府は前政権の象徴とも言える2つの法を取り消すことに着手し、国会はフィヨン社会問題相によって提出されていた2つの法案(「賃金、労働時間、および雇用開発に関する法案」と「経済的理由に基づく解雇についての団体交渉の再活性化に関する法案」)を最終的に承認した。

前者の法律には、最低賃金(SMIC)の一元化、使用者が負担する社会保険料の軽減、そして補償休日を提供しなければならない労働時間上限の引き上げが定められていた。一方で、このような与党の使用者寄りの政策を批判する議員もいる。週35時間制へ既に移行した企業も4時間分について10%のコストを支払えば、39時間制へ復帰することができるが、企業間の不平等を悪化させただけでなく、労働者間の格差も拡大させる可能性があるのである。

後者の法律において、与党は集団的解雇制限規定と労働者の権利(組合が反対する権利、社会的ならびに地域的な影響を調査する義務、労働視察官の特権の強化など)の18カ月間凍結を目的とする労使関係近代化法案に関して、社会問題相の提案をはるかに上回る内容を実現した。雇用調整計画を提出する前に週35時間制について交渉する義務、および雇用調整計画を発表する前に企業委員会へ通知する義務は停止された。また、精神的嫌がらせ(ハラスメント)に関する規定は修正され、被害者は事実を立証しなければならなくなった。

フランスの労働時間規制は週35時間制を規定しながら、時間外労働枠を180時間に拡大するデクレにより実質的に39時間制へ引き戻される結果となった。その経緯は下記のとおりである。

フィヨン社会問題・労働・連帯相は2002年9月18日の閣議に「賃金・労働時間・雇用開発に関する法案」(週35時間制改正法案)を提出した際に、時間外労働枠をデクレによって、130時間から180時間へ拡大することを定めるとした。このデクレにともない、労働法典(労働法典D.212-25条)と農村法典が修正された。2001年10月15日に定められた時間外労働枠は、原則的に130時間だった。従業員20人以下の企業の枠は、2002年に170時間、2003年に180時間へ拡大されるはずだった。この中小企業を対象とする過渡的な規定は廃止され、新しい180時間の枠は規模に関わらずすべての企業に適用されることになった。年間の基準に基づいて時間で設定される請負制に基づく経営管理職と中間管理職は時間外労働枠の適用領域から除かれる。ただし、新デクレは労働時間を年間計算する労働者に関する2001年10月15日の規定には、変更を加えていない。

「賃金・労働時間・雇用開発に関するフィヨン法案」は2002年10月15日に国民議会の第1読会で与党の支持によって採択され、上院の審議は10月23日に開始された。デクレは時間外労働枠に関する規制措置の見直しも規定している。労働大臣は2004年7月1日までに全国団体交渉委員会へ、時間外労働枠の決定に関する団体交渉と時間外労働への依存の状況に関して、報告書を提出しなければならない。そして、この報告書と経済社会委員会の意見に基づいて、時間外労働枠に関する規制措置が見直される。

2.労働市場

失業率

フランスで公表される失業者に関する統計は、ILOの定める失業の定義に基づくものと、フランスの職業安定所による定義に基づくものと2種類ある。後者については、下記のとおりの分類である。

  • 第一分類:フルタイムの雇用を求職する失業者
  • 第二分類:パートタイム労働の求職者
  • 第三分類:期限付き雇用、季節または派遣労働の求職者
  • 第四分類:就労不可能な求職者
  • 第五分類:失業者雇用施策によって職を得ている者(主に連帯雇用契約者(CES)(後述))
  • 第六分類:ANPEへ登録する前の月に月間労働時間78時間を超える仕事に就いていた者でフルタイムの雇用を求職する失業者
  • 第七分類:ANPEへ登録する前の月に月間労働時間78時間を超える仕事に就いていた者でパートタイム労働の求職者
  • 第八分類:ANPEへ登録する前の月に月間労働時間78時間を超える仕事に就いていた者で期限付き雇用、季節または派遣労働の求職者

("http://www.insee.fr/fr/indicateur/indic_conj/donnees/doc_idconj_17.pdf")

2003年1月には、第一分類の求職者は0.7%増加し、旧来、公式指標の尺度として示していた「第一分類および第六分類」では0.9%の増加とになり、失業率は9.1%であった。ANPEへの登録者は2002年12月と比べて1%増加し、登録抹消者数は4.1%減少した。5月30日に発表された社会問題省の統計によると、4月の(ILO基準に基づく)失業率は9.3%、8月には9.6%、10月には9.7%と上昇した。

昨今の高失業率に対して、フィヨン社会問題相は、2003年4月、「失業の増大と経済成長の減速化に対応する緊急措置のために、政府は2003年に3億ユーロの追加予算を組む」と発表した。この予算は、基本的に、失業の社会対策と最も困難な立場にある人たちを援助するために使われた。例えば、民間部門で採用された長期失業者を対象とする雇用促進契約(CIE)(使用者負担の社会保障費が24カ月間免除され、一律の援助が受けられる制度)が再開されること、連帯雇用契約(CES)(長期失業者や50歳以上の失業者を対象とした、公共企業体や公共団体において不特定多数向けの公共活動にパートタイムで従事できるようにする制度)についても追加的に予算が組まれた。

フランスにおける職業紹介は、全国雇用庁(ANPE)が独占的に行っている。フランスにおける職業紹介機能は、従来、ANPEの独占で行われてきたが、政府は職業紹介事業の民営化を検討している。労働市場での機能を、派遣代理業、採用代理業などを許可制で認めることによって職業紹介の独占を廃止し、ANPEに競争原理を取り入れようという考えがある。政府はILO第181号条約(職業紹介サービスの民間部門への開放を定めている)を批准する意思ももっている。

政府はシラク大統領の要請にこたえる形で「労働行政を抜本的に改革」するために、作業を進めている。その一つとして、ANPEと失業保険制度を司る全国商工業雇用協会(UNEDIC)の連携が挙げられる。業務の効率化を図るためにANPEとUNEDICを連携的に運営する公共利益集団の創設が検討されている。

失業保険制度改定

失業の増加などによって、フランスの失業保険制度は2002年の単年で赤字が37億ユーロに達した。失業保険制度を担うUNEDICは2004年春に支払停止に追い込まれることを避けるために、2002年12月20日に経営側と3つの労働団体(民主労働同盟=CFDT、管理職総同盟=CGC、キリスト教労働者同盟=CFTC)が全国商工業雇用協会(UNEDIC)再建案の実施について合意に達した。2003年1月1日より失業保険料が給与の5.8%から6.4%(使用者負担4.0%、労働者負担2.4%)に値上げられたことのほかに、この改革案には数日から数ヵ月にわたる補償期間の短縮が含まれており、大多数の求職者は理論的な最長補償期間が30ヵ月から23ヵ月に削減された。

2003年5月28日付の覚書の中で、UNEDICはこの措置によって実際に影響を受ける失業者の数を61万3900人と評価していた。

新しい規則が発効により、UNEDICは大幅な節約が可能になる。この失業保険機関は現在失業者の53.7%を補償しているが、その割合が2004年には45.3%に低下する。一般的に言うと、UNEDICによって補償されていた失業者がその期間を満了すると、3つのモデルケースが考えられる。すなわち、3分の1は連帯制度(ASS)へ移り、別の3分の1は社会復帰最低所得(RMI)の世話になるが、残りの3分の1はあらゆる補償受給権を喪失する。

UNEDICでの新たな補償手続きの創設によって当然、ASS受給者が増加することになるが、政府はそれを予期して秋に、これまで無期限に支払われてきたASSに期限を設けることを決めた。この改革も新年とともに発効する。

そして、失業給付の改定が2004年1月1日に発効され、18万人から25万人の求職者が「失業手当受給権」を喪失し、これに伴い、特別連帯手当(ASS)(失業保険制度の補償を打ち切られた失業者へ国が支払う手当)の改革も発効する。ASSは期間が短縮され、およそ13万人が改革の犠牲になる。失業者を引き受ける2つの制度で引き締めが決定されたことにより、数万人が補償受給の権利を完全に失った。

3 人事労務管理

労働契約

フランスにおける労働契約は、労働法典(L.121)に定められているように、「労働契約は無期限で締結される」ものであり、伝統的には期間の定めのない労働契約が原則とされ主流であった。しかし、1980年代以降、労働契約の形態も変化してきている。フランスにおける労働契約には、次の7種類が挙げられる。1.期間の定めなき労働契約(CDI)、2.期限付き労働契約(CDD)、3.派遣労働契約(CTT)、1.~3.に関してそれぞれ、フルタイム労働の契約とパートタイム労働の契約(p63)、があり、ここまでで6種類の労働契約があることがわかる。更に、CDIで且つパートタイム労働の場合に、当初からパートとして雇用されている場合と、育児等のために一時的にパートを選択している場合の2種あり、計7種類となる。

2003年中の動きとして、2月に提出された「新たな雇用契約形式のプロジェクト実施契約(長期CDD)に関する報告書」が挙げられる。これは、期間の定めのない雇用契約(CDI)と期間の定めのある雇用契約(CDD)の中間的な位置づけになる新形式の雇用契約(企業が期間を設定する「プロジェクト契約」)が労働法典に盛り込むことを提案する報告書をミシェル・ド・ビルビルル労働法委員長(ルノーグループ人事部長)が2月15日にフィヨン社会問題相に提出したものである。この報告書は「労働法典を有効にするために」という題で、さまざまな意見をもつ8人の専門家で構成されたグループ(法律学者、弁護士、県労働局長、労働総同盟=CGTの元幹部など)が作成に参加した。この雇用契約は、期間は定められていないが「内容は決定しているプロジェクト」のために採用される管理職や専門家が主な対象となりそうだ。部門協約が職種に応じて、その活用条件を定めることになる。報告書によると、最短期間、任務終了時の補償、対象労働者の業務内容およびカテゴリー、契約終了時の転職措置など、「義務的要素」を定めるのは依然として法律になる。失業率が9.6%に達しているという状況を反映して、シラク大統領が発表した「雇用対策動員法」へ「プロジェクト契約」が組み込まれる可能性もある。

賃金

フランスにおける賃金決定は、労使交渉に基づく部門別労働協約の影響力が大きく、しかも、国の定める法定最低賃金(SMIC)を下回ってはいけない。

概して、部門別、職種別の労働協約により、業種における労働者の最低賃金が決定されている。

SMICは原則として毎年7月1日に改定される。また、インフレ率に連動して改定される場合もある。2003年の定期的な改訂によって5.3%引き上げられ、月額1090.48ユーロ、時給7.19ユーロとなった。2003年7月1日に改定された5.3%という上げ幅は過去20年間で最大のものであった。

ただ、実際には週労働時間35時間制への移行に伴い、35時間制へ移行した時期によって6種類の基準(時給のSMICを35時間労働として積み上げたもの)の月額ベースの最低賃金が定められている。これは35時間制への移行に伴い、賃金が目減りしてしまうことを防ぐため、移行した時点の39時間労働者の月額最低賃金に固定する保障制度(GMR)を設けたため(1998年オブリ法)である。だが、39時間分の所得保障を受けながら実際には35時間しか働いていない場合の最低賃金が異なり、「同一労働、同一賃金」の原則に反してしまう。このような事態に対して、オブリ法はその具体的な方法を示すことなく、2005年に単一SMICへ復帰すると定めていた。その後、ラファラン政府は、SMICを高い水準に一致させることを決定し、2003年1月17日のフィヨン法が制定された。

この法律に基づいて、各GMRには次のように、1.6%から3.2%の間の異なる改定率が適用され、SMIC一元化の第1段階が開始される。

  • GMR1:(1998年6月15日から1999年6月30日までに週35時間制へ移行した労働者)は、+3.2%で1136.15ユーロへ。
  • GMR2:(1999年7月1日から2000年6月30日までに移行した労働者)は、+2.80%で1145.54ユーロへ。
  • GMR3:(2000年7月1日から2001年6月30日までに移行した労働者)は、+2.20%で1158.62ユーロへ。
  • GMR4:(2001年7月1日から2002年6月30日までに移行した労働者)は、+1.80%で1168.16ユーロへ。
  • GMR5:(2002年7月1日以降に移行した労働者)は、+1.6%(物価上昇分による改定だけ)で1172.74ユーロへ。

今回の措置により、SMICの最高額と最低額の格差が1/3だけ縮まることになる。このメカニズムは2004年も続けられ、2年後の2005年7月1日にSMICの一元化が達成される予定である。

労働時間

フランスにおける法定労働時間は、1982年に週39時間労働と定められ、96年には労働時間短縮による雇用創出を支援するロビアン法が施行された。97年の総選挙で週35時間労働を選挙公約としたジョスパンが勝利し、政権発足後、週35時間労働奨励法(第一次オブリ法)を議会で成立させ、98年に公布した。さらに35時間制の詳細を定める第二法が99年秋から議会で審議され成立した。2000年2月1日から施行され、従業員21人以上の企業で実施され、20人以下の企業では2002年1月1日から実施された。

2002年の大統領選挙および総選挙によって左派連立政権から保守中道政権へと交代したことにより、週35時間制の一部緩和とSMICの一本化を主な目的とする「給与・労働時間・雇用促進」法案が議会で審議され12月に成立した。この法律は2003年1月17日より施行され、年間超過勤務時間の上限を緩和し、130時間から180時間とされ、実質的には、週39時間労働時間制に近い所定内労働を可能とするものとなった。

解雇

解雇とは使用者が一方的に労働契約を終了することであるが、解雇理由が労働者個人に関する個別的な解雇と、企業が経営状態を理由として行う経済的理由による解雇とがある。ここでは、特に後者について説明する。

経済的理由による解雇は、労働者本人とは無関係の、特に経済的困難、または、新技術の導入に伴う雇用の削減、または労働契約の本質的な変更、以上の原因のうち、一つまたは複数の理由よって使用者が実施する解雇のことである。特に、従業員数50人以上の企業において、30日間に10人以上の労働者を解雇する場合などには「社会計画」を作成しなければならない。社会計画とは、解雇者数の削減、解雇者の再就職の支援を目的として作成される。社会計画の作成に当たっては、従業員代表からの意見を聴取しなければならない。また、使用者は社会計画を県の労働局長または労働監督官に送付しなければならない。

労働安全衛生

フランスにおける労働安全衛生対策については、労働法典の労働条件の章において規定されている。職場の安全衛生を確保するためには、使用者と労働者が協力して行う必要があり、従業員が50人以上の事業所では労働安全衛生委員会の設置が義務付けられている。この委員会は事業所長と従業員代表によって構成される。300人以上の企業では、組合代表によって指名された組合代表者も専門委員として参加できる。委員会の委員長は、事業所長が就き、事務局長には従業員代表から選出される。

職業訓練

フランスの職業訓練は若年者を対象とした教育訓練と、在職者を対象とした継続的訓練とに分けられる。

政府の進める「労働行政を抜本的に改革」の一環として労働者の移動性を高めるための新たな職業訓練機関の設置が検討されている。成人職業訓練協会(AFPA)の改革も進行中で、職業訓練に対する国民の要求に基づいて地方への権限委譲が進んでいる。そして、管理職雇用協会(APEC)、障害者雇用促進基金運営全国協会(AGEFIPH)、地方同化制度など、雇用と関係するネットワークの優れた調整を促すために、雇用・職業一般委員会(DGEFP)が活動している。

2003年中の職業訓練に関する大きな動きとして、2003年11月、CGTが職業訓練協約に歴史的調印をしたことが挙げられる。これは既に、4労働団体と経営側との間で合意されていた職業訓練協約に、労働総同盟(CGT)が賛同するかたちで調印したものである。CGTによる前回の重要な協約への調印は1970年まで遡ることになるので、いわば歴史的な調印である。今回の職業訓練協約によって、労働者が解雇された場合に、ひとつの企業から別の企業へ部分的に移転可能な個人的職業訓練の権利を創設することとなった。これは2002年の大統領選挙運動中にシラク候補と社会党のジョスパン候補が掲げていた生涯職業訓練制度設立という共通の公約を実現したものである。

4 労使関係

フランスの労使関係は労働組合と使用者の間の交渉が様々レベルで行われる。中央レベルの労働組合と使用者団体による交渉の結果は全国レベルの協約となり、業種別職業別レベルの交渉の結果としての協約、さらに企業内での交渉とその結果としての協約がある。これに加えて企業内従業員代表制度があり、機関として従業員代表や企業委員会がある。さらに、労働組合の企業内拠点である組合支部が置かれることもあり、それぞれが役割と機能を果たしている。

労働組合が労使交渉を行うに当たって、一定の要件をもとに協約を締結できる代表的労働組合を指定する。代表性を有する労働組合は政府によって決められるため、実際に労働者の過半数を代表しているとは限らない。代表性をもつ労働組合が部門内、企業内に複数存在することもありえる。

フランスの労働組合は伝統的に企業外で活動を行って来たが、1968年のグルネル協定により企業内組合支部が認められた。支部の組合代表は選挙ではなく、労働組合から任命される。

従業員代表は、従業員11人以上の事業所では選出されなければならず、使用者に対して賃金、労働法令や社会保障、安全衛生関係法令の適用、企業内で適用される業種別協約、企業協約に関連した要求を行う。1カ月に少なくとも1回、使用者との会合をもつことができる。

労働組合組織率

フランスの労働組合活動は、この20年間の間に著しく減退し、組合組織率は急激に低下を続けてきたという。組織率のピークは1947年の52.1%で、60年には20.3%にまで低下し、95年には9.1%にまで低下した。80年代以降の要因として、巨大企業による事業統合や閉鎖、事業所の海外移転、雇用削減、外注化の進展、派遣労働者の増加など、他の国々にも共通して言える要因が挙げられるが、フランス特有の要因としては、次のようなものが挙げられるという。すなわち、多数の労働組合リーダー(活動家)の消滅と組合の制度化の2点である。70年代半ば以降に組合を離れた者を対象とした調査によると、その理由として組合リーダーがいなくなり、支部集会が行われなくなったことによって組合離れ離れがすすんだとされる。また、組合は法律によって代表性が認められるようになり、無条件で代表性が認められることとなり、組合の正当性が労働者の支持からよりも法律から生じるようになったことも要因として挙げられている。

団体交渉

フランスにおいて産業別、職種別の団体交渉が数多く行われ、各レベルでの労働協約が締結され、大きな影響力をもっている。地域別として、全国レベル、地方レベル、市町村レベルの団体交渉があり、部門別には事業所レベル、企業レベル、業界レベル、複数業界レベルに分かれる。そして全ての業界に適用される全職種別労働協定がある。

2003年の団体交渉に関する動きとして「生涯職業訓練と労使対話に関する法案」(特例協約締結の可能性を拡大する団体交渉改正に関する案)が挙げられる。国民議会は2003年12月17日、団体交渉規則の大改革を定める「生涯職業訓練と労使協議に関する法案」の第II章を可決した。この法律は労使対話の強化を目的としている。従来の労使対話に関して規定した1982年のオルー法に基づいた規則が改革された。交渉分野が拡大されるとともに、協約締結に多数決の原則が導入され、部門協約もしくは職業間協約の特例となる企業協約調印の可能性が拡大される。

この法律は、使用者側と4労働団体(CFDT、CFTC、CGC、FO=CGTは含まれていない)との間で2001年7月16日に調印された団体交渉に関する合意内容である「共通の立場」を出発点に作成されたものである。内容としては、部門協約において、多数決の原則が基準になる。発効させるためには、部門協約は当該部門の労働者の50%以上を代表する労働団体が承認しなければならなくなる。組合代表が不在の場合に、部門協約が従業員代表もしくは代理従業員に協約の交渉もしくは締結を委任できると、法案は定めている。

労働裁判所

労働裁判所は、労働契約に関する個別的労使紛争の解決を専門とする特別司法機関であり、その裁判官は職業裁判官ではなく、選挙で選出される者である。フランスの労働裁判所が管轄するのは、労働契約に関する紛争(個別的労使紛争)に限定されている。

労働審判官選挙が、2002年12月11日に実施された。2002年12月11日に実施され、結果が発表された。労働審判官選挙は、労働団体の勢力図が窺えることからも注目を集めているが、CGTが首位を堅持し、前回の1997年の結果と比較すると大きな変化は見られなかった。CGT以下、民主労働同盟(CFDT)、労働者の力(FO)、キリスト教労働者同盟(CFTC)、管理職総同盟(CFE-CGC)と続く順位も5年前と変わらない。

5 社会保障

フランスの社会保障制度は、歴史的に共済制度と社会保険から形成されてきており、職業別に制度が分立している。つまり、民間の商工業従業員を対象とする「一般制度」と、公務員や公営企業の従業員を対象としている「特別制度」、農民や自営業者向けの「非従業員制度」に大きく分けられる。

社会保障関連の2003年中における大きな動きとして退職年金改革法案の成立が挙げられる。

2003年7月24日、退職年金改革法案が国民議会と上院で可決され、最終的に成立した。だが、この法案の成立には各方面から激しい反対があった。

2003年5月7日、フィヨン社会問題相とドルヴォワイユ公務相は共同で、閣議に退職年金改革法の草案を提出した。82条から成る草案で、拠出期間、物価スライド、年金計算という3つの分野で、民間制度と公務員制度の段階的な一元化を確認している。趣旨説明の中で、この法案は2020年までに拠出期間を42年に延長することになり、制度の均衡回復を可能にすると強調されている。公務員の拠出期間は現行の37.5年から2008年までに40年へ延長され、2012年には41年、2020年からは42年にわたって拠出することになる。14~16歳で働き始めた労働者には60歳前に引退できる可能性を認める、そして年金の物価スライド制を設けるなどといった内容である。

当然ながら、この退職年金改革草案が発表されると、左派政党と労働団体から一斉に反発の声が上がった。5月13日には大規模なデモとストが行われ、その後も波状的な抗議行動がおこなわれた。

国会で退職年金改革法案の審議が進められる中、フランス全国で毎日のように繰り広げられる抗議行動は、社会保障改革を強行しようとして政権が崩壊した95年の状況を重ね合わせる見方も少なくなかった。当時のジュペ首相は、特別年金制度の改革を目指したものの、街頭からの強い圧力に屈して退陣せざるを得なくなったのである。

フィヨン法案が予想以上に激しい抵抗に会った原因のひとつは、教員や国鉄の労働者といった、苦労の多い仕事に就く労働者には、特別な配慮がなされるべきという意識が強かったことにある。拠出期間が40年から42年に延長されることは、教員の場合、少なくとも65歳まで生徒の前で教えることを意味し、そのことに対する拒否反応は圧倒的であった。

また、フランス人には「早く引退して退職後の新たな生活を築きたいという」意識があり、週35時間制によってその意識はなお更、促進されていたのである。退職年金改革は、フランス人にとって魅力的な早期退職と、既に定着している60歳定年制を断念させることになるのである。

国民議会で法案が可決された後にも、社会党の下院議員と上院議員は、法律の一部の規定が平等の原則を侵害しており、男女の同一の権利に留意していないなどとして、違憲審査請求の訴えを起こした。だが、8月14日に憲法評議会がこれを退け、退職年金改革法が有効と判断したことにより、この法律は最終的に成立した。

参考資料:

  1. 日本労働研究機構編(2001)「フランスの労働事情」
  2. 日本労働研究機構海外労働情報
  3. 松村文人(2000)「現代フランスの労使関係――雇用・賃金と企業交渉」ミナヴァル書房
  4. European industrial relations observatory on-line=erionline
  5. 山口俊夫編(2002)「フランス法辞典」東京大学出版会
    ほか

バックナンバー

※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:フランス」

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